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水洗トイレを持続可能にするシステムや、暗所で働く触媒も登場〜「大学見本市 2026」ピッチ大会より

「Tomorrow’s Startupsピッチ&ミーティング」に登壇した、株式会社e6s技術顧問 中野和典氏(左)と、株式会社eZovインターナショナル代表取締役社長 鈴木雪子氏(右)

「Tomorrow’s Startupsピッチ&ミーティング」に登壇した、株式会社e6s技術顧問 中野和典氏(左)と、株式会社eZovインターナショナル代表取締役社長 鈴木雪子氏(右)

 経済産業省の「令和7年度大学発ベンチャー実態等調査」では、2025年10月時点で大学発ベンチャーの数は6000社以上にのぼり、「企業数および増加数ともに過去最高を更新」したと発表された。

 年々増加傾向にある大学発ベンチャーやスタートアップだが、具体的にどういった技術をもとに、どのような製品の開発・提供に取り組んでいるのだろう。

 2026年8月27日〜28日、東京ビッグサイト(東京都江東区)にて、国立研究開発法人科学技術振興機構主催の「大学見本市2026〜イノベーションジャパン」が開催され、その中で「Tomorrow’s Startupsピッチ&ミーティング」と題したピッチ大会が行われた。

 これは、大学などの研究機関の技術を核として設立した、起業5年以内のスタートアップと、1年以内に起業を予定している研究者・経営者が集まったもので、10チームの代表者がピッチを披露した。

 以下、特に興味深かった株式会社e6s (えしっくす)技術顧問/日本大学工学部教授 中野和典氏と、株式会社eZovインターナショナル 共同創業者/代表取締役社長 鈴木雪子氏のピッチ内容を紹介する。

「大学見本市2026〜イノベーションジャパン」の会場の様子
「大学見本市2026〜イノベーションジャパン」の会場の様子

災害発生時の“トイレ問題”

 e6s社の中野氏らが開発しているのは、水洗トイレを持続可能にする洗浄水再生システム「e6s」だ。

登壇中の中野氏
登壇中の中野氏

 近年、地震や大雨など災害による被害が激甚化する中、インフラが被害を受け、断水が増えている。水道が使えなくなると、日常生活にさまざまな問題が生じるが、特に注意したいのが「トイレの水を流せなくなること」だ。

 中野氏によると「(災害発生後)避難所に3日以内に仮設トイレが来る割合は、約3割」だという。

「3日以内に3割しか仮設トイレが来ません。しかも、その間は流れないトイレを使うしかありません。つまり、前の人がしたものが残っているわけです。そんな環境では皆さんトイレに行きたくなくなりますよね」(中野氏)

 その結果、多くの人は飲食を控えてしまう。これにより体調が悪化し、せっかく助かった命が失われてしまうケースが後を絶たない。「熊本地震(2016年)では、実は直接死よりも、災害関連死の方が多くなってしまったということが起こっています」

水道インフラに依存しない水循環型トイレ

 そこで中野氏らが開発したのが、水道インフラに依存しないトイレ、つまりトイレの洗浄水を再生して循環利用するシステム「e6s」だ。

「e6s」は、汚物を下水道に流す普通の水洗トイレと、洗浄水再生システムを併用できる仕組みになっており、普段は下水道に流し、断水した際には、切り替えバルブを使って洗浄水再生システムを利用できるようになっている。「要は、平時と非常時の区別が少ないフェーズフリーのトイレになっているということです」

「e6s」の仕組みは、トイレの汚物をまず水分と固形分に分ける。そのうえで、水分だけを水再生ユニットに流して、循環利用する。このシステムは微生物などの生物学的な処理は用いていない。通常、微生物などを排水処理に利用する場合は、酸素や空気を電動ポンプで送り込む曝気(ばっき)を行う必要があるが、「このシステムは曝気がいらないため、最低限のエネルギーで浄化できる」という。必要なのは「水を循環するエネルギーのみ」だ。

 一方、固形分については、取り出して廃棄する必要がある。しかし、汚物の90%以上は水分であり、水分を除いたものは「10分の1以下」にまで減るため、処理の負担を大きく削減できるという。

