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【インタビュー:東京大学大学院情報学環 教授/池上高志氏・後編】人工生命の定義と可能性

DG Labと「Consciousness Club※」との共催イベント(2016年11月開催)において、人工生命研究で著名な東京大学の池上高志教授に最新研究についてご講演頂いた。今回のインタビューでは前編と後編に分けて、生命とは何か、人工生命の研究について語ってもらった。

※ARAYA Brain Imaging CEOの金井良太氏が主催し、人工意識、人工生命などをテーマにした勉強会を定期的に開催している。

池上教授インタビュー動画

「コンピュータシミュレーション」「化学反応」「機械」により生命的な創発現象を起こす

池上教授の研究テーマは大きく3つに分類できる。「コンピュータシミュレーション」「化学反応」「機械」。これらによって生命的な創発現象を起こすことが目的だ。

「コンピュータシミュレーション」による実験では、単純な法則で相互作用する粒子のモデルを数を増やした時、どのような現象が起きるかをシミュレーションで明らかにしていく。数が少ないうちはランダムな粒子が動いているように見えるが、数を増やしていくと集団形成が起きて、興味深いパターンが生まれてくる。ミクロ的には単純な法則なのものが、マクロ的には複雑な生命現象に見える動きをするということを見出した。

「化学反応」による実験では、アルカリ性の水溶液に無水オレイン酸という油滴を垂らすとまるで油滴が生きているかのような動きをするという発見があった。ミクロ的に見るとランダムに動く水分子が対流を生み、油滴を動かしているのだが、マクロ的には油滴が自律的に動いているかのように見えるのだ。こういった「化学反応」による生命現象は、人間の体が「化学反応」で動いていることから、人間の生命現象を理解する上で大きなヒントとなるのではないかという。

「機械」による実験では、複数のスクリーンと神経細胞のモデルを組み合わせて時間とともにスクリーンに映る映像がまるで意識を持つかのようにどんどん変わっていくなど、外的環境の変化に対応するシステムを構築した。こうしたことがまさに人工的に作り上げた意識ではないかと考えている。大阪大学の石黒教授との共同研究でも「ロボットに宿る意識とは」というテーマで実証実験を行っている。

池上教授の研究テーマは一貫して、DNAなど生物学的な生命現象ではないところに、生命的な現象である「自律性」「相互作用性」「存在感」が生じるかというところにフォーカスしている。

将来について、池上教授はあと数年以内で人工生命が一般的に使われるようになるのではないかと語る。人工知能が最適解を見つける手助けになっている一方、最適解が見つからないようなものに対して人工生命は手助けになるのではないかと指摘している。

ディープラーニングが人工知能の性能を飛躍的に進歩させたが、その背景にあるのは計算機の処理速度が速くなったということだ。同様の理由から、人工生命においても近い将来飛躍的な進歩があるのではないかと池上教授は考えている。

さらにはインターネット自体が生命的な構成を持っており、初期の地球において原子スープの中から生命が生まれたように、インターネットという身近な存在から生命性を持った何かが生まれるかもしれないのではないかと締めくくった。

Profile

池上 高志

東京大学大学院情報学環 教授

1961年、長野県生まれ。専門は、複雑系・人工生命研究。人工生命(ALIFE)に新たな境地を切り拓き、研究を世界的に牽引。メディアアーティストとしても知られ、Ars Electronicaやメディア芸術祭で受賞歴がある。著共書に『人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか』『動きが生命をつくる』『生命のサンドイッチ理論』など。

■池上高志研究室:http://sacral.c.u-tokyo.ac.jp/

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