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―メディアの課題2― 28社が集まり取り組むメディアの課題とは

メディアの課題2 28社が集まり取り組むメディアの課題とは(イメージ)

メディアの課題2 28社が集まり取り組むメディアの課題とは(イメージ)

 今年6月に創設された「コンテンツメディアコンソーシアム」は、メディア各社が等しく抱える課題を整理・解決するための場として機能することを目指している。ではメディアが持つ課題感とは具体的にどういったものなのか。同コンソーシアムの代表幹事社を務める東洋経済新報社の田北浩章常務に話を聞いた。

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東洋経済新報社の常務取締役 田北浩章氏 
東洋経済新報社の常務取締役 田北浩章氏 

 最初に田北氏が話題にしたのは、読者の広告に対する印象の変化だ。新聞や出版社のデジタル媒体が登場したころからしばらくの間、サイト上に掲載されている広告に読者は否定的ではなかった。むしろ上手く「共棲」していた。

「ところが、最近になって読者は、広告が嫌いだと。デジタル広告が嫌いだっていう方が結構いらっしゃる。何が嫌いなのかよくよく考えると、広告とコンテンツのうまい具合の棲み分けが崩れている。例えばコンテンツを読もうと思ったら、いきなり広告を見せられてしまうみたいな。こうしたことが大きな問題だと思うんですね。なので、別にユーザーは広告そのものが嫌いなのではなくて、広告の見せ方が嫌いなのだというふうに思っています」

 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が行った「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」では、利用者の54%が「広告表示のされかた」に対して嫌悪感を抱いている。その一方で、91%の読者は広告がサイトに表示されることについて理解を示している。

広告受容度(JIAA調査結果のリリースより)
広告受容度(JIAA調査結果のリリースより)

 田北氏によれば、スマートフォンが普及したことでこの傾向に拍車がかかったという。確かにPCに比べて画面が小さいスマホでは広告の占めるスペースが増えた。それに加えて、ちょうどスマホが普及し始めた時期に、広告関連技術が進化し、同じ広告が追いかけてくるように繰り返し表示されたり、記事一覧画面を広告が平然と覆い、誤ってクリックしてしまうようなものが増えた。

 さらに、広告を掲載するメディアにも問題があるものが多く現れるようになった。

「スマホの登場によって、いわゆるキュレーションメディアなどが増えてきました。そして2016年にWELQ事件が起こってくるわけです。見せ方もまずいし、メディアの作り方もいい加減、PV(ページビュー)さえ取ればいいみたいなものがたくさん出てきました。」

 背景には、検索エンジンやツイッター、フェイスブックなどからの流入が増えたことで、「役に立つ良質なコンテンツ」を作れば読者が増える、という旧来の考え方が通じなくなったことがある。SEO(検索エンジン最適化)対策を施せば、粗製乱造の記事であっても本数が多ければ多いほどPVが伸びる。SEOの最新技術やネット上で集めた経験の浅いライターを使って安い単価でコンテンツを大量生産することは、既存のマスメディアより新興のIT企業の方が得意だ。

 また、進化した広告技術は広告の効果、実績を優先させ、サイトのコンテンツ内容を吟味することなく広告を掲載する。その結果、著作権を無視した切り貼り記事や、違法コピーのマンガなどを大量に掲載したサイトにも、広告主が意図しない形で広告が掲載されるようになった。これが結果として違法サイトの収入となり、その運営を支えることになってしまうことは、広告主の意に反するうえに、自らのブランドが毀損されることにもつながる。

こうした諸問題に対して「我々はメディアとして(読者や広告主に)どう働きかけ接近していくのか」がメディア側の課題だと田北氏は話す。そしてその解決へのアプローチのひとつとして今回のコンソーシアムが設立された。

「当たり前ですけど、広告主の立場から言えばブランドセーフティというのは最大の問題です。これに対して我々のメディアに広告出していれば大丈夫ですと。不快に思わせるようなやり方はしないし、コンテンツの中身もちゃんとしていますと。ある意味今回のコンソーシアムの設立は『28社のホワイトメディア宣言』みたいな位置付けで考えていますね。」

