Open Innovation Platform
FOLLOW US

配達ロボットが家に上がる日〜韓国・KWレポート

ネイバー第2社屋「1784」の配送ロボット「ルーキー」(ネイバー提供)(c)NEWSIS

ネイバー第2社屋「1784」の配送ロボット「ルーキー」(ネイバー提供)(c)NEWSIS

走行技術、商用化レベルに高度化

【KOREA WAVE】「自動運転ロボットがコーヒー配達に来ました」韓国ネット大手ネイバーの第2社屋「1784」では、100台余りのロボット「ルーキー」があちこちを駆け回る。役職員への書類の持ち運びのほか、弁当やカフェの配達など多様なサービスをこなす。

 社屋の延べ面積は16万5000平方メートル。地下8階、地上28階規模の超大型・超高層建物をロボットが専用エレベーターに乗って移動する。カカオモビリティの社屋では、役職員がアプリを通じて社内カフェに飲食物を注文すれば、配達ロボットが手元まで持ってきてくれる。ロボットが建物内でカフェ飲料を配送することはもちろん、同時に移動経路上にある目的地に郵便物をまとめて配送することもできる。

◇一般建物にも導入可能

 最近、自動運転配達ロボットのような「サービス用ロボット市場」に対する関心が高まっている。人工知能(AI)とセンサー技術の発展は、生活の質を高める新たな生活環境を提供するものと期待される。ロボットに適したインフラが整った建物だけでなく、一般建物への導入も可能になり、配達ロボットの大衆化時代はすぐそこまで来ている。

 カカオモビリティはLG電子との協業を通じ、社内カフェでロボットを利用した室内配送サービスを初めて開始した。ネイバーは、クラウド・デジタルツインで装備したロボットインフラの新社屋「1784」でロボット配送サービスを披露した一方、カカオモビリティは一般建物にも導入可能なサービスを提供した点で差別化を図った。

◇数多くの制約、クリアできるか

カカオモビリティ提供(c)NEWSIS
カカオモビリティ提供(c)NEWSIS

 これまでにロボット機器の走行技術は、商用化が可能なレベルまで高度化されてきた。だが、実際に具体化するには数多くの制約がある。

 各注文先別に配送注文形態が異なるため、ロボットが特定店舗の業務だけしか応じられない。スマートビルのように、建物全体にロボット運営のインフラが備えられた環境だけでしかサービスが提供できない。

 だが、カカオモビリティのロボットプラットフォームが適用されれば、ロボットが多様な顧客から注文を受け、まとめて配送することが可能になる。専用エレベーターや建築物内センサーなどロボット運営インフラが整っていない一般建物でも、これまでのシステムを活用して、ロボット配送を導入することができる。

 サービス適用範囲が特定店舗から建物単位に広がり、ロボットの1台当たり生産性が高くなる。ロボット配送サービスの商用化が加速化すると期待される。

 カカオモビリティ未来移動研究所のチャン・ソンウク所長は、次のように抱負を語っている。「カカオモビリティが積み上げてきたAI配車、ルートの最適化、高精度地図の構築など、プラットフォームの機能は、未来モビリティ技術全般で求められる核心的な技術になる。こうした機能を土台に、オープン型ロボットプラットフォームを構築する。現在のロボット走行技術と建物環境でも直ちに適用できるロボット配送サービスを具体化し、ロボットサービスの商用化を繰り上げる」

「ラストマイル」の攻略

 配送ロボット産業で特に重視しているのは「ラストマイル」(消費者に商品を伝達する最後の段階)の市場だ。

 韓国国内物流サービス用ロボット企業としては、▽現代自動車と、韓国最大のフードデリバリーアプリ「配達の民族」を運営する「優雅な兄弟たち(Woowa Brothers)」▽ロボットメーカー「ロボティズ(ROBOTIS)」▽ロボット関連企業「ユジンロボット(YUJIN ROBOT)」▽産業用ロボット製造「ティーロボティクス(T-Robotics)」▽自律走行ロボット開発専門「ツイニー(Twinny)」▽都心型自律走行ロボット配信プラットフォーム「ニュービリティ(NEUBILITY)」――などがある。

