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薬剤師の事務作業、現代アートの国内市場…。なんとかしたいが起業の起点~Open Network Lab Demo Day 

ピッチを行った4チームと審査員で記念撮影

ピッチを行った4チームと審査員で記念撮影

 株式会社デジタルガレージが主催するシードアクセラレーターブログラムOpen Network Lab(以下「OnLab」)。その19期生によるデモデイが2019年10月8日東京・渋谷区のデジタルガレージ本社内で開催された。この日はOnLab19期に応募があった102チームから採択され、3ヶ月間のプログラムを終えた4チームが登壇した。

 審査の結果、各アワードは次の通り。まず会場の参加者が選ぶ「オーディエンス賞」は株式会社プレカルの『precal』、審査員が選ぶ「ベストチーム賞(最優秀賞)」は株式会社トライセラの『TRiCERA』がそれぞれ受賞した。

薬局最大の事務負担「処方箋入力」を何とかしたい

株式会社プレカル代表取締役大須賀義揮氏
株式会社プレカル代表取締役大須賀義揮氏

「オーディエンス賞」を受賞したprecalは薬局最大の事務作業である「処方箋入力」の代行サービスだ。株式会社プレカルの代表取締役大須賀義揮氏自身が薬剤師であり薬局を経営している。大須賀氏によると、処方箋の発行枚数は年間8.4億枚に上り、薬局の業務フローの中でその入力作業は大きな割合を占める。本来、入力作業は事務員の業務なのだが、ドラッグストアでは薬剤師が担当する場合が多く、本来の薬剤師業務を圧迫していると言う。さらに、処方箋は入力項目が多く、病院によってその型式がバラバラであったり、記入ルールも複雑で薬局によってコード体系に違いがあったりする。

 そこで、大須賀氏らは処方箋入力の代行サービスprecalを創出した。薬局から処方箋を送信すれば、precalがOCRで読み取り入力し、薬局にデータを返送する。その間、最短数十秒で作業が完了すると言う。「20,000病院分の処方箋テンプレートを用意し、薬局ごとでのカスタマイズにも対応します」と大須賀氏は語る。将来的には処方箋情報から薬局の売上を把握し、請求業務の代行やファクタリングに拡大していく狙いもある。受賞した大須賀氏は「自分たちは薬局という狭い世界にいたんですけど、こうして外の世界に飛び出してきてみて、外から薬局を見たときの課題をどうするかということが学べました。これから業界を変えていきたいです」と意気込みを語った。

現代アートの越境ECプラットフォームをつくりたい

株式会社トライセラ代表取締役井口泰氏
株式会社トライセラ代表取締役井口泰氏

「ベストチーム賞(最優秀賞)」を受賞したTRiCERAは、これまで販路を持てなかった国内アーティストが、海外コレクターへの直接販売を可能にする、現代アートの越境ECプラットフォームをめざす。

 株式会社トライセラ代表取締役井口泰氏は国内の現代アート市場は300億円に過ぎず、とてもアーティストが生計を立てられないと話す。海外には約7.5兆円ものアート市場があるのだが、海外に作品を販売できるアーティストはほんの一握りで、約4万人の国内アーティストは海外に作品を売るノウハウを持たない。商談のための多言語対応や販売後の通関手続きなどの配送手配など、海外への販売には大きなハードルがいくつもあるためだ。

 そこでTRiCERAは、プロモーションから多言語対応のコミュニケーション、配送手続きまで、ワンストップで海外コレクターへの販売をサポートする。すでに約2,000点の作品が登録されており、これから市場規模5,563億円の世界のアートECマーケットへ切り込んでいきたいと語る。将来的には、アート作品のCtoCリセールや美術館へのレンタルなども視野に入れている。受賞した井口氏は「OnLabではわれわれのビジネスプランをブラッシュアップしてもらいました。今日はゴールではなくスタートです」と力強く会場に告げた。

 この日は他に中国市場向けの温水洗浄便座のダイレクト販売『water X』、カフェやレストラン、神社など居心地のいい空間をワークスペースとして利用できる予約できるサービス『Daysk』(デイスク)のピッチも行われた。

 クロージングでは次回20期の募集といよいよOnLabが10周年を迎えることが会場に告げられ、デモデイは終了した。

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ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。