 中野氏は「e6s」を利用する最大の利点は「家庭のトイレが持続可能になる」ことだと説明する。「それはつまり(災害発生時に)自宅避難が可能になるということです。これは非常に大きいと思います」

 さらに、学校や駅、避難所(公民館)などに「e6s」を備えておけば、通常時と非常時に併用できる。また非常時でなくても、音楽フェスやお祭りなど、水道がつながっていない場所で開催されるイベントの仮設トイレとしての利用も可能だ。

 中野氏によると、世界の約3人に1人(約23億人)が上下水道インフラの整備されていない、つまり水洗トイレが使えない中で生活している。将来的にはそうした発展途上国に導入することで、「時間がかかるインフラ整備を待たずして、トイレ先進国である日本の素晴らしいトイレを使ってもらえれば」と述べ、ピッチを締め括った。

光がない環境でも菌やウイルスを除去する触媒

 続いて登壇したのは、静岡大学発ベンチャーのeZovインターナショナルの鈴木氏だ。同社は触媒技術を使って空気や水をきれいにする取り組みをしている。今回は鈴木氏らが開発した高効率光触媒フィルター「eZovメッシュ」を紹介した。

eZovメッシュを手に鈴木氏。このサイズで野球グラウンドほどの表面積がある
eZovメッシュを手に鈴木氏。このサイズで野球グラウンドほどの表面積がある

「菌や臭いの問題が起きやすい場所を考えると、実は暗い場所が多いことがわかります」と鈴木氏は切り出した。具体的には、空調ダクトの中、データセンターの冷却塔の内部、加湿器のタンク、病院の設備の裏側などが挙げられるが、こうした場所のメンテナンスには多大な資金と時間がかかり、大型のものだと年間1000万円ほどのメンテナンスコストがかかっているケースもあるという。

「私たちはそれを半分にしたいと考えております。ソリューションは『eZovメッシュ』です」(鈴木氏)

「eZovメッシュ」とは、大表面積(※)を強みとするメッシュ素材だ。見た目は一般的な薄いメッシュだが、電子顕微鏡で拡大してみると、表面に細かな粒子が重なったナノ構造になっている。これにより「触媒が働く表面積が桁違いに増え、菌や臭いの原因物質が触媒に接触する確率が格段に上がっている」とのことだ。

※物体の表側の面積が、同じ体積や重さのものと比べて大きい状態

 さらに「eZovメッシュ」は「2つの触媒層」を持つという。ひとつが「リン酸チタン層」というもので、高密度で大表面積化を可能にするとともに「光のない環境でも触媒が働く」という特徴を持つ。

 もうひとつが「酸化チタン層」で、光が当たると反応する光触媒となっている。一般的な光触媒は紫外線を使うが、こちらは可視光でも触媒反応が起こるとのこと。

「試験では、明所だけでなく、暗所でも短時間(4時間)で菌やウイルスを99.999%以上除去できるという結果が確認できています。大表面積と2つの層、これらの特徴が効率的なハイブリッド触媒を可能にしています」

 さらに「eZovメッシュ」は「塩酸の原液に1時間つけても錆びたり溶けたりせず、超音波洗浄機で1時間洗浄しても触媒は落ちない」うえ、「耐熱性は800度まである」ため、水の中や高温となる排気ダクト内などさまざまな環境でも利用可能だ。「データセンターの冷却塔」や「工場の水を使う設備」、「空調のドレインパン(結露水などの受け皿)」などのメンテナンスコストや頻度の低減に活用でき、畜産現場や高齢者施設、学校、病院、ホテルなどにおける感染症リスクの低減にも使える。鈴木氏は「世界中のあらゆる場所で、衛生環境の未来を支えたい」と会場に訴えた。

* * *

 今回ピッチを行った10チームの製品は、どれも大学発ベンチャーらしい高い技術力に支えられており、社会のさまざまな課題解決に役立ちそうなものが多かった。これまで日の目を見る機会が少なかった研究機関の優れた技術の社会実装を促進するという意味で、大学発ベンチャーの増加は、大いに歓迎すべきだと感じられた。

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有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。