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模型の世界は「モノづくり」「イノベーション」への入口〜静岡ホビーショー

第58回静岡ホビーショーにて

第58回静岡ホビーショーにて

「プラモデル」「鉄道模型」「ラジコン」。昭和生まれの世代なら一度は夢中になったことがあるだろう。そして「大人になってお金稼いだら、あれもこれも買いたい!」と夢見たことも。

ホビーショー会場の様子
ホビーショー会場の様子

 そんな憧れの品々が一同に会する展示会「第58回静岡ホビーショー」が静岡県静岡市のツインメッセ静岡で5月12日まで開催された。静岡県内にはタミヤなど多くの模型メーカーがあり「模型の世界首都・静岡」がこの展示会のキャッチフレーズにもなっている。

 イノベーションやメイカームーブメントの話題をキャッチアップする『DG Lab Haus』としては、模型の世界でのそうした動きを探ってみた。

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 モノづくり現場のイノベーションでは模型メーカーは先駆的で、3Dスキャンや3D-CADの利用ということでは「20年ほど前にはすでに導入されていました」(タミヤ)。3Dプリンターの導入も早く、現在では稼働テストをするための試作品などかなりの部分を3Dプリンターで作っているということだ。 

 3Dプリンターは安価に利用できるようになったことで、個人での利用も広がりつつある。鉄道模型では、市販されていない車両を手に入れるため、昔はプラスチックの板を削ったり、組み合わせたりしながら自作したものだが、最近では3Dプリンターでまるごと作り出してしまうこともできる。またプラモデルなどでも市販品をベースに、3Dプリンターで作り出したパーツを付け加えて、より精緻な自分だけの作品に仕上げていく楽しみもある。

 子どもの時、「モノづくり魂」を最初に呼び覚ましてくれたのはタミヤの「楽しい工作シリーズ」だという人も多いのではないだろうか。ロープウェイやブルドーザー、歩く動物などを乾電池とモーター、それにギアや滑車などを組み合わせて「動くものを自分で作る」喜びを教えてくれた。この流れを汲む最新作が今年7月発売予定の「プログラミング工作シリーズ」だ。

マミヤのマイコンロボット工作セット。PCがプログラミングの画面
マミヤのマイコンロボット工作セット。PCがプログラミングの画面

 シリーズ1作目の「マイコンロボット工作セット」は、単三電池で動く、クローラー走行ロボットのパーツと、教育用のマイコンボード「BBCマイクロビット」さらに超音波センサーなどがセットになっている。これらのキットで組み上げたロボットは、センサーで障害物を感知しながら自走するだけでなく、自分で書いたプログラムでコントロールすることもできる。

 プログラミングはマイクロソフトが提供するプログラミングソフト「Make Code」で行う。日本語で書かれたプログラムは「初期設定の部分」「くり返し実行される部分」などプログラムの概要が視覚的にわかりやすくなっている。中学生をターゲットに発売予定とのことだが、2020年度からプログラミング教育を受けることになる小学生でも充分理解できるだろう。

 先駆けになるもの、新しい動きに対応していくものがある一方で、一見、昔と変わらないものもある。そのひとつは、子どもの憧れであった高価なラジコン。今回の展示会でも名だたるメーカーが車、船、飛行機などの製品を展示していた。ところでラジコンでは世界を席巻した日本のメーカーだが、最近の空飛ぶホビーといえばドローンであり、こちらは一部日本の企業の製品があるものの普及品の大半は中国の企業のものだ。

HIROBOのラジコンヘリ
HIROBOのラジコンヘリ

 空飛ぶライバル「ドローン」については、どう考えているのかRCヘリコプターではトップ企業のHIROBO(ヒロボー株式会社)で聞いてみた。展示会場で質問に答えてくれた同社の説明員によると、ドローンへの参入について検討はしているらしい。ただ、同社の取り扱う農薬散布などの産業用の機種で比較すると、現時点ではその積載能力や信頼性などの面でドローンはまだヘリコプターには及ばないとのこと。安価に楽しむホビー用とは異なった視点から比較すると歴史のあるRCヘリコプターにまだ一日の長があるのだ。

ヒロボー株式会社が開発した一人乗り電動小型ヘリ「bit」
ヒロボー株式会社が開発した一人乗り電動小型ヘリ「bit」

 ちなみに同社は今回の展示会場で一人乗り小型電動ヘリコプター「bit」を展示していた。実際の飛行はこれからだが、技術的にはほとんど完成しているという。コンパクトなサイズの同軸反転式ローターなどこれまでRCヘリコプターで培ってきた技術を活かす方向としては、ドローンよりこちらの方がよいのかもしれない。

 人工知能やVRなどの技術を活用したモノについて今回は目立った展示はなかった。しかし巷には鉄道模型の走行に人工知能を活用したり、ラジコンや鉄道模型にカメラを搭載、操縦の際にVRヘットマウントディスプレイを着用し、臨場感を味わうなどといった活用例もあるらしい。また臨場感と言えば、LEDの普及で鉄道模型のジオラマの夜景は美しくなり、さらにマイクロエースが販売する模型内に搭載できるほど小型化されたBluetoothスピーカーなどを使って音の臨場感も高まっている。

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マブチモーターの模型用モーター
マブチモーターの模型用モーター

 最後に訪れたマブチモーターの展示ブースでは、懐かしい模型用のモーターが展示されていた。同社員の説明によると今もひとつ200円前後で買える模型用のモーターは、基本的にはここ数十年同じ仕様であるらしい。しかし、この模型用のモーターから始まった同社のモーター製品群は、いまや電動歯ブラシなどの小型家電や自動車のミラーやウィンドウ、電動シートなどの駆動部品を動かすものとして欠かせないものとなっている。年々電動化が進むクルマ関連のモーターは、耐久性の向上、省電力化、軽量化などの要求を満たすためのイノベーションが続いている。

 模型の世界はモノづくりの入り口だ。大人の趣味としてだけではなく、将来を担う子どもたちがイノベーションに目覚めるきっかけとなる魅力的な新商品が今後も次々と現れることも期待したい。

北元均 Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。