世界にプレミアム日本酒「獺祭」を展開する旭酒造株式会社代表取締役社長の桜井一宏氏に、海外展開するに至った背景、高品質の日本酒を作る秘訣、今後のビジョンについて聞いた。
本インタビューは2016年11月5日にサンフランシスコで開かれたTHE NEW CONTEXT CONFERENCE SAN FRANCISCO(以下、NCC SF)に桜井氏が登壇した際に、会場となったコワーキンスペース「DG717」で行った。
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DG Lab Haus編集部(以下、DLH):獺祭を世界に展開する事となった戦略は?
桜井一宏氏(以下、桜井氏):獺祭は山口県のお酒ですが、地元の山口で全く売れなかった。ところが、東京に進出したらうまくいった。その流れを海外にもっていった。そのため、山口、東京、アメリカ、フランス、イギリス、香港も世界中全て同じ市場と考えている。そこにいるみなさんを幸せにするために美味しいお酒を作り、届けていく事が我々のポリシーである。
DLH:世界中に高いクオリティーのお酒を提供する秘訣は?
桜井氏:山田錦を使った純米大吟醸酒しか作ってない。一般的な酒蔵は、普通酒、純米酒、本醸造酒、大吟醸酒(*1)と様々な種類の日本酒を製造する。中でも大吟醸酒は年間2、3本の限られたタンクで仕込み特別なお酒として販売する。一方、旭酒造は純米大吟醸酒しか作っていない。イタリアン、フレンチ、寿司を全て扱っているレストランの寿司よりも、寿司だけやっている寿司屋さんの方が美味しい可能性が高いように、一つに絞りこんでいる分、その味が良くなる可能性が大きいと思う。
(*1)日本酒の分類
DLH:10年後のビジョンは?
桜井氏:ビールは欧米の飲み物だが、今や世界中で飲める。おそらく同じように日本酒も、これからもっと海外に出て行くようになる。アルコールに対して世界の垣根がなくなっていくと強く感じている。その中で、美味しいアルコールの一ブランドとして獺祭が世界中に行き渡ってほしい。
おそらく人間は私たちが生きている間に民間人が行ける宇宙ステーションはできると思う。その時に一緒に持って行ってもらえるアルコールになる事が夢だ。
日本企業の世界展開におけるベンチマークの一つとなるか
日本酒を愉しむスタイルとして、ワイングラスに注ぐその形に現れているようにこれまでの概念を飛び越えた新しいチャレンジを厭わない獺祭。世界で急速にファンが広がりつつあるこの日本のお酒は、まさにスタートアップ企業が世界へ打って出るその姿と重なる。宇宙へと想いを抱くその姿勢から、獺祭の世界展開にかける桜井氏の意気込みがうかがえた。
旭酒造株式会社代表取締役社長及び四代目蔵元。
米国、香港、シンガポール、フランスなど様々な国での酒のイベントや、セミナーを通じ、獺祭の海外での売上を促進した。その結果として、この12年間で獺祭の海外での売上は、28倍となった。
また、Dassai Franceの社長も兼任しており、輸出業務や直販店を展開する事で、獺祭をフランス市場に広めようとしている。
旭酒造株式会社ホームページ:https://www.asahishuzo.ne.jp/