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“ぶら下がって移動・収穫する自動収穫ロボットが登場

農場での運用がスタートしたAI活用の自動収穫ロボット(プレスリリースより)

農場での運用がスタートしたAI活用の自動収穫ロボット(プレスリリースより)

 農林水産省統計部が公表している統計によると、平成31年の日本の農業者の平均年齢は67歳。そして、65歳以上の農業者が全体の70%を占めている。全国的に農業従事者が減少する中で、その数が2030年には約半数まで減少するという予測もある。このままいけば、日本の農業は持続不可能となるだろう。

 新規就農支援や海外からの労働者受け入れなど、さまざまな対策が取られているが、時代の趨勢から言ってロボットやAI(人工知能)による自動化、省力化は有力な手段だ。いわゆる「アグリ・テック」と言われる分野だが、この分野では農機の自動運転やドローンや衛星を使った圃場管理など大規模農家向けのソリューションが目につく。しかし、日本の農家は多くは小規模、それも高齢者中心で営まれている。大型トラクターや監視用衛星とは無縁。ただ毎日繰り返され、同じ動作を繰り返す収穫作業などをなんとかして欲しいと言うのが切実な要望だ。そもそも農家は、農作業の50%以上の時間を収穫・出荷作業に費やしており、農業所得を向上させるためには、収穫作業を効率化する必要があった。

 こうした、要望に答えるための収穫ロボットが近年あいつで開発され、進化しつつある。2019年10月設立のスタートアップAGRIST株式会社(宮崎県児湯郡新富町、以下アグリスト)は、AIを活用した吊り下げ式の自動収穫ロボットを開発し、2020年1月から農場で運用を開始した。これは、宮崎県児湯郡新富町の若手農家による「儲かる農業研究会」会員で、JA児湯の理事を務めるピーマン農家・福山望氏と共同で開発したもの。同社は、このロボットを「ハウス等で使用し、野菜等を自動で収穫できる吊り下げ式のロボット」としてPCT国際特許出願(特許協力条約に加盟する国すべてに特許出願したと同等の効果がある出願制度)し、2020年春から販売を開始する。

 これまで収穫ロボットは畝の間の農地を自走するものが大半だった。しかし、自走式収穫ロボットは圃場が平らでないと転倒したり、走行のじゃまにならないよう、走路をあらかじめ片付けておく必要があるなど意外と手間がかかるといった課題もあった。さらに、長いロボットアームを使って収穫するロボットは、保守管理が大変になることも懸念されていた。こうした農家の声を反映し、従来型の自走式ロボットの課題を解決するのが、今回開発した「吊り下げ式ロボット」だ。

自動収穫ロボットを視察する宮崎県内農業関係者(プレスリリースより)
自動収穫ロボットを視察する宮崎県内農業関係者(プレスリリースより)

 吊り下げ式ロボットは、農家の視点にたったシンプルで無駄のないデザインとなっている。ワイヤーにフックでワンタッチでかけることができ、ボタンひとつで動き出す。バッテリーの充電や再生停止も、ワンクリックで行える。また、農家との共同開発というメリットをいかし開発にかかる期間を短縮しコストを軽減している。収穫すべき農作物を見分けるAIの学習についても、農家の協力のもと、農場の膨大な野菜関連の写真の提供を受け、それを使って機械学習を行うことで、画像認識の精度を高めてきた。

 将来的には、ロボットが収集したデータを解析し、病気や不良の予知や早期発見を可能にすることなども視野に入れている。

編集部 Written by
現在、世界各地で起こっているイノベーションを発信し、現場の声をお届けします。