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自動運転車?ロボット?スマートシティを支える小型モビリティ3兄弟

株式会社ZMPが「ZMP World 2020」で発表した低速自動運転ロボット(左:無人宅配ロボ「デリロ」、中央:無人警備・消防ロボ「パトロ」、右:一人乗りロボ「ラクロ」)

株式会社ZMPが「ZMP World 2020」で発表した低速自動運転ロボット(左:無人宅配ロボ「デリロ」、中央:無人警備・消防ロボ「パトロ」、右:一人乗りロボ「ラクロ」)

 人工知能(AI)やビッグデータなど先端技術を駆使した都市再生、いわゆる「スーパーシティ」構想の実現を目指す「国家戦略特別区域法」の改正が2020年5月27日に可決された。こうした動きに伴い、さまざまな分野の先端技術をまちづくりに取り入れ、高齢化や人手不足といった社会課題を解決しようという取り組みが各地で活発化しつつある。

 2020年8月18日から20日に開催された「ZMP World 2020」で、株式会社ZMP(東京都文京区)が発表した「ロボタウン構想」もそうした試みのひとつだ。

 ZMPは、2001年に創業したロボットベンチャー企業。2008年から自動運転技術の開発を開始し、2014年には愛知県で自動運転の実証実験を、2018年には東京・六本木から大手町間で自動運転タクシーのサービス実証を行うなど、自動運転技術の実用化に積極的に取り組んでいる。

「低速自動運転ロボット」や「ロボタウン構想」を発表する 株式会社ZMP代表取締役社長の谷口恒氏

 これまでZMPは主に高速領域の自動運転技術や倉庫などで使う物流支援ロボットなどの開発に注力していたが、今回の「ZMP World 2020」では、生活圏で働く「低速自動運転ロボット」を主力製品のひとつに据え、「ロボタウン構想」で活用していくと発表した。

 低速自動運転ロボットやロボタウン構想とはどのようなものか。「ZMP World 2020」を取材した。

生活圏に入り込む3つの自動運転ロボット

 今回ZMPが発表した低速自動運転ロボットは、一人乗りロボの「RakuRo(以下、ラクロ)」と、無人宅配ロボの「DeliRo(以下、デリロ)」、無人警備・消防ロボの「PATORO(以下、パトロ)」の3タイプだ。

「ラクロ」は、指定した目的地まで自動走行で連れて行ってくれるパーソナルモビリティ。高齢ドライバーの免許返納後における移動手段の欠如が課題となっている中、“ポストマイカー”として主に高齢者向けに提案されている。この秋から東京都中央区佃の「大川端リバーシティ21」で定額制サービスがスタートする予定だ。

「デリロ」は荷物を収納できるボックスを搭載した宅配ロボット。ユーザーから宅配の依頼が入ると、店舗スタッフはデリロのボックスに商品をつめ込み、自動走行でユーザーに届けることができる。宅配業者の集配所から荷物を届けるほか、飲食店やドラッグストアなどさまざまな店舗からの宅配サービスが計画されている。現時点では、無人自動走行ロボットが公道を走ることは許可されないが、政府による規制緩和が検討されており、ZMPは東京都中央区佃エリアにおける公道走行実験を早期に実施する予定とのことだ。

「パトロ」は自動走行しながら無人警護や消毒液の散布を行うロボット。商業施設やオフィスビルなどでの利用を目指しており、2020年7月に名古屋駅新幹線地下街「ESCA(エスカ)」で実証実験が行われている。

ZMPロボライフ事業部長の龍健太郎氏

 これら3タイプの低速自動運転ロボットに搭載される自動運転技術ついて、ZMPロボライフ事業部長の龍健太郎氏に聞いた。

「我々はこれまで都内で自動運転タクシーの実証実験を行うなどしてきましたが、それらは主に高速領域での自動運転でした。今回の低速自動運転ロボットでは、その技術を凝縮し、低速領域で運用できるようインテグレートしています」(龍氏)

 同社では、これまで開発する自動運転機器の用途ごとに自社開発のソフトウェア(「IZAC」)を作ってきた。今回の低速自動運転ロボットでは、これまで高速自動走行用に開発してきたソフトウェアをうまく転用し、低速用の新たなソフトウェアを作り搭載したという。

 街中では人との距離も近づき、接触なども考えられる。高速自動走行とはどのような点が異なるのだろうか。

「高速での自動運転では一度何かあったときの影響が高くなります。一方、低速では万が一何かに当たったとしても影響が小さく、さらに対象物を避けやすくなります。そういう意味では低速運転の方が、リスクが低くなると考えられます。また素早い処理能力が求められる高速領域に比べ、より確実に自動運転できるのが低速領域です」(龍氏)

「ロボタウン」構想とは何か?

 8月18日実施のセミナー(「みんなで創るロボタウン構想、スマホアプリの発表」)では、ZMP代表取締役社長の谷口恒氏はロボタウン構想を着想した経緯を説明した。

 もともと宅配用ロボット(デリロ)から開発をスタートしたが、人が乗れるロボット(ラクロ)、警備・消毒用ロボット(パトロ)と用途を広げていくうちに関わる人が広がっていき、徐々にまちづくりに関与していくようになったという。さらに新型コロナウイルスの感染流行を機に「自分たちの住む街を見直す」ようになり、ロボットが街のインフラとなるロボタウン構想を考えるに至ったとのことだ。

「ロボット単体というよりも、ロボットがどう生活に入っていくのかを想像しながら、空間設計のプロ(株式会社日建設計シビル)にご指導いただきつつ、我々ロボットメーカーサイドもまちづくりに貢献しようとしています」(谷口氏)

 ロボタウン構想の中核となるのが、同社が開発しているスマートフォンアプリ「ロボタウン」だ。このアプリは「まちづくりコミュニティ」「ロボットインフラ」「ロボットサービス」という3つの要素で構成される予定。

 アプリ利用の大まかな流れ(つまりロボタウン構想自体)はこうだ。まず住民同士が、SNS上で普段の街の情報や街に必要なサービスや解決すべき課題などを話し合い、まちづくりのための新たなコミュニティを築いていく(「まちづくりコミュ二ティ」)。

 次にコミュニティユーザーが一定規模に達すると、自動運転用マップの作成などインフラ整備(「ロボットインフラ」)が進められ、ロボットを活用した次世代サービスがアプリ上などで運用される(「ロボットサービス」)。

 その際まず街に導入されるのがラクロを使った交通サービス。次にデリロを使った宅配サービスが導入され、パトロやその他さまざまなロボットを使ったサービスが展開されていく構想だという。

 こうした手順を踏むのは、政府の「スーパーシティ」構想の基本コンセプトに、「供給者や技術者目線ではなくて、住民の目線でより良い暮らしの実現を図るものであること」という方針が示されているからだ。未来のまちづくりにおいては、地域住民や居住者の声に基づき、社会実装する必要があると同社は考えている。

「住民の皆さんの意見を反映しながら、安全で楽しく便利な最先端の街を創るのがロボタウン構想の目標です」(谷口氏)

「ロボタウン」アプリの運用開始時期は2020年内を予定。東京都中央区佃の「大川端リバーシティ21」と姫路市(姫路駅から姫路城周辺)が、すでにロボタウンへの参加を決定しているほか、東京都文京区、東京都千代田区など各所で順次計画が進行中とのこと。

 先端技術を使ったスマートシティ化の動きが、急ピッチで広まりつつあるようだ。

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