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「粘り強さ」をその名に冠して ispaceの新しい月面探査車が公開

ルクセンブルクのispace EUROPEで初公開されたTENACIOUS(テネシアス)ローバー

ルクセンブルクのispace EUROPEで初公開されたTENACIOUS(テネシアス)ローバー

 宇宙事業を手掛ける日本のスタートアップ、株式会社ispace(アイスペース 本社:東京)は、25日に同社が拠点を置くルクセンブルクで開いた説明会で、新たに自社で開発したマイクロローバー(小型月面探査車)を公開した。

 その名称は「粘り強さ」を意味する「TENACIOUS(テネシアス)」。サイズは高さ26cm、幅31.5cm、全長54cm、重さは約5kgだ。軽量で、ロケットの打ち上げ時の振動にも耐えうるように、躯体はCFPR(炭素繊維複合材)でできている。また、レゴリス(月面の表面を覆う目の細かい砂の堆積層)環境でも安定した走行が出来るよう、車輪の形状が工夫されている。ローバーの前方にはHDカメラが搭載されており、月面の様子を高解像度で探ることができる。

組立が完成したフライトモデルのマイクロローバーTENACIOUS(テネシアス)
組立が完成したフライトモデルのマイクロローバーTENACIOUS(テネシアス)

 説明会で披露された動画と説明によると、マイクロローバーは、月面でランダーから降ろされた後、太陽光パネルとアンテナを展開。月面を走りながら前部にある小型スコップで月表面のレゴリスをすくい上げ、収集する。最大搭載量は1kgとのことなので、十分な量の試料を集めることができる。また、これらの操作は、ルクセンブルグにあるオペレーションセンターから、月面にあるランダーを経由した通信により遠隔操作で行われる。

 マイクロローバーは、この後、ルクセンブルクより日本へ輸送され、2024年の冬に米国フロリダ州から打ち上げ予定の米スペースXのFalcon 9に搭載される「HAKUTO-R」ミッション2 のRESILIENCEランダー(月着陸船)に積み込まれて月を目指す。月面で採集したレゴリスなどのデータは、米航空宇宙局(NASA)にも提供されるなど日・欧・米にまたがるプロジェクトとなっている。

 ispaceは2022年に同社初の月面着陸船を打ち上げ、2023年4月には月面着陸直前までのミッションは達成したものの着陸は失敗に終わっている。今冬の挑戦が成功し、マイクロローバーが月面で計画通りミッションを達成できることを期待したい。

【参考】HAKUTO-R Mission2 マイクロローバー組み立て完了に関する記者発表会

https://youtu.be/kIl4LRvsXEI?si=R6djXTpwrFa3NaZt

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。