■単価安がメディア淘汰につながる

 メディア側から見た時に、インターネット広告にはもうひとつ大きな問題がある。

「よく言われているのは『3割論』。広告主が支払った3割ほどしか入ってきていない。これによる単価安というのを今までは受け入れていたというか、どうしようもないと思っていたところもあるんですが、これではまともなメディアは運営できないということですね」

 広告主が支払った広告費は紙媒体の時代には、代理店手数料を差し引いた7〜8割程度はメディアの収入となってきた。しかしインターネット広告になって、配信事業者が中間に複数社介在し、それぞれが手数料を設定しているため、最終的にメディアに入るのは、広告主が支払った料金の3割程度と巷間いわれており、この構造が一層の単価安を生んでいる。

 1PVあたりの売上は媒体によってさまざまだが、仮に0.1円程度であるとすると、月間1億PV(ページビュー)であったとしても売上は1千万円。月間1億PVを超える実績を持つサイトは大手メディアのサイトであっても多くはない。

「1億PVといったってそう簡単なPVじゃありませんから、1億PVをまともなメディアがちゃんと出そうと思ったら、記事本数であるとか、取材であるとかコストがかかりますよね。それが月1千万円程度の売上ではメディアとしてやっていけないですよ」

 このままでは多くのメディアは淘汰されて消えていく。他の記事を切り貼りした“実用記事”や、見出しで釣って中身は芸能人のブログ転載などという記事ばかりでは、読者も困るだろうというのが、集まった28社の思いだ。

■広告の役割を見直す

 28社が集まったコンソーシアムが、現状の課題に対してできることは何だろう。法的に問題なく、公序良俗にも配慮されたコンテンツを提供しているメディアだというのは、ブランドセーフティを確保したい広告主には魅力的だ。しかし、インターネット広告には実績数値がついてまわる。「リーチはどのくらいか」「どのくらい購買につながったのか」など、媒体ごとの比較検討が容易にできる。“ホワイトメディア”だからといって10倍の単価設定ができるわけではない。価値を訴求できる新しい指標があるのだろうか。田北氏によると、まず広告の役割を見直すことによって広告単価を上げていきたいという。

「『販売(行動)』につながる所ではなくてもうちょっと上の部分ですよね。上の部分というのは、『興味や関心を持つと(感情)」いったところ、『認知する』の下ですね。『販売』に近づくと非常に単価も安いですし、結局いくら売れたのみたいな話になるので、そうではないところの価値に訴えかけるようなものとして使ってもらいたい」

 この役割、かつては紙の雑誌の広告が担っていた。

「ちょっと『認知』の方に行くかなということならテレビ広告があります。そうじゃなくて、きちんと読んで興味を持ってもらう、比較してもらうみたいな雑誌や新聞の広告が持っていた役割は今、結構空いている。ところが雑誌や新聞の力が落ちて、そういうところを担う媒体が薄くなっている。そこを是非デジタルでやっていきたい」

 その実例として田北氏が示してくれたのが、現在『東洋経済オンライン』の中で展開されている「空気で答え出す会社」と言う広告特集だ。ブランドスタジオの編集チームも関与し、丁寧に作り込まれた記事は空調や室温管理に関する読者の理解を深める内容となっている。この企画のクライアントは空調大手のダイキン工業だが、広告の目的は「エアコンを何台売る」といったことではない。すでに2年以上継続されているこの企画の評価基準はPVなどの実績ばかりでなく、読者コメントなども含めた総合的な指標だという。

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 コンテンツメディアコンソーシアムではその具体的な取り組みの第一歩として、28社150メディアの中からあるテーマや分野で切り出したPMP(Private Market Place:予め選定された特定のメディアだけに広告が配信される仕組み)を実施することを検討中だ。そのPMPと上記の様な企業マインドを読者に浸透させていくような記事広告がセットになれば、良い結果が得られるのではないかというのが、田北氏が教えてくれた目論見のひとつだ。

メディアの課題3へ続く

※コンテンツメディアコンソーシアムは株式会社デジタルガレージの子会社である株式会社BI.Garageにメディア28社が出資する形で事業展開されています。

北元均 Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。