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2017年、仮想通貨元年のビットコインをふり返る 

ビットコインに集まる人々,ミニチュア(c)beebright- Fotolia.com

ビットコインに集まる人々(イメージ画像)(c)beebright- Fotolia.com

 このところ連日メディアに「ビットコイン」「仮想通貨」のキーワードが登場するようになった。ほんの1年前までは1週間のうちに、ニュースがぽつりぽつりと幾つかあれば良い方だったのに、である。 

 まさに、2017年こそが「仮想通貨元年」だったのではないだろうか。ここではビットコインなどの仮想通貨やブロックチェーン業界のこの1年間の主な出来事をふり返ってみたい。 

1月 ~ ジェットコースターの幕開け 

 2016年末から大手取引所のビットフライヤーがテレビCMやYouTube広告を流しはじめており、ビットコインへの世間の注目度アップに貢献していた。1月4日、正月明けに銀行振込が着金するタイミングでビットコインの値段が15万円まで高騰したものの、翌日1月5日から下落を続け8万円台まで戻るというジェットコースターぶりを見せつけた。これは中国当局による取引所立ち入り検査と規制発表があったためであり、今年は仮想通貨に取り組んでみようと考えた初心者への厳しい洗礼となった。 

2月 〜 盛り上がりの場は中国から日本へ

 中国の大手取引所がマネーロンダリングの指摘を受け、ビットコインの引き出しを停止したため価格も一時下落した。しかし、その代わりに中国では対面でビットコインを売買するLocalBitcoins.comの利用が増えて、取引所以外に交換の場所が移るだけでビットコインを完全に禁止するのは困難であることを見せつけた。そして、中国に代わり日本のビットコイン取引高(FXを含む)のシェアが世界一となり、選手交代の風が吹き始めた。

3月 ~ ビットコインが金を超えた? 

 ビットコインの通貨単位BTCあたりの価格が、金の1トロイオンスあたりの価格を上回り、デジタルゴールドとも呼ばれるビットコインがゴールドを上回ったというニュースに。ただし、1週間もしないうちに、期待されていたETF(金融商品)化がSEC(アメリカ証券取引委員会)に却下されたために3割近くも急落するなど大きく売り込まれる局面もあった。 

4月 ~ ビックカメラなどでビットコイン取り扱い開始 

 4月1日は改正資金決済法が施行され、日本においては、仮想通貨はよりお金に近い立場となった。ビックカメラなど店舗でビットコイン決済ができるようになったという明るいニュースも続いた。 

5月 ~ 分裂問題で緊張高まるが世間に認知拡大 

 ビットコインの「分裂問題」がクローズアップされ危機感がつのった。New York Agreementにて妥協案を採用したが、ビットコインコアの賛同が得られておらず課題は残った。この頃から「仮想通貨」の存在と動向を世間も意識することになり、急な暴落の都度、ブログなどのネットでも盛り上がりが見られるようになった。相場変動の激しさは相変わらずで、5月25日に34万円台だったビットコイン価格は27日には20万円台まで急落する一幕も。 

6月 ~ VALUローンチで賛否両論 

 国内で初めてビットコインが決済以外で使えるサービス「VALU」が5月末日にローンチされた。これは個人のファンクラブ会員権もしくはトレーディングカードのようなものをビットコインで売買できるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)である。これを使ってさっそく個人でも多額のビットコインを調達するユーザーが現れて、6月初旬に賛否両論を集めた。VALUを始めたいためにビットコインに触れた人もおり、トレード目的以外の層を取り込んだ初めての事例かと思われる。

7月 ~ 金融庁「仮想通貨は非課税」 

 7月1日より、「消費税法施行令の一部を改正する政令」により仮想通貨は非課税となった。それまでは金地金のように消費税込みだったものが、より貨幣に近い立場に。 

 「分裂問題」はビットコインコア側が提起したUASF(User Activated Soft Fork )に対抗する形で、マイナー側のUAHF(User Activated Hard Fork : ビットコインコアからの独自分裂を主張する)勢力がビットコインキャッシュとしてスピンアウトすることになり、ギリギリで回避された。 