◇しのぎを削る各社

 現代自動車は、屋内外の自動運転ロボットを開発・生産し、優雅な兄弟たちと実証事業を進めている。優雅な兄弟たちは、ロボットによる食料や生活必需品などの配達注文件数が初めて1万件以上を超えた韓国の事業者だ。屋内外ですべてロボットによる配達サービスを提供する企業は、優雅な兄弟たちが世界で唯一とみられる。

 ロボティズは、屋内外の自動運転ロボットを開発し、ホテル配送ロボットを販売している。ユジンロボットは、自動運転ソリューション事業を営んでおり、関連部品やロボット開発、ゴーカートの実証事業を進めている。ティーロボティクスは、自動運転物流ロボットの新規事業を進めており、昨年は無人搬送車(AGV)の初受注に成功した。

◇リゾートやキャンプ場も対象

 トゥイーニーは、自動運転運送ロボットのスタートアップで、2021年のシリーズB当時、企業価値が1100億ウォン(約110億円)と認定された。ニュービリティは、自動運転ロボットのスタートアップで、通信大手KT、サムスン電子などと協業してロボットを供給している。

自律走行配送ロボットを確認するKTとキャンピングトークの関係者(写真=KT提供)(c)NEWSIS
自律走行配送ロボットを確認するKTとキャンピングトークの関係者(写真=KT提供)(c)NEWSIS

 KT、SKテレコム、LGユープラスなど国内通信会社は、LG電子・斗山ロボティクス・ニュービリティなどロボット製造業者と協力する形でロボット事業を展開している。ロボットに必要な通信や人工知能(AI)などの技術提供をはじめ、消費者がロボットを簡単に活用できるサービスやプラットフォームを提供し、既存に保有している流通チャンネルを通じたロボット普及拡大を目標にしている。

 KTは今年、世界最大規模の移動通信産業展示会「MWC」で、コールドチェーン(低温を維持しながら製品を消費まで届ける)システム機能を適用した新たな自動運転配送ロボットを披露した。リゾートやキャンプ場を対象にした商品だ。KTは今後、配送ロボットに続き、ホテル、病院などに設置された多様なロボットサービスにも温度・湿度を調節できるコールドチェーンシステムを拡大する。

 求人難と人件費引き上げの影響によるインフレーションの進行で、サービス用ロボット市場はサービング・案内、物流分野を中心に成長するとみられる。

労働力不足を“追い風”に 

自律走行配達ロボット「DILLY DRIVE」(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS
自律走行配達ロボット「DILLY DRIVE」(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS

 グローバル市場調査機関「ストラテジー・アナリティクス」は、世界のサービスロボット市場が2024年に1220億ドル(約16兆5530億円)規模に増加すると予想する。国際ロボット連盟(IFR)はサービスロボット市場が年平均23%以上の成長を記録すると見込んでいる。

◇新たな需要を提供

 韓国の民間シンクタンク「KT経済経営研究所」は、韓国国内で2025年までに23万台のロボットが普及するとし、2兆8000億ウォン(約2830億円)規模で市場が成長するとみている。製造ロボットからサービスロボットに市場の中心が変わると考えている。

 新韓投資証券は「インザストーリー」報告書を通じて次のように展望している。「グローバル大企業が製造・物流を支配している産業用ロボット市場とは異なり、サービス用ロボット市場は新たな需要を提供する。韓国で人口減や高齢層の増加に伴い、労働力不足が深刻化するのは確実だ。したがって、サービス用ロボット時代が到来する時期はより早まるだろう」

今秋にも路上で走行場面 

自律走行配達ロボット「DILLY DRIVE」(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS
自律走行配達ロボット「DILLY DRIVE」(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS

