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東京ゲームショウ2023 変化を感じたパソコンゲーム、ブロックチェーンゲームの今後

TGS2023

TGS2023

TGS2023 賑わう会場の様子
TGS2023 賑わう会場の様子

 東京ゲームショウ2023(TGS2023)が千葉県の幕張メッセで21日から開催されている。(21日、22日はゲーム業界関係者やメディアに向けたビジネス・デイ。23日、24日が一般公開。)この数年は、コロナ禍でオンラインや縮小開催が続いていたが、今回は4年ぶりに幕張メッセ全館を使って、過去最大の44カ国・地域から787の企業・団体が出展する。初日の午前中に訪れたが、最寄りのJR海浜幕張駅には会場に向かう多くの人があふれていた。耳に入ってくる外国語も多種多様で、海外からの来場者も多いようだ。

 さて、今年のゲームショウで注目したのは、プラットフォーム変化とブロックチェーンゲーム普及だ。

ゲーム配信プラットフォームの台頭

 日本が長く“ゲーム大国”たりえたのは、優れたゲームタイトルの力もさることながら、やはり有力なゲーム専用機が日本のメーカー発だったことが大きい。今にいたるまで、「Nintendo Switch」などのゲーム専用機の人気は揺るがないが、ここ数年ゲームをプレイするプラットフォームの状況には大きな変化がある。

基調講演の様子
基調講演の様子

 TGS2023の基調講演は、そういった状況が俯瞰できるパネルディスカッションだった。登壇したのは、ゲーム配信サービス「Steam」を運営するValve社のPierre-Loup Griffais氏とErik Peterson氏。そしてカプコンのWilliam Yagi-Bacon氏とバンダイナムコスタジオの原田勝弘氏だ。

 Steamは、パソコンでゲームをするユーザーにはお馴染みのプラットフォームサービスで、Steam上で大手メーカーのゲームをはじめとした多くのゲームがダウンロード購入でき、プレイもできる。また、通常の価格より安価にゲームが手に入る「セール」というイベントが開催されることもSteamを使うメリットとなっている。Steamなどのプラットフォームサービスがゲーム市場にもたらした変化は大きい。販売流通の変化だけではなく、「安価にパソコンで遊べる」ゲームタイトルの増加は、日欧米以外の国々にも多くのゲームファンを生み出し、ゲーム市場が広がった。

 基調講演でも言及されたが、過去5年日本においてもSteam利用者の伸びは著しい。またパブリッシャー側から見ても、ダウンロード販売の伸びは顕著であり、これまで家庭用ゲーム機での利用が大半だった『鉄拳』などの有力タイトルでも、近年3〜4割程度はパソコンでの利用となったという。

PCゲームユーザーを携帯端末へ誘導

 コロナ禍の巣ごもり需要で、ゲーム市場は活性化した。家庭用ゲーム機も売れたが、それ以上にゲームPCが普及した。自宅の仕事用パソコンの機能では物足りなくなると、より高性能なゲームPCに眼が向くのだ。そして、同様のことはマートフォンにも言える。

 今回のTGS2023では、台湾のASUSや中国のレノボなどPC、スマホメーカーも出展しており、独自の携帯ゲーム機を展示している。家で楽しんでいるPCゲームのタイトルを移動中も楽しみたい。あるいはソファで寝転びながら気軽にプレイしたいというニーズにこたえるため、汎用のスマホではなくパソコン並みに高性能な携帯端末を開発した。こうした端末が普及すると、PCゲームのマーケットはスマートフォンユーザーにも広がる。

そしてブロックチェーンゲームは?

Oasysの展示エリア
Oasysの展示エリア

 もうひとつ注目したのは、ブロックチェーンのゲームだ。昨年、web3がトレンドとなった際、ブロックチェーンを利用したゲームの可能性が語られた。「The SandBox」「Axie Infinity」などの有力なゲームも出現したが、「プレイして稼ぐ」側面に注目が集まりすぎたこともあり、ゲームとしては異端視されてきた。また、処理能力や仕組みの煩雑さなどブロックチェーン技術をゲームで利用するにはいくつかの課題もあったため広がりに欠ける状態で、他のweb3サービス同様、マスアダプトの手前で試行錯誤をしている。

 そんな状況が少し変わるのではと思ったのは、ゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys」の登場だ。2022年12月始まったこのプロジェクトには多くの有力ゲーム関連企業も協力している。またブロックチェーン上での取引に付随する独特なルールを、あまり意識することなくユーザーが利用できる仕組みとなっている。

 TGS2023では、Oasysと、ブロックチェーン技術を活用しアプリケーション開発を行う、double jump.tokyo株式会社が共同でブース出展しており、Oasysチェーンなどを使った複数のブロックチェーンゲームタイトルを紹介していた。

ブロックチェーンゲーム『Battle of Three Kingdoms - Sangokushi Taisen -』
ブロックチェーンゲーム『Battle of Three Kingdoms – Sangokushi Taisen -』

 展示の中で大きく扱われていたのは、double jump.tokyoがセガから『三国志大戦』アートワークのライセンス許諾をうけて開発しているブロックチェーンゲーム『Battle of Three Kingdoms – Sangokushi Taisen -』だ。このゲームタイトルは、トレーディングカードアーケードゲームとして馴染みのあるユーザーも多い。今回それがブロックチェーンゲームに衣替えすると、カードはNFTカードとなる。すでに著名なゲームタイトル、キャラクターを使うことで、ブロックチェーンゲームの一層の普及をねらうという。

 ブロックチェーンゲームが、通常のオンラインゲームと異なるのは、ゲーム内に登場するアイティムをゲームを跨いで取引や利用することが可能であること。そしてそれが報酬につながることだ。しかし、この側面を強調しすぎると、コアなゲームユーザーに忌避されてしまう。

 しかし、ゲーム周辺を見渡すとトレーディングカードの価格の高騰。また、ゲーム関連のアカウントや資産を現実の通貨でする売り買いするRMT(Real money trade)が、歓迎されないながらも盛んであることを考えれば、ブロックチェーンゲームの可能性は小さくない。

 不透明な取引にルールを当てはめ、その規則に従った取引を検証可能な形で自律的に運営するのはブロックチェーンの得意とするところだ。報酬を得る環境の周辺整備も同時に進め、それを含めてアピールする事で、ゲームのプラットフォームにブロックチェーンを利用することへの理解が広がるのではないだろうか。

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 「変化が早くなった」といっても、業界の勢力図さえも変えてしまうプラットフォームの変化には時間が必要だ。PCゲームのSteamもサービスを始めてからここに至るまで約20年かかっている。ブロックチェーンゲームは、登場してからまだほんの数年。その真価を見極めるにはもう少しの猶予が必要だろう。

Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。