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北海道を宇宙ビジネスのシリコンバレーにするために〜堀江貴文氏ら札幌でカンファレンス

(左から)ISTの稲川大貴社長、堀江貴文取締役

(左から)ISTの稲川大貴社長、堀江貴文取締役

 ニール・アームストロングが月面に足跡を刻んでからちょうど半世紀の2019年。北海道大樹町にあるロケットベンチャー、インターステラテクノロジズ(IST)が5月、日本初となる民間単独開発ロケット「MOMO3号機」による宇宙空間到達に成功した。10月、札幌でのカンファレンスにISTの稲川大貴社長、堀江貴文取締役ら宇宙ビジネスのプレーヤーが集まり、宇宙ビジネス発展に必要なピースは何か、宇宙産業のエコシステムとは-をテーマに語った。北海道を宇宙ビジネスのシリコンバレーにするには、なにが必要なのか。

■なぜいま宇宙ビジネスなのか

 宇宙ビジネスは大きく「データ・技術の利活用」、ロケットなどの「輸送」「衛星の開発、製造」、宇宙空間での研究開発などの「軌道上サービス」「宇宙旅行・滞在・サービス」「探査・資源開発」の6つに分けることができる。2040年に100兆円規模になるとも予測され、この市場には世界で2000社超、日本でも30~40のスタートアップがあるという。

 「ロケットを打ち上げると人生観が変わるくらいの感動がある。それが根源的なモチベーション。ただ、一般に宇宙開発はまだ遠い世界の話。ロケットというインフラを徹底的に安くすることで、近い世界にしたい」という稲川氏。堀江氏も「宇宙ビジネスは輸送系を安くしないと隆盛はない」「解像度が数センチのリアルタイム衛星データが利用できるようになった時、何が起こるか想像してほしい。宇宙ビジネスでは輸送系がボトルネックであり、競争力の源にもなる。将来、宇宙ビジネスの市場規模は今の予想の10倍100倍になる」とIST創業の狙いを語った。

(左から)さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏、ポーラスター・スペース代表取締役の三村昌裕氏、北海道大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏
(左から)さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏、ポーラスター・スペース代表取締役の三村昌裕氏、北海道大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏

 カンファレンスは、札幌で毎年秋に開催されているIT・映像などのイベントNoMapsの「北海道宇宙ビジネスサミット 北海道に築く宇宙産業のエコシステム」。登壇したのは稲川、堀江両氏のほか北海道大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏、さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏、ポーラスター・スペース代表取締役の三村昌裕氏。モデレーターは一般社団法人SPACETIDE 理事兼COOの佐藤将史氏。

■ビジネス化への課題

 鈴木氏は、現在の宇宙ビジネスは「期待で資金を集めている面がある」と指摘した上で「持続的な宇宙ビジネスとするために、ベースとなるサービス・インフラを整え、みんなが使えるような環境を整えることが必要。基礎固めができるかどうかが課題だ」と指摘した。

大樹宇宙交流センターSORA内に展示されたロケット
大樹宇宙交流センターSORA内に展示されたロケット

 これに対し堀江氏は「バブルがないとお金は集まらない。期待先行でお金が集まり、生き残った会社が大きくなっていく」とした上で、自動運転車やEVの普及で「自動車産業を支えるサプライチェーンは10年以内に崩壊する」と予測。「自動車サプライチェーンの代替策は用意されていない。このままでは日本は世界の下請け工場となる。(政府)予算の傾斜配分も必要ではないか」と提案した。また「現在、真面目な用途にしか宇宙インフラが使われていない。くだらないことに使われるようになってマーケットが大きくなる。真面目で保守的な用途だけでこれだけの市場予測がされるのであれば、不真面目な用途にも使われるとすごいことになる。宇宙が身近になると、想像の斜め上をいくようなことが起きてくる」と述べた。

 さくらインターネットは北海道石狩市に大規模データセンターを持ち、人工衛星データのプラットフォーム「Tellus」を運用している。田中氏は「世の中の人は儲かる話にしかお金を出さないが、データビジネスは儲かる話ではない。でもやりたい。普及していけば、やりたいことが儲かる話になるだろう」との見通しを語った。

 また、ポーラスター・スペースは北海道大学発ベンチャーで、ハイパースペクトルカメラを搭載した超小型衛星とドローンを使った高精度のリモートセンシングを開発・運用し、農漁業の生産性向上や災害予測などに取り組んでいる。三村氏は「これまで衛星データは、使えないデータの蓄積だった。だから、使えるデータを集めよう、地上で何が起こっているのか見てみようと創業した。スペクトル解析で必要なライブラリを根こそぎ集め、リモートセンシングでマネタイズする」との見通しを示した。

■北海道の利点

北海道大樹町の航空宇宙実験場付近
北海道大樹町の航空宇宙実験場付近

 ISTが本社と発射場を持つ北海道東部の大樹町は人口約5000人の小さなまち。稲田氏は「東も南も海でひらけているロケット打ち上げの最適地」という。「ロケット打ち上げは土地に縛られる。打ち上げ場所を持つことが競争力の源泉で、土地に根ざすことで宇宙ビジネス関係者が集積してくるのは間違いないと思っている」と言い、堀江氏も「大樹は人口5000人で懸念もしていたが、(IST創業後)尖っている人、東京でもこんなメンツは集まらないだろうという人が集まっている。10年後に何万人の人口になっているかも。面白いことをすれば面白い人が集まってくる」と期待を寄せた。

 一方、三村氏は「北海道は日本の耕地面積の4分の1を占め、良い実証フィールドになることが拠点にする利点。(規模の小さな)北海道の経済圏で資金を還流させることは難しいが、分析手法を知財に変えて世界のプランテーションに実装したい」。田中氏も「サーバーの冷却代は北海道が最も安く、ほかの半分の電気代で動かせ、エンジニアも確保できる。欧州から北極経由で最も近いアジアが北海道で、重要な拠点」と述べた。

 北海道の宇宙ビジネスが発展するのに必要な要素はなにか。鈴木氏は「宇宙産業のシリコンバレー化、宇宙産業の6次産業化、ポイントは政府が何をするかだ。一方で、政府主導、過剰介入する産業はたいがいうまく行かない。ひとつの場所でロケット、衛星データ利用など世界でもまれな環境になりつつある。北海道に行けば何かができる、投資があつまるというブランド化することで、アイデアの共有ができ、突拍子もないアイデアや付加価値が生まれる。宇宙ビジネスをやるなら北海道へ、という場をつくるのが大事」と締めくくった。

田中 徹 Written by
北海道新聞で記者を経て現在、東京支社メディア委員。デジタル分野のリサーチ、企画などを担当。共著書・編著に「頭脳対決!棋士vs.コンピュータ」(新潮文庫)、「AIの世紀 カンブリア爆発 ―人間と人工知能の進化と共生」(さくら舎)など。@TTets