 自動走行、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、ロボットなど、革新的技術・サービスの事業化を促すため、地域や期間を限定して、既存の法律や規制の適用を一時的に停止する制度を「規制サンドボックス」と呼ぶ。

 屋外自動運転ロボットで、この規制サンドボックスの「1号企業」となったのが、韓国のロボットメーカー「ロボティズ(ROBOTIS)」だ。

 キム・ビョンス代表は4月6日、国会や政府省庁関係者らと面会して自社事業を紹介し、次のような見通しを語った。「早ければ、今年第4四半期(10~12月)には、路上で配達ロボットの走行場面を見ることができると期待している」

 今年中には、本格的な屋外自動運転ロボット市場が開かれる見通しだ。配達ロボットが、屋外の歩行道路を自動運転しながら、食べ物を配達する日も遠くない。

 業界関係者によると、屋外移動ロボットを歩行者と同様にみなし、歩道通行を可能にする道路交通法改正案が3月30日、国会本会議で可決された。屋外移動ロボットの運行に関する根拠と、歩道通行許容基準などを骨子とする「知能型ロボット法改正案」も整えられる。

◇韓国政府も支援に積極的

 従来、ロボットは車両扱いだったため、歩道通行が不可能だった。すでに室内では自動運転ロボットが実用化されているが、屋外では関連規制に縛られ、実証するにとどまっていた。

 キム・ビョンス代表は「(法律が整備されれば)屋外自動運転ロボットを利用した多様な事業化を試みることができるだろう」と意気込む。

 韓国政府もロボット産業の支援に積極的だ。産業通商資源省は3月2日に開催した「第3回規制革新戦略会議」で、先端ロボット規制革新法案を発表した。ロボット市場が急速に成長する中、制度改善に速度を上げ、51課題のうち39課題を来年までに終える計画だ。

不測の事態にどう備えるか 

「アリウェイ広橋」で稼働中の「優雅な兄弟たち」の配送ロボット(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS
「アリウェイ広橋」で稼働中の「優雅な兄弟たち」の配送ロボット(写真=優雅な兄弟たち提供)(c)NEWSIS

 屋外自動運転配達ロボット市場については、まだまだ社会的な議論が必要だ。いくら最適な経路で走行するとしても、距離が遠ければ、人の手で配達するより時間がかかる。大雪・大雨など、予想できない気象状況も考えあわせる必要がある。また、人が故意に走行を妨害したり、凹凸の激しい歩道を走行したりする時には、中身をこぼしたりする場合もありうる。韓国国内のあるサービス用ロボットメーカー代表は次のように危惧する。

「技術が発展し、法的な基盤が整えられるにしても、屋外自動運転ロボットの商用化には、まだ越えるべき山がある。人命被害をもたらすならば、サービス用ロボット市場の大衆化の障害になりうる」

◇専用保険の開発

 これまで実証事業を通じて、数多くの試行錯誤を経験した。にもかかわらず、常に予期しない変数による人的・物的事故が発生する可能性は存在する。さらに、韓国国内では屋外走行ロボットサービスが不可能だったがゆえ、保険商品の開発もまだ不十分だ。

 韓国通信大手KTは「サービスロボットの運用によって発生しうる、すべての事故に備えた保険商品がない」という状況を踏まえ、DB損害保険とともに、サービスロボット市場活性化のために初めて「AIサービスロボット」専用保険を開発した。

 KTはDB損害保険の「AIサービングロボットサービス型商品」を通じ、営業賠償保険に加入し、ロボットを運営しながら発生する事故データを収集する。両社はこうして収集したデータを分析し、ロボットに特化した専用保険商品を共同開発する計画だ。(c)NEWSIS/KOREA WAVE/AFPBB News|使用条件(※[KWレポート] 配達ロボットが家に上がる日(1)〜(4),(6)の5篇を転載)