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旅人の力を地域社会に役立てる~SAGOJOがサポートする「地域」と「旅人」のいい関係

地域で農業に参加する「旅人」たち(SAGOJO社提供)

地域で農業に参加する「旅人」たち(SAGOJO社提供)

 近年、副業人材を求める地方自治体や企業が増えてきた。広報活動やDX促進など、地方に不足する人材を確保したいというのがその理由だ。こうしたニーズを背景に「地方に貢献したい」という都市部在住者とのマッチングを行うスタートアップも生まれている。しかし、募集案件の中には、報酬はなく「ボランティアとしての参加」が条件だったり、気軽に応募できるようにと現地に赴かずともリモートワークで、業務をこなしてくれればよいとする案件も多い。

 今回紹介するSAGOJO(サゴジョー)も、地方自治体や企業の課題解決をサポートするためのマッチングサービスだ。

 SAGOJOのユニークな点は、紹介する人材が「旅をしながらその地域とつながり、何らかの貢献をしたいという登録者たち」(同サービスでは「旅人」と呼ぶ)である点だ。さらに「旅人」の「副業」だからといってボランティアではない。「金銭面での待遇」が明示されており、お手伝をした分のリターンがはっきりしている。そして、仕事をするにあたっては、実際にその地に赴いてお手伝いをする。つまりリモートワークではなく、「旅すること」が基本になっていることだ。

「旅」に対する世間の冷ややかな目

SAGOJO社代表取締役 新拓也氏
SAGOJO社代表取締役 新拓也氏

「旅と仕事を両立させる」ことを考えだしたのは、どのような人たちなのだろうか。SAGOJOを運営する株式会社SAGOJO(東京都・品川区、以下SAGOJO社)代表取締役新 拓也(しん・たくや)氏に話を聞いた。

 新氏は学生の頃から旅行が好きで、東南アジアやインド、バングラデシュ、パキスタン、ネパールなどをバックパッカーとしてめぐったことで、世界観・人生観が変わったと話す。

「自分の楽しさばかり追い求めていた中で、『人とよりよく生きる』ということをすごく感じるようになりました」

 新卒で大手企業に入社したものの、旅に対する思いはやまず、旅行に関する情報発信サイトを自ら立ち上げ、運営していくうちに仲間も集まってきた。そこで思い切って「旅に関する仕事を立ち上げたい」と周囲に相談したところ、「甘い」「逃げだ」と辛辣な意見を浴びせられたという。

 新氏がその時に感じたのは、日本では「旅」は単なる「遊び」だと見られているということ。長期間の旅の経験は、履歴にはならず、履歴書では空白期間になってしまう。例えば世界一周した人もその経験を生かしてのキャリアアップがむずかしい。新氏は、旅に対しての価値観を変えたいと考えた。

「旅をするということがお金を稼げることになるとか、キャリアアップに繫がるとか、旅人のアウトプットが社会を作るという事象を世の中に増やしていきたいと思いました。それを通して旅というものがもっと見直され、旅する人を応援できるような世の中にしたい。そうして(頭の中で)『旅と仕事』が紐づいていきました」

 事業の方向性が見えてきたところで、新氏は、自己資金と公的融資を元に仲間3人で起業した。旅行に関する情報発信サイトの運営経験を踏まえ、まずは、旅と仕事を紐付けるコンセプトを示すティザーサイト(商品・サービスの発売前に概要だけを公開するウェブサイト)を公開し賛同者を募ったところ、かなりの反響があり、約3000名もの登録者を得た。その間、3人の収入はほとんどない状況だったが、大きな期待が寄せられていることを感じたという。その後、エンジェル投資家からの支援を得て、『すごい旅人求人サイト』というキャッチコピーを掲げ2015年、SAGOJO社の「旅」が本格的にスタートした。

 繋がりを持つ地方自治体の数は、現在300弱に達するという。SAGOJOに登録した「旅人」が各地域に赴き、リターンを得ながら、その地域のお手伝いをする。同時に、少子高齢化に悩む地域の「関係人口」を増やすことにより、その地域での経済効果も生まれている。お手伝いした「旅人」がその地域に移住してしたという例もあるという。

「地域おこしの中心は地元の方であるべきですが、『旅人』はそんな彼らの右腕になれると思います。そういうアプローチでの地域の活性化を目指していて、そこに共感してくださる方、地域と今やっているのです」(新氏)

 さらに善意に頼ることにはせず、「旅人」が提供する価値にはしっかりリターンがなされるべきというのが新氏の信条だ。

「もちろんライトな形での価値の提供もあるでしょうが、専門性にはそれに見合った対価が支払われるべきでしょう。そこに対して地域の理解を得ることや、(地域と旅人を)ちゃんとフェアな関係性にしていくのが、SAGOJOが間に入る価値のひとつですね」(新氏)

この先SAGOJO経済圏も

 創業からしばらくの間は、「旅と仕事」というコンセプトが、なかなか理解を得られなかったこともあり「当初は資金調達も含めなかなか大変でした」と新氏は振り返る。しかし、少しずつこのコンセプトが受け入れられるようになってきたと感じている。

 旅と仕事の紐付けを更に一歩進めた形にするため、SAGOJO社では、関係人口の創出拠点「TENJIKU」を現在全国で14カ所(近日16カ所に増える予定)展開している。「TENJIKU」には、ゲストハウスや地域の移住体験施設などの宿泊施設と、旅人と地域をつないでくれる案内人が存在している。利用者はここを拠点として仕事をするなど、地域との関わりが作れるような仕組みになっている。

3月14日オープン予定の『TENJIKU神鍋』(神鍋ハイランドホテル 画像:SAGOJO社提供)
3月14日オープン予定の『TENJIKU神鍋』(神鍋ハイランドホテル 画像:SAGOJO社提供)

 さらに、この「TENJIKU」を利用した人たちから得る「サゴチップ」(地域を応援する寄付)の仕組みもスタートさせた。また、「旅人」になるためのスキルを磨く「SAGOJOスクール」の事業も始まった。新氏は、のちのち「SAGOJOコイン」(仮)のような仕組みを導入し、旅で稼いだお金をまた、旅や地域のために還元するような「SAGOJO経済圏」みたいなものができればと未来予想図を示した。

 SAGOJO社は現在IPOを目指して、「この春、鋭意資金調達中」(新氏)ということだ。新氏と旅好きの仲間たちが思い描いた「旅することの価値」「旅人が生み出す価値」は徐々に世の中に浸透しているようだ。

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ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。