新型コロナウイルスの感染防止対策として、帰宅時の手洗いは欠かせないものになった。手洗いが正しくできているのかを、手洗い実施の映像からAI(人工知能)が判定する仕組みを富士通研究所(神奈川県・川崎市)と富士通研究開発中心有限公司(中国・北京市)が開発した。
厚生労働省が推奨する正しい手洗いの6ステップに従い、各ステップがきちんと実施されたか、それぞれのステップで必要とされる以上の回数手をこすったかを映像を通してAIが自動的に判定する。
手指の動作画像を解析するAI技術はこれまでにも存在していた。こうした技術は、親指を立てる動作(サムアップ)などを認識し、ボタンに触れずに手指の動きで指示を送る用途などに利用されている。手洗いは通常の手指動作と異なり、ほとんどのシーンで両手が重なり合っているため、判定の基準である特徴点(関節や指先など)の検出が困難だ。また手洗い時には石鹸の泡が手指にまとわりついており、平常時の手指と見た目も異なるためより難易度が高くなるという。
今回の開発にあたっては、人やカメラ位置、石鹸の種類など約2000のバリエーションを持つ手洗い映像データセットを独自に撮影・収集して学習と評価を行い、こうした難点を克服した。その結果、正しい手の洗い方6ステップにおいて95%以上の平均判定精度で動作認識でき、手をこすった回数の判定精度が90%以上であることが確認されている。
手洗いの励行は一般家庭で重要なだけでなく、食品を扱いう事業者においてもより重要で、2020年の6月から施行予定の「食品衛生法等の一部を改正する法律」により、さらに厳格な運用が必須となる。これまで従業員の手洗いは、目視での監視、またはチェック表による自己申告などで管理されてきたが、自動化によって確認漏れや監視員の確保などが不要となり、事業者側のメリットも大きい。
今後、教育や医療の現場やイベントや施設入場の場でもこの手洗い監視技術が役立つであろうことが予想される。また、このようにこれまで製造現場で目視に頼ってきた動作や作業の監視なども今後、AI技術の発達で自動化がより一層進むことになるだろう。