2017年2月27日〜3月3日の5日間、サンフランシスコのモスコーニセンターでゲーム開発者向けの世界的カンファレンス、Game Developers Conference 2017(GDC)が開催された。GDC展示フロアのブースには、PC、コンソール、携帯型端末、スマートフォン、タブレット、オンラインゲームなど、ありとあらゆるゲームプラットフォームに関わる企業や開発者のほか、VR/AR関連のプロダクトやデモが多く出展され、約27,000人ともいわれるイベント参加者やメディアに向けて多くの新作発表やリリースが行われた。
周辺技術が業界をリードするVRの未来
VR/AR分野では各カテゴリーのプラットフォーマーである、グーグル、HTC、マイクロソフト、Oculus、ソニー、サムスン電子など大手企業のほか、VR/ARのコア技術を支える、周辺技術の開発事業者も多く出展していた。今回はその中でも、複数の企業がしのぎを削っている3D音響と、アイトラッキングの企業をそれぞれ1社ずつ紹介したい。話を聞いたのは、3D音響技術を提供するVisiSonicsの開発者ロッド・ハクストン(Rod Haxton)氏とアイトラッキング技術を提供するTobiiのパトリック・バーガー(Patrik Berger)氏だ。それぞれの企業が持つ独自技術の特長、VRビジネスとの今後の関わり方などについて語ってもらった。
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VisiSonicsはRealSpace™ 3D Audioと呼ばれる、VR向けの音響を実現するソリューションを提供する。同様のソリューションを提供する企業は多数あるが、同社の特長は音響物理的エンジンという仕組みで、この技術はVRの中にある物体が持つ物質的な特徴による音の違い、例えばじゅうたんやレンガやガラスなどにものをぶつけた際の音の違いを表現できる。さらに、それが野外なのか、室内なのか。直接聞こえてくるのか、何かの後ろから発生している音なのか、など状況の違いで、異なってくる音の反響などを表現することができる。VisiSonicsの技術はOculusにライセンス提供されているほか、今回のGDCで出展した複数のゲームがこのシステムを導入している。
展示スペースではVisiSonicsの最新技術を体験することができ、VRで立体感や奥行きを感じるためには、3D音響が非常に重要であることがよくわかった。ハクストン氏は、VRの没入感を最大化するために、視覚以外にもあらゆる感覚からユーザー体験を高めるべきだと考えている。今後、同社のような取り組みがVRにより一層の没入感をもたらすようになるだろう。
Tobiiはアイトラッキング技術の先進企業である。同社はこれまで医療用のアイトラッキング技術の開発を行なってきており、それに加え現在はVRプラットフォーム向けに独自技術の提供も行っている。既存のHMDはコントローラーを手に持って操作するのが一般的になっているが、同社のアイトラッキング技術を組み込むことで、例えば、VRコンテンツ上見たいものがHMDの右側に位置するとき、右に視線を向けることで自然とスクリーン状のコンテンツを適切な状態へ動かしたり、手に取って見たいものを視線やまばたきなどで指定できたりするようになる。さらに、ユーザーの目の動きをVRコンテンツ上にアウトプットすることで、例えばソーシャル系のアプリケーションでは、VR上のアバターに目の動きや視線を与えることができるようになる。これによって、より自然なソーシャル体験が実現されるとバーガー氏は考える。
Tobiiは、アイトラッキング技術を導入したコンテンツ開発事業者への投資事業を、過去4年に渡って行っている。また、HTC Viveとのアイトラッキングデベロッパーキットを提供するなど、技術普及のため積極的な活動を進めている。そのほか、VRの開発における標準化が業界で起きており、Tobiiもこの活動に参画している。バーガー氏によれば、今後、HMDの一部として同社の技術が普及することを目指して、さまざまな取り組みを推し進めるとのことだ。
http://visisonics.com/
http://realspace3daudio.com/
http://www.tobii.com/