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安楽死カプセル、年内にも初の実用へ スイス

自殺ほう助を可能にするカプセル「サルコ」について説明する「ザ・ラスト・リゾート」の諮問委員会のメンバーで弁護士のフィオナ・スチュワート氏。スイス・チューリヒで(2024年7月17日撮影)。(c)ARND WIEGMANN / AFP

自殺ほう助を可能にするカプセル「サルコ」について説明する「ザ・ラスト・リゾート」の諮問委員会のメンバーで弁護士のフィオナ・スチュワート氏。スイス・チューリヒで(2024年7月17日撮影)。(c)ARND WIEGMANN / AFP

【AFP=時事】医療従事者の手を借りずに安楽死を可能にするポータブル型カプセルが、スイスで年内にも初めて実際に使用される可能性がある。自殺ほう助団体が明らかにした。

 宇宙船を思わせる「サルコ(Sarco)」と呼ばれるカプセル形の機器が初公開されたのは、2019年。ボタンを押すとカプセル内部は酸素の代わりに窒素で満たされ、低酸素症によって死に至る。

 スイスでは一般的に、自殺ほう助が合法化されている。同国で自殺ほう助の権利を訴える団体「ザ・ラスト・リゾート(The Last Resort)」は、国内での使用に法的な障害はないとの見方を示している。 ただし、安楽死を希望する場合は、精神状態を評価し、判断力の有無を判断することがが法律で義務付けられている。

■いったんボタンを押すと取り消せない

 サルコを利用する際は、カプセルに入ってふたを閉じ、自動化された質問に答える。自分の氏名、今いる場所、ボタンを押すと何が起きるかを把握しているかなどだ。

 サルコの開発者で、スイスの自殺ほう助機関「エグジット・インターナショナル(Exit International)」創設者のフィリップ・ニチキ(Philip Nitschke)氏は7月18日の会見で、「『死を希望する場合』は『このボタンを押してください』というプログラム音声が(カプセルの中で)流れるようになっている」と説明した。

 いったんボタンを押すと、カプセル内の酸素量は30秒以内に21%から0.05%に急減する。「その後、意識を失った状態で5分ほどたつと、死に至る」 カプセルの中の酸素レベルや心拍数、血中酸素飽和度はモニタリングされており、利用者が「亡くなればすぐに分かる」という。

 土壇場で心変わりしても、「いったんボタンを押すと、取り消す方法はない」とニチキ氏は話した。

■利用可能年齢や料金

 会見に同席したザ・ラスト・リゾートのフローリアン・ウィレット(Florian Willet)最高経営責任者(CEO)は、「サルコの利用を求めて順番待ち」が起きていると明らかにした。

 年内に初の利用者が出る見通しについて、同社の諮問委員会のメンバーで、弁護士のフィオナ・スチュワート(Fiona Stewart)氏は「そうなると思う」と答えた。日時や場所、利用者などは決まっていない。詳細は、実際に利用されるまで公表されることはないとみられる。

 スチュワート氏は、「スイスで穏やかな死を希望している利用者をめぐって報道合戦が起きることは望んでいない」と言う。

 また、利用可能年齢は50歳以上とされているが、18歳以上で重病を患っている場合、「年齢による線引きで苦しんでいる人を拒みたくない」とも話した。

 カプセルは再利用可能で、現行版の身長制限は1.73メートル。サルコを所有するエグジット・インターナショナルは寄付金で運営されており、スチュワート氏によれば、利用料は、窒素代の18スイス・フラン(約3100円)のみになる見通しだという。

■2人用も開発中

 サルコが使用される可能性をめぐり、スイスでは法的・倫理的にさまざまな問題が提起され、自殺ほう助に関する論争が再燃した。「私たちは、自殺ほう助を医療の対象から切り離すことを目指している。サルコを使用すれば、医師が立ち会う必要はない」とスチュワート氏は主張した。

 3Dプリンターで製作されたカプセルはオランダで研究開発された。開発期間は12年間で、65万ユーロ(約1億500万円)以上の費用が投じられた。

 スチュワート氏によれば、この1年間、ロッテルダム(Rotterdam)のワークショップで機器を使って試験運用が行われてきたが、人間や動物には使われていない。

 開発チームは現在、カップルで一緒に命を終えられるよう2人用のサルコの製作を目指している。

ザ・ラスト・リゾートによれば、死刑での利用を認める考えはないという。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件