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目指すはCtoCプラットフォーム 不動産投資に誰もがアクセスできる仕組みを目指すスタートアップ

OpenProp株式会社 代表取締役/弁護士の堀口圭氏

OpenProp株式会社 代表取締役/弁護士の堀口圭氏

 物価高やインフレを背景に、日本国内でも投資への関心が高まってきた。さらに、預金や株以外の投資先として、「不動産に投資したい」と考える人も増えているようだ。だが、いまだ不動産投資は、情報の非対称性や取引プロセスにおける非効率さが残り、一般消費者や個人投資家の参入を妨げている一面もある。

 こうした状況をAIなどのテクノロジーで改善しようとしているのが、弁護士資格を持つ堀口圭氏が2025年に立ち上げたOpenProp株式会社(東京都新宿区、2026年5月に「BIDHIT(ビッドヒット)」から改名)だ。

 堀口氏は、不動産開発会社(KH株式会社、東京都新宿区)も経営しているが、その中で感じた不動産業界の非効率性や不便を解決するサービスをOpenPropで開発し、「不動産投資に誰もがアクセスできる仕組み」を構築しようとしている。堀口氏に、開発中の事業の内容や展望を聞いた。

契約や法定業務をAIエージェントで効率化

 現在堀口氏らが開発している事業は、不動産仲介業者などに向けた「不動産取引DX」と、不動産開発会社および不動産取引に関心を持つ個人投資家や一般消費者に向けた「次世代不動産取引プラットフォーム」の大きく2つにわかれる。

 まず「不動産取引DX」では、不動産事業において発生する契約や法定業務などのワークフローをデジタル化し、業務の効率化・生産性向上を目指している。現在さまざまなSaaS型サービスを検討している。特に注力しているのが、不動産取引には欠かせない「重要事項説明書」の作成業務を支援する「AI重説支援SaaS(仮称)」の開発だ。

 重要事項説明書(重説)とは、不動産取引において必須の書面で契約前に必ず提示・説明される法定書類で、その作成業務は煩雑で専門的な知識を必要とするので、属人化しやすい。「AI重説支援SaaS(仮称)」は、この業務を自動化するもので、AIエージェントを活用して、登記簿や調査報告書など書式がバラバラの非構造データから必要な情報を自動抽出し、文書に高精度かつ高速に反映していくものになるという。

「私自身も不動産業に携わる中で、仲介事業者の、特に重説に関する負担が大きいことを感じていました。そこで『AI重説支援SaaS』を開発・提供することで、負担を減らし、効率化やコスト削減を図れればと。また担当者の精神的負担の軽減にもつながればとの思いから着手しました」

 なお「AI重説支援SaaS」については、すでに大手仲介業者などからいくつも問い合わせが届いており、「この夏に正式にローンチしていこうと検証を急いでいる」とのことだ。

目指すのは「個人間で取引できる」基盤

 もうひとつの「次世代不動産取引プラットフォーム」はどういったものか。堀口氏によると、これは仲介業者を介した従来の不動産取引を、AIなどを活用して透明化・迅速化していくもので、「最終的にはCtoC(個人間)での不動産の購入・売却が、オンラインで完結するプラットフォームの実現を目指す」という。

インタビュー中の堀口氏
インタビュー中の堀口氏

「不動産業界は情報格差がとても大きなマーケットだと感じています。これは買い手側だけでなく、売り手側にとっても同じで、たとえば不動産オーナーにも、自身の物件の価格が本当に適正なのかどうかわかっていない人が多い。その主な理由は、不動産取引を仲介者の経験に過度に依存している点にあるわけですが、こうした属人性を脱却し、システム化された透明なプロセスに変えて、情報格差を解消していければと考えています」

 また「物件の流動性の低さ(なかなか売れない)」や「不動産価値の最大化(賃貸物件にするのか、民泊転用するのかなどの判断)が難しい」といった従来の不動産取引の仕組みが抱える課題点も解消したいという。

 なお、これまで仲介業者などが担っていた契約や法定作業についても、将来的に「不動産取引DX」のサービスをプラットフォームに統合することで、プロセスの効率化や短縮につなげたい考えもあるとのことだ。

 とはいえ、いきなりCtoCの不動産取引プラットフォームの開発に取り掛かるのはハードルが高い。そこでOpenPropでは、まず競売物件の入札を一般消費者に開放する「不動産競売サービス」の開発・提供を進めるほか、別荘やリゾート物件を一週間単位などで購入・所有するといったタイムシェア不動産の取引に特化したプラットフォームを開発し、「今年秋のローンチを目指している」という。

 こうした複数のプラットフォーム事業を展開し、知見や業績を積み重ねた先に、「実需」として住む家を求めている消費者向けの、CtoCの不動産取引プラットフォームを提供する予定とのことだ。

どのように市場を獲得していくのか

 ただ、既存の事業者が多い不動産業界において、こうした“破壊的なビジネス”を展開していくのは容易ではないだろう。OpenPropではどのように市場を獲得しようと考えているのか。

 まず「AI重説支援SaaS」については、「初期的にエンタープライズ(大企業)の顧客と密にやり取りをし、正式なローンチ前に大手へのテストリリースを実施したうえで、一般企業にも提供を開始する」流れを計画しているという。

 並行して、生成AIシステムの開発に長けた開発会社との連携も進めており、『AI重説支援SaaS』など同社の不動産取引DXのプロダクトを、その会社が他社のシステムを開発する際にワークフローに組み込んでもらうことも想定している。

 タイムシェア不動産のプラットフォームについては、初期ローンチの段階で物件を掲載したいという不動産開発会社もすでに存在しており、「今まさに打ち合わせを進めている」という。

※ ※ ※

 今回の取材で特に印象に残ったのが、事業への意気込みを聞いた際に堀口氏が答えてくれた「不動産取引の体験自体を変えたい」という言葉だ。

 現状、不動産の売買は流動性が低く、その手続きは煩雑で、透明性が低い。そのため家は「一生もの」と考えてしまう。不動産も資産のひとつといえども、「簡単に売り買いできたり、現金化できたりしない。貯金や株とは違う」と考えるのが普通だ。しかし、透明性が高く、手続き上も簡便に売買ができるプラットフォームがあれば、不動産もまた「資産」のひとつと考える事ができるようになる。

 堀口氏のいう「不動産取引の体験自体を変えたい」とは、こうした形で不動産取引の体験そのものを変え、「万人が抵抗感なくアクセスできる社会を作り出すこと」を指す。

 今日本では先行きの収入不安や、貯蓄に対する金利の低さなどからも、過去に例を見ないほど多くの人が投資に関心を寄せている。こうした時代だからこそ、OpenPropの取り組みは大きな価値をもたらす可能性があると言えるだろう。

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有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。