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エストニアでの法人設立を日本語で可能に~GovTechスタートアップ「SetGo」始動 

SetGo共同創業者 齋藤アレックス剛太氏

SetGo共同創業者 齋藤アレックス剛太氏

 人口約130万人の小国でありながら、先進的な電子国家として取り上げられる事が多いエストニア。同国の電子居住プログラム「e-Residency」(イー・レジデンシー)を取得すれば、他国に居住していてもエストニアで法人登記が可能になり、ビジネスをスタートできる。全世界で約60,000名が登録、約7,500社の法人が登記しており、日本でも2,888名が登録し、これまで236社の法人が誕生した(2019年10月1日現在エストニア・イー・レジデンシー公式チームより)。

 EU加盟国でもあるエストニアにビジネス拠点を持つメリットは大きいと、日本でもイー・レジデンシー取得熱が広がったが、その後の法人登録は、国外ということもあり、やはりさまざまな課題があった。その結果、日本国内でイー・レジデンシーを取得しても、結局活用されないことも多い。

 ハードルのひとつはやはり「言葉の壁」。法人登記にあたっては一定の英語力が必要となる。また、エストニア国内での「リーガルアドレス」(法人住所)と「コンタクトパーソン」(エストニア政府からの連絡先)を確保する必要もある。つまりはエストニア国内に何らかのコネクションを持たないと法人設立がむずかしいのだ。

 そんな状況の中、イー・レジデンシー 取得者(イー・レジデント)の起業を後押ししようとGovTech(行政×テクノロジー)のスタートアップ、SetGo Estonia OÜ(セットゴー・エストニア・オーユー ※オーユーは有限会社の意)が設立された。同社はエストニアに本拠地を置くスタートアップblockhive(ブロックハイブ)のメンバーファームという位置づけで、当媒体の寄稿者でもある齋藤アレックス剛太氏が共同創業者となり、イー・レジデンシー公式チームと緊密に連携する形で、2019年9月にオンラインで完結する日本語(英語も可)対応のエストニア法人設立サービス「SetGo」の提供を開始した。

約10分ほどの操作で法人設立が可能に

 2019年10月東京・丸の内でSetGoローンチイベントが開催され、多くのイー・レジデントが集まった。エストニアから来日した齋藤アレックス剛太氏により、エストニアの現状や基本的な情報が述べられ、次いで「電子国民が増えていても活用事例が少ない」「非英語圏のサポートが不十分で情報格差が生じている」「イー・レジデント同士のつながりが弱い」などの課題が示された。それらの課題を解消することを目指したサービスがSetGoだ。

「ブログを立ち上げるような感覚で、法人設立手続きが10分程度で完了します」と、アレックス氏は実際の登録画面を会場モニターに示しながら説明した。イー・レジデンシー・カード(取得者には専用カードとパソコンとのアダプターが付与される)をパソコンに接続し、日本語の指示に従って自らのアカウントを作成する。そこからプルダウン・メニューを選択すると入力は完了する。リーガルアドレスとコンタクトパーソンはSetGo(エストニア政府認定済)が代行する。

 SetGoの利用料金は、設立時に250ユーロ(約30,000円)、月々の維持費用が25ユーロ(約3,000円)だとアレックス氏は説明する。法人設立、法人住所、(政府からの)連絡受付、さらにエストニアでの銀行口座開設の支援を行う。とくに銀行口座の開設は制約が多いのでサポートが必須だと言う。SetGoはイー・レジデント同士のコミュニティ機能を持ち、今後はそこを強化していきたいとアレックス氏は語った。

イーレジデンシーを取得した若宮正子氏
イーレジデンシーを取得した若宮正子氏

 イベントには、世界最高齢アプリ開発者として知られる若宮正子氏(84歳)がゲストとして来場。若宮氏はこの夏エストニアを訪れ、現地で氏の「エクセルアート」(Excelの機能を使ってアートデザイン)のワークショップを行い、その際イー・レジデンシーを取得し、エストニアの電子行政サービスに触れたと言う。世界最高齢のイー・レジデントだと笑う。若宮氏は、現地エストニアのシニア層が電子行政サービスをどう思っているかを調べたところ、87%のシニア世代が電子行政サービスを使い、その9割が生活に役立っていると答えたことに驚いたそうだ。

現地の法務や税務などのパートナーの紹介も

 ローンチイベントの後、齋藤アレックス剛太氏に話を伺った。アレックス氏は東京・世田谷出身で、バックパッカーとして各国を巡り、大学卒業後コンサルファームで働いた後、2018年5月にエストニアに旅行する。ところが、よほど肌に合ったのかエストニアにそのまま滞在し、当地の有力スタートアップVeriff(ヴェリフ)を経てblockhive(ブロックハイブ)にジョイン。エストニア政府のイー・レジデンシーとも関係が深かったことから本事業の推進に着手した。エストニアと日本の架け橋になりたいと言う。

日本だけではなく、アジア各国にもSetGoを広めたいと語るアレックス氏
日本だけではなく、アジア各国にもSetGoを広めたいと語るアレックス氏

「基本的にはエストニアに法人を持ちたい中小企業、小規模事業者に向けて、法人設立などの中核サービスをオンラインで提供するものですが、法務、税務、会計さらにはライセンス申請、IT開発、デザインなどの分野についても、現地のパートナーを紹介し、事業の成功に向けて支援していきたい」とアレックス氏は続ける。また大企業向けには別途コンサルティングを中心としたコンシェルジュメニューを準備している。

 そしてこの先はSetGoのサービスを日本だけでなく、たとえばアジア各国にも広めていきたいと言う。

 2018年末、カリユライド・エストニア大統領によって「e-Residency2.0」が発表された。同制度はバージョンアップし利便性を高め、コミュニティとしての機能をさらに強化する方針だ。そのe-Residency2.0におけるコミュニティに参加するために必要な機能の一翼を担うのがSetGoなのかもしれない。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。