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梅雨空はもういらない!? バーチャルな青空を作り出す技術

パナソニックが開発した天窓照明

パナソニックが開発した天窓照明

 東京の日照時間が19日連続で3時間未満というのは、昭和63年以来のことらしい。例年なら、日差しが暑いと嘆いているのだが、連日の梅雨空を眺めていると晴れた夏の青空が恋しくなる。

オフィスでの天窓照明利用イメージ
オフィスでの天窓照明利用イメージ

 先端技術の力を持ってしても、空の雲をきれいに拭い去るのは容易なことではないが、部屋の窓から覗く青空はいつでも作り出すことができるようになった。パナソニック株式会社 ライフソリューションズ社は、天窓から見える青空などの景色を人工的に再現する空間演出システム「天窓照明」を開発した。部屋の天井部分に取り付けるこのシステムは、一見「天窓」のように見えるが、天井裏に埋め込むための本体と、そこに接続されたメディアプレーヤーなどの映像再生機で構成されている照明器具だ。

 「天窓」の中に再現された青空や流れる雲などの映像は、実際の窓から見た景色のような奥行きや雲の立体感が感じられ、また入ってくる明かりも外光のように感じられる。この“窓”は空以外にも「竹林」や「水面の揺れる様子」、「水中からの眺め(サメの姿も!)」なども映し出すことができる。また、複数台を連動させればより広い空も再現でき、そこには時間の経過にあわせて夕焼けや月光などの演出も可能だ。さらにパナソニックは、この天窓照明に加えスポットライト型のプロジェクターで天窓からの日差しや影、空調や音響設備と連動して風のそよぎを再現するなど空間全体を演出することを提案している。

天窓照明のシステム構成
天窓照明のシステム構成(プレスリリースより抜粋)

 同社がこの製品のプロトタイプを使用して、京都府立大学と行った心理的価値に関する共同研究(※)では、窓の無い場所であっても、この天窓照明を設置することにより、外とのつながりを感じられる開放的な空間を提供できるとの結果が得られたという。また、雲の流れなど自然の移ろいを再現することで、空間の単調さが払拭され、リラックス効果が得られることもわかった。

 これらの研究結果から、この天窓照明を取り付けることで、地下空間や窓がない閉鎖された空間も、窓がある部屋などと同様に有効に利用できるスペースとなり得る。また、想定外の利用方法かもしれないが、今年のように冴えない空模様のせいで晴れない気持ちが、天窓からのぞく青空で気分転換できるかもしれない。

京都府立大学との共同研究結果(プレスリリースより抜粋)
京都府立大学との共同研究結果(プレスリリースより抜粋)

※京都府立大学との共同研究 被験者:20代男女18名 実験条件:一般照明、天窓照明、実窓で比較 評価方法:入室1分後に、空間の印象を回答

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。