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中国自動車市場、品質改善と価格下落はいつまで続く

海南省海口市で開催された、海口国際新エネルギー車インテリジェントネットワーク自動車博覧会(2024年1月5日撮影、資料写真)。(c)CNS:駱雲飛

海南省海口市で開催された、海口国際新エネルギー車インテリジェントネットワーク自動車博覧会(2024年1月5日撮影、資料写真)。(c)CNS:駱雲飛

【東方新報】中国市場において自動車が「一斉開花」し、新旧のメーカーがかつてないスピードで新製品と新しいブランドを市場に出している。そして同時に価格競争が激しくなっている。市場の先頭を走るメーカーは「装備の追加」と「値下げ」の両方に力を注ぎ、多くの同業者がそれに追随するという様相を呈している。車の性能はますます良くなり、価格はますます下がっているという状況だ。

 この2つの現象は、現在の中国市場を反映するものだが、実は100年前の米国自動車市場でも同じことが起きていた。当時の米国市場はまさに「群雄割拠」だった。フォード(Ford)、ゼネラルモーターズ(General Motors)、クライスラー(Chrysler)などの大型自動車メーカーがその時代に誕生した。同時に、高級車で名を馳せたパッカード(Packard)、低価格車種への挑戦と当時の新装備の積極的採用が特徴的だったハドソン(Hudson Motor Car)、全米最大の馬車製造企業から自動車に転身したスチュードベーカー(Studebaker)など、かつては輝きを見せたが今は歴史の中に消えてしまったメーカーもある。

 企業のブランド戦略などを独自の視点で諮問する著名なコンサルタント企業「Ries」の中国法人「里斯品類創新戦略諮問(Ries Strategic Positioning Pioneers)」自動車分野のシニアコンサルタント趙春璋(Zhao Chunzhang)氏は「過去の事例から見て、自動車業界で完全な競争の末に生き残る企業は、多くの場合10社以下だ。例えば、米国の自動車市場の初期段階では100近くのブランドがあったが、最終的に生き残ったのは13ブランドだけだった。今は中国の自動車産業が淘汰戦の真っ最中だ。その中で新興ブランド数はピーク時の2018年の48から21まで減少している」と分析している。

 業界関係者は、今の中国市場を「完全な競争状態」と見る。EV車で業界をリードする比亜迪汽車(BYD)が今年の2月に「値下げの最初の一発」を放ったが、それで多くの独立系、合弁系、新勢力のブランド各社が一斉に「価格競争」に突入した。およその統計によると、現在までに約30の自動車企業がこの「価格戦争」に参戦、その値下げ幅は数千元から数万元(1元は約21円)にも達している。

「価格競争」の形態は直接的な値下げだけでなく、何らかの権益の付与や関連商品の特価提供など様々な手法が採られている。

「今は、どの企業も市場で絶対的に優位な立場に立つほどの力を持っていない。ゆえに価格に差をつけることでしか売り上げを伸ばすことができない。市場シェアと引き換えに値下げをするというのが価格競争の根底にある現実だ」、自動車業界のシンクタンク「億欧汽車(Yiou Qiche)」の楊永平(Yi Yongping)総裁は中国新聞社(CNS)の取材に対し、このように語った。 すなわち、現在の中国自動車市場は、製品面、技術面などで各社が似通ったレベルに収束し、製品の競争では他社に差をつけることが困難な状況なのだ。

 同済大学(TongJi University)汽車学院汽車産業技術戦略研究センターの王寧(Wang Ning)主任は「製品の均質化が進む過程で、優れたコストコントロールにより価格を引き下げ、それでも適切な利益を確保できる企業が生き残る可能性が高い」と考えている。

 BYDの王伝福(Wang Chuan)董事長は昨年3月「BYDは10万~20万元(約209万~418万円)の製品価格帯で価格決定力を持つ」と言っていた。そして今年のBYDは「電気は石油より安い」というスローガンを唱えている。

 そのスローガンが当たっているか否かはさておき、確かにBYDは産業チェーンの垂直統合効果とスケールメリットで優位性を持っており、それが生産コスト抑制の助けになっている。

 楊永平氏は「昨年の中国の自動車生産と販売台数はともに3000万台を超え、すでに非常に大きな市場になり、販売台数の増加は基本的には鈍化傾向だ。それでも販売台数を伸ばしたいならば、海外市場のさらなる開拓に加え、他社のシェアを食っていくしかない」との現実を指摘する。

 そしてまた、この「価格競争」は新エネルギー車と石油燃料車の駆け引きでもある。

 中国汽車工業協会のデータによると、24年1~2月、中国の自動車生産台数は前年同期比8.1パーセント増、販売台数は同11.1パーセント増となった。その中で新エネルギー車の生産台数は同28.2パーセント増、販売台数は同29.4パーセント増と、全体の増加率を大きく上回っている。

 王寧氏は「新エネルギー車の市場シェアの拡大に伴い、石油燃料車と同じ価格かそれ以下の価格を経験するプロセスは比較的正常な現象と言える。技術コストの低減に伴い、新エネルギー車の価格が下がることは一種の必然的な 『価格回帰』として見ることができる」と話す。

 それでは、自動車市場の「価格戦争」は、いつまで続くのだろうか? 業界の一般論では「今年の自動車市場は値下げ競争が主流だ」と見られているという。

 楊永平氏は「価格戦争はまだ山登りの途中だ。今年5月の北京モーターショーの頃にピークに達し、その後4四半期までにゆっくりと平穏になってくるだろう」との予想を立てている。【翻訳編集】東方新報/AFPBB News|使用条件