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貸し切りバス、HR、ヘルスケア、家具業界の課題に挑戦~Open Network Lab 第24期Demo Day

左からワアク株式会社酒見氏 、ワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社西木戸氏、株式会社Ex-Work馬渕氏 、株式会社enstem山本氏

左からワアク株式会社酒見氏 、ワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社西木戸氏、株式会社Ex-Work馬渕氏 、株式会社enstem山本氏

 株式会社デジタルガレージが主催するシードアクセラレータープログラム「Open Network Lab」の24期生によるデモデイが、2022年4月25日にオンラインで開催され、4チームが自社の事業をアピールするピッチを行った。

 審査の結果、貸し切りバスのマッチングプラットフォーム「busket」を運営するワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社がベストチームアワードを受賞。ジョブ型雇用の導入をサポートする「Job-Us」を提供する株式会社Ex-Workが、審査員特別賞を、物流ドライバー向け安全支援アプリ「Nobi for Driver」を開発した株式会社enstemがオーディエンスアワードを受賞した。

ホームオフィス用ハイデザイン家具を提供

 最初に登壇したのは、ホームオフィス向けデザイン家具ブランド「WAAK˚」を展開するワアク株式会社代表取締役の酒見史裕氏だ。

 新型コロナウイルス感染拡大などでテレワーク業務が拡大する中、在宅ワーカー向けのホームオフィス用品の需要が高まっている。しかしデザイン性と機能性を兼ね備え、手頃な価格の家具をそろえるのは難しい。特に専門性高い職種用の家具を探すとなると、相談先を見つけることすら難しい状況にある。

 そうしたホームオフィスの課題を、設計変更しやすい木製家具の特徴を生かして解決しようとしているのがワアクだ。同社では、インテリア性の高い無垢材の天板に昇降機能を付加したスタンディングデスクや、ダイニングテーブルなど在宅ワーカーのニーズに合わせた家具を提供。さらに、既存のアンティーク家具を傷つけることなく、棚や配線の機能を付加する製品や、音楽家など専門性の高い仕事をする人向けの業務特化型家具もラインナップしている。同社の製品は、質感や機能性で高い評価を受けており、現在「月次平均32%の成長を続けている」とのこと。

 酒見氏は、マーケットについて、「国内1.8兆円の家具市場のうち、約2400億円の高級家具の市場を狙う」と説明した他、サブスクリプション型サービスで、リモートワーク家具を提供する計画も立てていると述べた。

 競合優位性については、酒見氏自身が日本有数の家具の産地である福岡県大川市で4代続く家具メーカーの後継者であり、「家具産地のリソースを生かした、ペイン解決型の高速プロダクト開発ができることが強み」であるとアピールした。

ワアク株式会社代表取締役の酒見史裕氏

ウェアラブルデバイスで物流の安全運行を支援

 続いて登壇したのは、物流ドライバー向け安全支援アプリ「Nobi for Driver」を開発した株式会社enstem代表取締役の山本寛大氏だ。

 物流業界は成長市場だが、長時間労働、低賃金などの厳しい労働環境がネックとなり、人手不足や高齢化が問題となっている。さらに、たとえ一度でも交通事故起こしてしまうと、それが大きな損失につながるのもこの業界の特徴でもあり、労災など保険料の高額化や、ドライバーの運行管理の難しさも大きな課題となっている。

 これを解決する既存の手段としては、AI(人工知能)ドライブレコーダーが挙げられるが、価格が高価な点や、過度のアラートを敬遠するドライバーが電源を切ってしまうことなどから導入が進んでいない。

 そこで山本氏らが開発したのが、ドライバーの心拍データから安全運転を支援するサービス「Nobi for Driver」だ。ドライバーにスマートウォッチ型デバイス「Nobi Band」を装着してもらうことで、運転開始前の体調チェックが行える他、リアルタイムに体の異常検知することで、運転中のドライバーの体調管理も可能となる。さらにストレス状態も可視化され、これまで難しかったドライバーの性格やストレス耐性の把握にもつなげられる。

「体調、ストレス、眠気、ヒヤリハットはもちろん、高齢化から発生している身体的に緊急度の高い問題も検知可能です」(山本氏)

 現在対象としている市場は、中小規模の物流企業の約185万人(約230億円)。将来的には、運転者向けMRI健診との連携やタクシー、バス業界への横展開、建設業界など他業種や海外展開も考えられるとし、幅広い支援を呼びかけた。

