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プライバシー侵害の心配なし~人の動きをWi-Fi電波で検知するWireless AI技術登場

Origin Wireless Japan執行役員藤井聡氏

Origin Wireless Japan執行役員藤井聡氏

 Origin Wireless Japan(オリジン・ワイヤレス・ジャパン 以下、「オリジンワイヤレス」)株式会社は、屋内に飛び交うWi-Fi電波状況を、AI(人工知能)で解析することにより、センサーを使わずに空間の状態を検知するWi-Fiセンシングの技術であるWireless AI(TRM:Time Reversal Machine方式)を提供する。同社はこの技術をスマートホームなどで活用することを目指している。

 わが国では超少子高齢化社会の到来により、独居高齢者の見守りが大きな課題となっている。室内にカメラを設置し、常時カメラで監視するという方法はプライバシーの問題もあり、高齢者のみならず誰もが抵抗を感じるだろう。ウェアラブルデバイス(装着用小型コンピュータ端末)を身につけてもらう方法もある。しかし、これもいつも身につけるとなると、高齢者は負担に感じるだろう。

 オリジンワイヤレスのWireless AI技術であれば、見守りに必要なのはWi-Fiの電波を飛ばすだけ。その電波が人体に反射する状態をAI解析することによって、家の中の人の動きをリアルタイムで検知できる。

 AIエンジンには、屋内の人の動きを検知する「モーション」。呼吸の様子を検知する「ブリージング」。ドアや窓の開閉を検知する「ガード」。そして人が転倒したことを検知する「フォーリング」などがあり、目的にあわせてこれらを単一で、あるいは複数組み合わせて使用する。

「死角」なくライフログを取得

 同社執行役員藤井聡氏によるとWireless AI技術の優位性は「センサーやカメラの設置が不要でWi-Fiの電波を飛ばすだけですから導入コストは小さい上、導入準備の期間が短くてすむ」とのこと。また、導入後も基本的にWi-Fiを飛ばしておくだけの仕組みなので、電気代などのランニングコストも安価だ。また、後述するがカメラ方式や物理センサーで発生する死角というものがない。

 高齢者の見守りに同社のWireless AI技術を利用すれば、寝返りを打つ回数、トイレに行く回数などのライフログを取得することができる。これを介護施設に導入すれば、ライフログを生かして既存サービスの価値を高められると藤井氏は話す。さらに、Wireless AI技術は商業施設にも活用の場を広げている。

 2019年6月には、成田空港の「NARITA PREMIER LOUNGE」(成田空港 第1ターミナル第1サテライト4階)に「シャワールーム在室確認ソリューション」を導入した。

 シャワールームは、プライベート性の高い空間である。さらに空港ラウンジのシャワールームでは利用の都度、清掃し備品などを整える必要がある。利用者を待たせないため、担当の係が常時付近で待機しつつ在室確認をする必要があり、負担が大きかった。

シャワールーム在室確認ソリューションの概要(図をクリックで拡大)

 こうした手間を解消するためにWireless AI技術が導入された。カメラによるモニター監視ではなく、電波の解析だけで利用客の動きを検知できるのでプライバシーを侵害することはない。また、こうした見守り技術ではWi-Fi電波は空間内を反射しながら回り込む特性を持つため、壁や家具の陰が死角になることはない。ルーターを導入するだけでこのソリューションはスタートできる。

「これにより、受付カウンターや清掃担当スタッフ控え室でリアルタイムに利用状況が把握でき、長時間の滞在など通常利用とは違う不自然な状況も検知できるので、迅速に対応が可能になります」(藤井氏)

スパイでも見逃さない

 藤井氏は「マーケティング」「セキュリティ」の観点からもWireless AI技術は活用できると話す。この技術を使えば、GPSが受信できないような屋内においても、事前学習なしで誤差50cmのリアルタイムの屋内位置測定が可能になる。買い物客など施設内での人の動きのデータをマーケティングに生かせるという。またセキュリティということでいえば、ショッピングセンターなどの大型の商業施設では営業時間が終了し施設を閉じた後、施設内に居残る不審者がいないかを警備員が巡回し確認する必要がある。しかし、同社の技術で施設内の人の動きを検知すれば、巡回の手間が省ける。

「スパイ映画で、敵の施設に侵入したら赤外線でバリヤーが張られているというシーンがありますよね? 特殊なゴーグルをつけて、そのバリヤーを可視化して避けていくような。われわれのWireless AI技術ではそれは無理です(笑)。無尽蔵に発信される電波の反射で必ず察知できます」(藤井氏)

 さまざまな分野に応用可能な同社技術だが、藤井氏は社会課題解決に向けて活用されることが望みだと語る。まずは超少子高齢化に向けてWireless AI技術による「見守り」がどのように社会実装されていくのかを注視したい。

※オリジンワイヤレスはデジタルガレージのアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech」の参加企業です。

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