【AFP=時事】地球に衝突し、恐竜を絶滅させた天体として、科学界で長年論争を引き起こしてきた「チチュルブ(Chicxulub)衝突体」の起源について、驚くべき重要データを示す新研究が15日、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。
この研究チームは革新的な技術を用い、約6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島(Yucatan Peninsula)沖に衝突し、地球史上最も直近の大量絶滅を引き起こした破滅的な天体が、木星軌道の外側に由来することを示した。
チームはまた、チチュルブ衝突体が彗星(すいせい)だったという見解を否定している。 論文の主著者で独ケルン大学(University of Cologne)の地球化学者マリオ・フィッシャーゴッデ(Mario Fischer-Godde)氏はAFPに対し、「今やこれらの知識に基づき、この小惑星が形成されたのは木星(軌道)の外側だということができる」と語った。
この種の小惑星が地球に衝突することは非常にまれなため、新研究の結論は特に注目される。
フィッシャーゴッデ氏はこの結論について、将来の天体衝突の脅威予測や、地球の水の由来解明に役立つかもしれないと述べた。
■サンプル
新しい発見は、中生代白亜紀と新生代古第三紀の間の時期に形成された堆積物サンプルの分析に基づいている。この時期は、チチュルブ衝突の影響で生物が大量絶滅したK-Pg境界に相当する。
研究チームは、ルテニウムという元素の同位体を測定した。ルテニウムは小惑星では珍しくないが、地球では非常にまれな元素だ。
チチュルブ衝突によるがれきが堆積したいくつもの地層を調査したところ、検出されたルテニウムは「100%、この小惑星に由来する」ことが確認できた。
小惑星の主要なグループには、太陽系の外側で形成され、炭素を多く含む「C型小惑星」と、太陽系の内側で形成され、ケイ酸塩を多く含む「S型小惑星」があるが、ルテニウム同位体はこの二つを区別するために使用することができる。
チチュルブ衝突は巨大地震を引き起こし、地球規模の冬をもたらし、恐竜や他の多くの生命体を絶滅させたが、今回の研究はその原因となった天体が、木星の外側で形成されたC型小惑星だったことを確認する結果となった。
20年前の研究でもそうした仮説は立てられていたが、当時は現在よりもはるかに確実性が低かった。 フィッシャーゴッデ氏によると、地球に落下する小惑星の破片たる隕石(いんせき)のほとんどはS型小惑星ものであるため、この結論は非常に驚くべきものだと述べた。【翻訳編集】 AFPBB News