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古着の温室効果ガスをAIが自動推計 東大とメルカリが新手法を確立

AIによるイメージ画像(記事本文とは関係ありません)

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 東京大学大学院工学系研究科の川原圭博教授、草将澄秋大学院生と株式会社メルカリの研究グループは、フリマアプリに出品された古着一点ごとの温室効果ガス排出量を、AIを用いて自動で推計する算出フレームワークを構築したと発表した。

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 温暖化対策が喫緊の課題となるなか、製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを算定・開示する動きは、あらゆる産業分野に広まっている。正確なデータを開示するためには、製品ごとの詳細なデータを収集する必要があり、これには膨大な時間とコストが必要だ。さらに、工場から出荷される新品とは異なり、状態や使用履歴が異なる中古品については、個別にデータを集めることはこれまで困難であった。

 研究グループは、この課題を解決するため、AIを活用した温室効果ガスの算出の手法を構築した。

研究の概要
研究の概要(リリースより)

 メルカリに出品された衣類の画像(タグなど)やユーザーが投稿した説明文は、書式が統一されておらず、表現もまちまちである。それをAIが解析し、温室効果ガス排出量に大きく影響する「素材組成」「衣類サイズ」「洗濯方法(水洗い可・不可)」「推定使用回数」の4つのパラメータが自動で抽出できるようにした。抽出されたデータは、既存の温室効果ガス排出係数データベースと連携できるように用語を標準化。これにより「データ収集の壁」を乗り越え、生産、流通、使用(洗濯・乾燥)、廃棄の各段階における温室効果ガス排出量を自動的に算出することが可能となった。

素材の多様性が排出量を左右

 衣類に関わる温室効果ガス削減のアクションとして、これまでは洗濯の仕方(温水や乾燥機の利用等)や頻度など「使用」段階での違いに注目することが多かった。しかし、今回の分析では、衣類のライフサイクルにおいて「素材組成」が排出量を左右する主要な要因であることが、今回の共同研究で新たにわかった。

 衣類は、単一素材だけでなく、多種多様な素材の組み合わせでできており、それぞれの生産段階での違いが個々の衣類の温室効果ガスの排出量を大きく左右する。より環境負荷を小さくするには、衣類のデザイン段階での素材選定が重要であることを示している。

 研究グループは、今回の自動評価手法が衣類以外の製品カテゴリにも応用可能だとしている。企業のサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の算定(スコープ3)において、衣類に限らずリユース市場でのデータ収集は大きな課題であったが、この手法により、効率的なデータ収集と算定精度の向上が期待される。

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