株式会社enstem代表取締役の山本寛大氏

ジョブ型雇用への移行を支援するSaaSサービス

 現在、日本の企業では、終身雇用年功序列を特徴とするメンバーシップ型雇用から、グローバル標準のジョブ型雇用へと移行が進んでいる。このジョブ型の導入をサポートするSaaSサービス「Job-Us」を提供する、株式会社Ex-Work代表取締役 馬渕太一氏が続いて登壇した。

 企業がジョブ型雇用へと移行する際には、「ジョブの定義(ジョブディスクリプション、以下JD)」と「人事制度構築」が必要となる。このうち人事制度構築はコンサルティング会社に依頼できるが、JDは「一筋縄ではいかない」と馬渕氏は指摘する。

「ジョブ型では、JDが、評価、給与、昇進全ての基盤になるため、現場社員の納得感が必要です。そのため現場のマネージャーが自ら作成する必要があります」(馬渕氏)

 しかしメンバーシップ型雇用に慣れ親しんだ日本企業では、ジョブ型の概念自体が希薄なため、ほとんどの企業では質の高いJDを作成できず、作成した後も形骸化してしまうケースが多い。

 こうした課題を解決するため、簡単に質の高いJDを作成できる環境を提供するのが「Job-Us」だ。このサービスでは、用意されたテンプレートから作りたいポジションに近しいものを選び、その後、各社の文脈に応じてカスタマイズすることができる。その際、同社が作成した5000以上のタグライブラリーや検索・提案機能も活用できる。

 ターゲットとしては、「グローバルな競争が必要な企業ほど相性が良く」「会社の規模が大きく、社歴が長い企業ほど、JDに関するペインが大きい」ため、そうした状況にある中〜大企業を主な対象にしているとのこと。

 今後は「Job-Us」に蓄積される報酬データをベースに、各社でジョブに対する適正な報酬を自動的に算出できる機能も付加。さらには、タレントマネジメントシステムや求職プラットフォームとの連携を通じて、「JDに対して社内・社外から適正な人材がレコメンドされる仕組み」も構築していきたいと説明した。

株式会社Ex-Work代表取締役 馬渕太一氏

貸し切りバスの課題をオンラインマッチングで解消

 最後に登壇したのは、貸し切りバスのマッチングプラットフォーム「busket」を展開するワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社 代表取締役の西木戸秀和氏だ。

 スクールバスや商業施設のシャトルバス、工場の従業員の送迎など、貸し切りバスが使われるシーンはさまざまだ。西木戸氏によると、国内の輸送人員は3.3億人で、飛行機の3倍もの輸送量があるという。

 しかし、貸し切りバスを発注する際には、行程表を作り、見積もりを比較した上で発注先を決め、ドライバーの宿や駐車場の手配などの作業が発生し、時間と手間がかかる。バス会社側も、案件獲得チャネルが少ないことなどから、実働率は47%、赤字率は40%にも上っている。案件を獲得できたとしても、シフト調整や帳票作業など煩雑でアナログな作業に追われるという。

 こうした現状を改善するため、貸し切りバスを「早く」「簡単に」「安く」マッチングするのが「busket」だ。まず発注者は、行程表を作ることなく、負担の少ないインプットでオーダーができる上、オンライン上で自動見積もりが算出され、最安値のバス会社を把握できる。一方、バス会社側は宿や配車情報など、運行に必要な情報を登録できる。

「こうした仕組みにより、FAXや電話を使わない、オンラインマッチングを実現しています」(西木戸氏)

「busket」は、バス会社、顧客の双方から手数料をもらうビジネスモデルとなっている。年間売上は約2億円に達し、前四半期比は25%平均で成長を続けている。さらに「全国430のバス拠点とネットワークを構築済み」とのことだ。

 マーケット開拓については、まずスポーツ施設や物流施設の送迎など法人による定期利用からスタートし、旅行会社を含むイベント・興行など大規模な都度利用のマーケットへと拡大し、バスデータの基盤を構築。その上で、スクールバスや商業施設など都市部における短期利用のマーケットにも拡大し、最終的にはMaaS化するという。

 最後に西木戸氏は、貸し切りバスが潜在的に持つESGインパクトついてアピールした。前述したように、貸し切りバスの輸送人員は3.3億人に上るが、これが持つカーボンプライシング(気候変動の主因である炭素に値付けしたもの)は30兆円に上る。また、3万台のバスがEV化し、ネットワークを構築すると、3ギガワットの蓄電池ネットワークが実現するという。そのインパクトは、東京・世田谷区の2倍の世帯数にあたる100万世帯におよび、災害対策などに大きく貢献するとのことだ。

ワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社 代表取締役の西木戸秀和氏
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