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脳インプラント、まひ患者の上肢で初の臨床試験

神経刺激装置(IPG)への電極挿入の様子。オランダの医療技術企業オンワード・メディカル提供(2020年4月12日撮影)。(c)AFP PHOTO : ONWARD Medical:Marc AMIGUET

神経刺激装置(IPG)への電極挿入の様子。オランダの医療技術企業オンワード・メディカル提供(2020年4月12日撮影)。(c)AFP PHOTO : ONWARD Medical:Marc AMIGUET

【AFP=時事】人工知能(AI)を使って思考を読み取り、神経系を通じて電気信号を送ってまひした上肢の動きを回復させる新技術が、スイスで初めて試験段階に入っている。

 今年5月には、脊椎インプラントとブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)を組み合わせ、下半身不随の患者の歩行を回復させた画期的な研究結果が科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 だが、開発に携わるオランダの医療技術企業オンワード・メディカル(ONWARD Medical)によると腕や手、指など「上肢の機能」に使用されるのは今回が初めてとなる。

 同社の共同設立者で、インプラントの埋め込み手術を担当した外科医のジョセリーヌ・ブロッホ(Jocelyne Bloch)氏は、歩行にはバランスの問題などがあるが、「腕の可動性は(足よりも)もっと複雑だ」とAFPに語った。「手の筋肉組織は非常に細かく、動作する際には多くの小さな筋肉が同時に動いている」と説明する。

 匿名の患者は、転倒によって腕が不自由になった46歳のスイス人男性。先月、スイス・ローザンヌ大学病院(Lausanne University Hospital)で2回の手術が行われた。

 最初の手術では頭蓋を小さな範囲で切除し、フランス原子力庁(CEA)などが運営する研究機関クリナテック(Clinatec)が開発した直径数センチの脳インプラントを挿入。

 次の手術でオンワードが開発したクレジットカード大の電気装置を患者の腹部に埋め込み、電極を介してそれを脊柱上部に接続した。

 BCIはAIを用いて脳の電気信号から患者の意思を解読し、脊髄刺激装置に指示を送る「デジタルブリッジ」として機能する。

 患者はまだ訓練段階だが、ブロッホ氏は「今のところ順調だ。脳の活動記録を見ると、刺激も機能している」と述べた。

 今後、脳インプラントにさまざまな動きを認識させる必要があり、自然な動きを実現するには数か月かかるという。この臨床試験にはさらに2人の患者の参加が見込まれている。

 脳インプラントは長年、SFの世界にしかない想像の技術だったが、実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏が立ち上げた新興企業「ニューラリンク(Neuralink)」などによって現在、急成長中の分野となっている。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件