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培養肉を小売店の冷凍食品コーナーで販売 シンガポール 歴史的な一歩

新商品「GOOD Meat 3」がシンガポールのHuber's Butcheryで販売開始7.2シンガポールドルで販売 ©︎GOOD Meat

新商品「GOOD Meat 3」がシンガポールのHuber's Butcheryで販売開始7.2シンガポールドルで販売 ©︎GOOD Meat

 フードテックの先進国シンガポールでは、街の小売店で培養肉が買えるようになる。米国のフードテック企業イートジャストの子会社GOOD Meatは5月15日、培養肉をシンガポールの小売店Huber’s Butcheryで販売することを発表した。

7.2シンガポールドルで販売 ©︎GOOD Meat
7.2シンガポールドルで販売 ©︎GOOD Meat

 店頭に並ぶ新製品「GOOD Meat 3」には、培養鶏肉が「3%」含まれている。GOOD Meat 3は、2024年を通じてのHuber’s Butcheryの冷凍食品コーナーで入手可能となる予定で、120グラムのパッケージが7.20シンガポールドル(約830円)で販売される。

 培養肉といってもそのほとんどは、植物性タンパク質の代替肉からできており、培養された肉の比率は3%にすぎないが、GOOD Meat 3は、培養肉への消費者の関心の高まりに応じて市場流通が可能な製品として開発されたものだ。価格も一般的な鶏肉よりは高価であるものの、食肉として手が届く範囲の価格設定となっている。現時点では、製造コストがまだまだ高い培養肉の課題に対処するため、培養肉の比率を下げて製品化したのは “羊頭狗肉”的な印象はあるものの、現実的な判断。なにより培養肉を持ち帰り、家庭料理で味わえるようになったことが重要なのだ。

 同社のリリースによれば、イートジャストの共同創設者兼最高経営責任者(CEO)のJosh Tetrick氏は、「当社にとっても、培養肉業界にとっても、そしてGOOD Meat 3を試してみたいシンガポールの人にとっても、歴史的な日です」と語っている。 さらに「今日まで、一般の人が培養肉を小売店で購入することはできなかったが、それが可能になりました。今年は、これまでよりも多くの培養鶏肉を販売する予定です。同時に、培養肉を大規模に製造できることを証明するには、やるべきことがたくさんあることを私たちは認識しており、引き続きその目標に注力していきます」と、GOOD Meat 3を小売する意義とその目標を強調した。

 Huber’s Pte LtdのエグゼクティブディレクターであるAndre Huber氏も同様の認識を示しており、培養肉を家庭料理で使用する顧客からのフィードバックを受けることで、GOOD Meatと協力して製品を継続的に改善したいと述べている。

 シンガポールでは、このように前向きな動きのある培養肉も、GOOD Meatの本拠地米国では逆風にさらされている。フロリダ州では5月1日に、同州での培養肉の製造・販売を禁止する法案に州知事が署名した。また、他の州でも同様の動きがある。

 イノベーションが既存の国内産業を脅かすことは、他の分野でも同様だ。EVや培養肉など脅かされる産業の規模が大きければ、大きいほど政治的に利用される局面も増えるし、昨今の米国ならなおさらだ。

 培養肉は、当初は脱炭素や食糧危機といった地球規模の課題解決を目指してスタート。これまでは、製造技術やコスト、食味・食感など技術的な進化に力を注いできたが、ここに来て食品としての位置づけや、産業としてのメリット・デメリットなど説明や社会的な合意形成が必要な要素が増えてきた。

 培養肉の製品としての進化、そして、どこ(誰)が受け入れ、また拒むのか。そのグローバルな動向にも今後は注目していきたい。

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。