
2月13日、渋滞するテキサス州オースティンの街を走るテスラのロボタクシー。REUTERS/Evan Garcia
[ダラス(テキサス州) 12日 ロイター] by Norihiko Shirouzu Chris Kirkham Evan Garcia – 米電気自動車(EV)大手テスラは先月、自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスを米テキサス州のダラスとヒューストンに拡大した。一部の投資家は、同社をAI主導の自動運転技術企業へと転換するというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の構想が前進していると歓迎した。
しかし、複数のロイター記者が最近両市と昨年すでにロボタクシー試験運用を開始していたオースティンの合計3都市でロボタクシーを実際に試したところ、サービスがいまだにベータ版のテスト段階にあることが明らかになった。待ち時間は長く、全く配車されなかったり、目的地から離れた場所で降ろされた例もあった。
テスラはこの記事に関するコメント要請に応じなかった。
記者はある月曜日の午後に、ダラスの南メソジスト大のキャンパスから市庁舎までこのサービスを利用して移動した。主要高速道路を南へ約8キロほどの距離で、通常なら20分ほどの道のりだ。だが実際には、待ち時間を含めて2時間近くかかった。
記者がテスラ・ロボタクシーのアプリで配車を依頼したのは午後4時55分。だが「ただいま混み合っています」と通知された。ちなみに、似たような仕組みで配車する大手ウーバーのアプリでは、同時刻の同じ区間の移動に、乗車時間22分、待ち時間は8分と表示された。
その後30分間、記者は配車予約を試みたが、「混み合っています」というメッセージか、「近くに利用可能な車両がない」という表示が続いた。検索開始から36分後、利用可能な車両が表示された。待ち時間は19分だった。
他の自動車メーカーの5倍以上になるテスラの時価総額1.6兆ドル(約252兆円)の大部分は、同社が近く大規模なロボタクシー事業を展開するという投資家の確信に支えられている。マスク氏は自社の自動運転技術は「どこでも機能する」と述べ、新市場に参入する前に高精度の地図を作成し徹底的なテストを実施するアルファベット傘下ウェイモの慎重なアプローチを批判してきた。
マスク氏は昨年7月の段階で、テスラのロボタクシーが2025年末までに米国の人口の半数に利用可能になると予測していた。しかし現在、サービスはダラス、ヒューストン、そして昨年6月に最初のロボタクシー試験運用を開始したオースティンの3都市にとどまっている。
4月22日に発表されたテスラの第1・四半期決算報告を受け、複数のアナリストは、ロボタクシーの事業拡大が予想よりも遅れていると指摘した。マスク氏は決算説明会で、同社は負傷者や死亡者を出さないよう「慎重なアプローチ」を取っていると述べた。
ダラス市庁舎へ向かおうとしていた記者がようやく乗車すると、車はダウンタウンへの主要幹線道路であるノース・セントラル高速道路を通らず、一般道を35分近くかけて走行。そして、市庁舎から徒歩15分ほどの駐車場で記者を降ろした。
記者が車内の「サポート」ボタンを押すと、オペレーターはその地域は「制限された区域」だと回答した。ただ、その場所はテスラが先月ソーシャルメディアに投稿したダラスのサービス提供可能区域の内側だった。「まだベータ版なので」と担当者は答えた。
記者はその後、ダウンタウンの別の2カ所への配車を予約した。いずれの場合も、アプリは目的地から徒歩約15分の場所を降車地点として表示した。ダウンタウンのファーマーズマーケットへの乗車では、ロボタクシーは高速道路を挟んだ反対側で記者を降ろし、目的地側に戻るために記者はごみが散乱し尿の臭いが漂う高架下の歩道を歩かざるを得なかった。
別の乗車では、ロボタクシーは左折に4回失敗した。その交差点は「進入禁止」の標識がある高速道路の出口ランプの手前にあり、通常とは異なる交差点の形状が車両を混乱させたとみられる。車両は直進を続け、右折を繰り返して同じ交差点に戻り、予定していた左折を試みようとしたができなかった。記者が遠隔で対応するオペレーターに状況を説明すると、その直後に車両はようやく左折できた。
ヒューストンでは、テスラは北西部の郊外の狭い範囲でロボタクシーを運行している。最近、平日の夜に同サービスを試した別の記者は、1回目の乗車は問題なくできた。2回目を試みた際には、車両が13分後に到着すると表示されたが、その後アプリが配車をキャンセルした。
記者はその後30分間、別の車両を探そうとしたが、利用可能な車両はなく、結局、ウーバーを利用して目的地へ向かった。
テスラのサービスが1年近く運行されているオースティンでさえ、待ち時間が30分を超えることがある。
オースティン市当局の資料によると、テスラは同市で約50台を運行するのに対し、ウェイモはオースティンで250台超を運行している。テスラのロボタクシーの一部には、なお助手席に人間の安全監視員が同乗する。テスラは、オースティンで完全無人車両の台数を増やしたとしているが、具体的な数は示していない。
記者はこの4月、オースティンで3週間にわたってテスラのロボタクシーの待ち時間を記録した。朝から夜にかけて1日8回記録したところ、待ち時間が15分を超えたケースは全体の約半数に上り、4分の1強では25分以上を要した。また27パーセントでは、利用可能な車両が全くなかった。
オースティン市警察の自動運転車の安全性確保を統括するウイリアム・ホワイト氏によると、テスラはオースティンで重大事故を起こしておらず、交通違反の摘発も受けていない。
昨年8月以降、テスラは米道路交通安全局(NHTSA)に対し、オースティンでの衝突事故を15件報告している。自動運転車の運行事業者は軽微な事案についても報告が義務付けられている。大半は負傷者を伴わないものだったが、1件では病院に搬送された人もいた。
他の自動運転運行事業者とは異なり、テスラは規制当局に対し、事故情報の全てを非公開にするよう求めている。
ホワイト氏は、テスラとの関係はおおむね良好であり、情報の交換も頻繁に行われていると述べた。一方で懸念点として、テスラのロボタクシーが制限速度を無視する傾向があると指摘した。昨年の試乗では、車両が一貫して制限速度より時速5マイル超過して走行していることを確認したという。
テスラは、交通の流れに合わせて走行する方が安全だと説明したが、ホワイト氏は「車両が制限速度を超過するようなプログラムは認められない」と伝えた。それに対してテスラからの回答は未だにないと同氏は言う。