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「文明は終わらない」 ゲイツ氏、気候変動への新たな見解

マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏(2025年3月19日撮影)。(c)Arun SANKAR:AFP

マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏(2025年3月19日撮影)。(c)Arun SANKAR:AFP

【AFP=時事】米マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏(70)は28日、自身のブログに掲載した長文の投稿で「気候変動が人類の終焉をもたらすことはない」と述べた。投稿の中でゲイツ氏は、世界的な感染症や貧困への取り組みが、温暖化する世界に備えるために最も貧しい人々を助けることにつながると主張した。

 国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の開幕を前に発表されたこの投稿は、環境関連技術への支援を続けてきたゲイツ氏による「見解の転換」とみられている。ゲイツ氏は、自身が設立した組織「ブレークスルー・エナジー」を通じ、グリーン技術の開発支援を行ってきた。

 ゲイツ氏は投稿で、気候変動が「深刻な影響」をもたらすとしつつも、「人々は予見可能な将来において、地球上のほとんどの地域で生活し、繁栄することができる」と述べた。また、「気候に関する三つの厳しい真実」として、①気候変動が文明を終わらせることはないこと、②気温上昇の抑制は進捗の最良の指標ではないこと、③健康と繁栄が気候の不安定化に対する最強の防御であること――を挙げた。さらに、これまでの温室効果ガス排出削減の分野で大きな進展があったと指摘し、今後の技術革新によってさらなる道が開かれるとの見方を示した。

 地球は現在、パリ協定が掲げる「長期的な温暖化を1.5度以内に抑える」という目標から大きく後れを取っているが、ゲイツ氏は数値にとらわれるよりも、世界が回復力(レジリエンス)を高めることが重要だと主張した。また、世界の貧困層にとっては貧困と病気がより切迫した問題であり、「われわれの主な目標は、特に世界で最も貧しい国々で厳しい状況にある人々の苦しみを防ぐことだ」と述べた。そのためには、極端な高温や低温の日数を減らすことよりも、「極端な気象が大きな脅威とならないよう、貧困や健康状態の悪化を減らすこと」に焦点を当てるべきだと指摘した。

 将来の戦略として、セメントや鉄鋼、航空燃料などの製造にかかる「グリーン・プレミアム(クリーン技術と従来技術のコスト差)」をゼロにすることが重要だと強調した。その上で、COP30以降に向けた「戦略的転換」が必要だとし、「人々の福祉に最も大きな影響を与えることを優先すべきだ」と述べた。

 一方で、専門家からは批判も出ている。米シンクタンク「憂慮する科学者同盟」のレイチェル・クリートゥス氏はAFPに対し、「ゲイツ氏は『生活の改善』を重視するあまり、『科学に基づく温度や排出削減の目標』を軽視しているように見える」と指摘。「両者は本来、対立するものではなく、密接に結びついている。温暖化は世界各地で貧困の撲滅や人間開発の目標を直接的に損なっている」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件