【AFP=時事】ドイツの森林地帯に設置された、太陽光パネルで覆われた巨大な緑色の球体は、一見するとゴルフボールのようだ。しかしその内部には、山火事を防ぐためのハイテク機器──人工知能(AI)を搭載したドローン──が収められている。開発者たちは、将来的に山火事の発生から数分以内に探知し、さらには消火まで担えるようになることを目指している。
このドローンを開発したのはドイツの企業ドライアド。同社の最高経営責任者(CEO)カルステン・ブリンクシュルテ氏は、ベルリン郊外で行われたデモンストレーションで「最近の火災は、以前よりもはるかに速く広がり、規模も拡大している。より迅速な対応が不可欠だ」と語った。
これまでベルリン近郊では山火事の発生は比較的少なかったが、近年は事態が変わりつつある。2022年の熱波の際には、国内各地と同様にベルリン西部でも山火事が発生した。背景には気候変動の影響がある。猛暑や干ばつ、強風によって乾燥が進み、山火事のリスクが高まっている。
欧州森林研究所で山火事管理を専門とするリンドン・プロント氏は、「山火事は基本的に抑えきれない存在になりつつある」と指摘し、だからこそ「予防段階・発生時・消火後の各段階に対応できるツールの開発が不可欠だ」と強調する。
ドライアドのデモでは、森林に設置されたセンサーが、燃焼した木から立ち上る煙に含まれる化学物質を探知する様子が披露された。同社によると、こうしたコンピューター制御による山火事探知システムは、これまで存在しなかったという。
センサーが異常を検知すると、その情報は同社のプラットフォームに送信され、それを受けて緑の球体からドローンが自動で発進する。ドローンは樹木の上空をジグザグに飛行し、火災の位置と広がりを特定する。この情報を活用することで、従来よりも「はるかに効率的かつ迅速」な消防活動が可能になると、ブリンクシュルテ氏は説明する。
■音波で消火する新技術も視野に
将来的には、ドローンを火災現場まで降下させ、新技術によって消火まで行う構想もあるという。その新技術とは、適切な圧力の低周波音波を使う「ソニックキャノン」と呼ばれるもの。
小規模な火災を抑える手段として、効果が期待されている。ブリンクシュルテ氏によれば、この方法で火を鎮めることができれば、ドローンが「大量の重い水」を運ぶ必要がなくなり、より軽量かつ機動的な飛行が可能になるという。
■市場投入は2026年を予定
ブリンクシュルテ氏は、自律的な火災予防システムが最も効果を発揮するのは、「文明と自然が交差する地域」だと述べ、そうした場所では人為的な山火事のリスクが特に高いと説明する。
ドライアドはこのシステムを2026年に市場に投入する計画で、最初は欧州以外の地域での展開が見込まれている。欧州での導入は「数年以内」を目指すという。ただし、実用化に向けてはいくつかの課題も残されている。3月下旬に行われた模擬火災への初動対応テストでは、GPS信号の不具合によってドローンの発進が遅れ、計画通りに対応できずに中断を余儀なくされた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件