Open Innovation Platform
FOLLOW US

CES2019レポート:スマートホームを支えるIoTプラットフォームに注目

CES2019会場 Sands Expo & Convention Centerにて

CES2019会場 Sands Expo & Convention Centerにて

 米国ラスベガスで開催されたCES 2019では、居間やキッチン、寝室といった住宅のさまざまな場所における活動シーンごとに、生活をより便利で快適にすることをアピールしたスマートホーム関連の展示が数多く見られた。中でも、サブ会場であるSands Expo & Convention Centerの2階は、スマートホームやヘルスケア関連の製品やサービスを出店する企業のブースがフロアの大部分を占めていた。そのほとんどが、よりよい使い勝手を実現するためにネットワークを利用してさまざまな付加価値を提供するいわゆるIoT製品を展示していた。

IoT機器に組み込まれる通信チップ Tuya Globalの展示ブースにて

IoT製品向け通信モジュール Tuya Globalの展示

 現在はBluetoothやZigBee、Wi-Fiといった通信機能を搭載したIoT製品向けモジュールが安価で手に入るため、ネットワークにつながるハードウエア自体を開発する難易度は、以前に比べて格段に低い。ところが、こうした機器をクラウドコンピューティング環境やスマートフォンなどとつないだサービスを開発することは、これまでネットワークにつながらないスタンドアロンの製品を作ってきたメーカーにとっては簡単ではない。クラウド環境や、ネットワーク環境、セキュリティ、スケーラビリティー、データの分析、ソフトウエアの更新、スマホ向けアプリの開発といったさまざまな技術的課題を克服する必要があるからだ。

 こうした状況を受けCESの会場には、付加価値の高いサービスを実現するIoT製品を短期間で開発したいという需要に向けた、プラットフォームサービスを提案する企業がいくつかあった。クラウド環境やこれと連動するIoT製品の開発キット、サービスの管理システムなどをまとめ、ソリューションとして提供することで、開発コストだけでなくサービスの運用コストを抑えられることも売り物にしている。

Ayla Networksの展示

Ayla Networksの展示

 中でも注目を集めていたのは、米Ayla Networks社と中国Tuya Global社だった。Ayla Networks社は、ホワイトラベルのIoT製品を開発するデンマークのDevelco Products社と連携したソリューションの提案を行っていた。ハードウエアとクラウド環境、スマホを利用したサービスをアジャイル開発するプラットフォームを提供する。「IoT製品を4〜6ヶ月で開発できる」という。会場では、ネットワークのゲートウエイ装置と、窓の開閉センサ、水漏れセンサ、煙センサ、湿度センサ、人感センサなどをまとめた開発キットを展示していた。Ayla Netoworks社のプラットフォームは、日本メーカーでは富士通ゼネラルが無線LANに接続できる家庭用エアコンに採用している

Tuya Globalの展示

Tuya Globalの展示

 Tuya Global社は、自社のソリューション「Tuya Smart」に対応した各種の無線モジュールや、顧客企業の搭載製品を展示していた。エアコンや照明器具、コンセント、空気清浄機、監視カメラなど、すでに全世界で3万種類以上の製品に採用されているという。日本ではソフトバンク コマース&サービスがTuya Smartの提供を担う。CESの会場では、このほか米meShare社やフランスKuzzle社なども同様なIoT製品向けオープンプラットフォームの提案を行っていた。

集合住宅向け提案も

Smart Building Allianceの展示

Smart Building Allianceの展示

 集合住宅向けにIoT製品を使った大規模なソリューションを提供する企業もあった。マンションやアパートを開発するデベロッパーなどを対象に、物件を売ったあとも継続的に付加価値を高めるサービスを提供するための基盤を提供する。例えばフランスに拠点を置くSmart Building Allianceは、集合住宅向けのサービスを開発するためのソフトウエア基盤「Ready2Services」(R2S)に関する展示を行っていた。装置とインフラ、サービスの3レイヤでオープン・アーキテクチャを構築し、さまざまな企業に利用を呼びかける。同じブースでは、EnOcean規格に準拠した、電池や配線が不要な無線対応の壁スイッチやセンサを展示していた。スイッチを押す際の運動エネルギーや、室内の光を電力に変換して、125kビット/秒の無線通信を行う。通常のスイッチやセンサよりも単価は高いが、数多くのスイッチやセンサを配置するビルでは、配線や電池交換が不要であることによるメンテナンスコストの大幅な削減が期待できるという。

Zome Energy Networksの展示

Zome Energy Networksの展示

 このほか米Zome Energy Networks社が、無線対応のIoT製品を利用して集合住宅の管理やメンテナンスを容易にするソリューションについて展示していた。無線にはデンマークのZensys社が開発したZ-Waveと呼ぶ低電力の伝送技術を使う。Z-Waveの伝送距離は30m程度だが、近くにあるIoT機器同士が相互接続してバケツリレー方式にデータを転送する、いわゆるメッシュネットワークを構築できるため、大規模なビルであってもカバーできるという。

Written by
現在、世界各地で起こっているイノベーションを発信し、現場の声をお届けします。