8月 ~ 新通貨ビットコインキャッシュ誕生 

 ビットコインキャッシュが誕生。長年くすぶっていた分裂騒動が新しい展開を見せ、本家ビットコインからのれん分けするような形で新通貨が生まれた。うまく分岐したため、不安感で下げていたビットコイン価格は上昇。ビットコインキャッシュは、分岐直後には、なかなかブロックが生成されずに送金に使えない不安定な状態であったが持ちこたえて、現在はスムーズに送金することができるようになっている。 

9月 ~ 中国のICO禁止など逆風相次ぐが日本では続伸 

 中国のICO(仮想通貨による資金調達)禁止および主要取引所の閉鎖という二重のチャイナショックで、仮想通貨全体の時価総額が落ち込む事態があったが、既に日本人が最もビットコインを買っているため、その影響は限定的だった。また、JPモルガンCEOダイモン氏の「ビットコインは詐欺」発言が注目された。金融界の著名人の発言は肯定派否定派に分かれた。 

10月 ~ 金融庁の仮想通貨交換業者登録が完了

 金融庁の仮想通貨交換業者に11社が登録されると9月29日に発表があった。 初営業日の10月2日にビットフライヤー社がモナコインを取り扱い開始するサプライズがありMONAが急騰。日本ではある程度安心して仮想通貨取引所が使えるように、世界に先駆けて法整備が進んでいる。 

11月 ~ フォークコインの乱発 

 以前にビットコインキャッシュがハードフォーク(ブロックチェーンの新仕様採用)で成功したため、同じ方式でのフォークコイン(新たに分裂した仮想通貨)が乱発される。ビットコインゴールドは対応した取引所も多かったが、ビットコインプラチナにいたっては韓国人高校生のいたずらであったという顛末も12月に発覚。

 なお、New York Agreementで合意されていたSegWit2xはコード品質に問題がありハードフォークを延期することになり、これは安心材料につながった。一部のマイナーがSegWit2xのノードを強行的に動作させようとしたが、バグがあり分岐直前にフリーズしたためゲリラ的なフォークも発生しなかった。

12月 ~ シカゴ・オプション取引所(CBOE)にビットコイン先物が上場 

 12月10日(日本時間11日)に米シカゴ・オプション取引所(CBOE)にビットコイン先物が上場、引き続き18日に米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも上場された。機関投資家の参入により、ビットコインは新時代へと一歩を踏み出した。 

 また、ボーナス時期にあわせるようにコインチェックが宣伝にタレント出川哲朗を起用、GMOコインも電車の中吊りに広告を打つなど、国内取引所各社が宣伝に力を入れた。 また、初心者への入門書も数多く出版されるようになってきた。 

2017年を振り返る 

 2017年は名実共に「仮想通貨元年」であった。この世界の進展は1週間前のことがもう古いという、猛烈なスピードで前進している。 

 世間では価格の高騰が注目されているが、その裏には数々の危機があったことを覚えておくことが肝心であろう。寝て起きたら価格が2-3割下落しているということも充分にあり得るという、なかなか今まで体験できなかった未知の世界が広がっている。 

 また、注目度の高まりと共に詐欺的な案件も増えているために、初心者の情報収集には注意が必要だ。セミナーで知らないコインやICO案件に勧誘されるなど、不審な点があったら金融庁のダイヤルに相談することができる。

金融庁「金融サービス利用者相談室」 

電話番号:0570-016811 

受付時間:平日10時00分~17時00分 

 来年2018年は、今までの貨幣とは異なり、信用ある特定の発行主体を必要としない仕組みを活用して、何ができるのかを考え、既存の課題を解決していく「仮想通貨活用元年」になるように願っている。

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外資系IT企業勤務を経てフリーランスに。銀行システムに携わった経験からフィンテック分野に興味を持ち、暗号通貨の革新性に着目。日本にも広く普及して欲しいという願いから情報発信やセミナー講師などの普及活動をおこない、2017年2月よりビットコイン初心者向けオンラインサロンも運営。ツイッター: @shumai ブログ: http://shumaiblog.com/