トヨタ自動車とNTTは、資本提携で合意し、相互に2千億円を出資し株式を持ち合うことを24日に発表した。
提携の主な目的はスマートシティ構想の推進。スマートシティ実現のコア基盤となる「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築・運営し、先行ケースとして、トヨタが今年1月のCESで発表した静岡県裾野市東富士エリア(Woven City)とNTTが街区整備に関わる東京都港区品川エリアにて実装し、将来的には国内外に展開することを想定している。
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会見で豊田章男社長が今回の提携に至った経緯などを説明した。その前提には自動車をとりまく環境の変化がある。これまで自動車メーカーはハードの更新(モデルチェンジ)に合わせて新たな技術を世に送り出し、需要を喚起してきたが、スマホなどではハードの更新を待たずにアプリやOSが更新されていくことによって機能拡張が可能となっている。IT企業のこうした流儀が車の業界に持ち込まれると、このスピード感についていくため考え方を「ソフトウェア・ファースト」にする必要がある。フルモデルチェンジでハードを新しくしたら、その後のマイナーチェンジは、ハードの改良より、ソフトのアップデートで車の機能拡張をする。そのために必要なソフト開発の力、充実した通信網をNTTは保有している。
さらにEV化が進むと、クルマが街の電源として利用できるようになり、コネクティッドカーが増えれば、クルマが街のデータ収集端末になる。こうしてクルマは街の機能の一部となると「社会における車の役割の変化」がおこり、クルマは社会システムのひとつとなる。そして通信という社会システムを長年にわたって提供してきたNTTこそが「社会システムに組み込まれたクルマを最も上手に活用できる」(豊田章男社長)。
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両社とも海外企業を排除する意図はなくオープンマインドで今後も望むとしていたが、トヨタ自動車とNTTということになれば、米中への対抗軸としての“日の丸連合”という期待も出てくる。NTTの澤田純社長は質疑応答の中で「GAFA対抗も大いにある」と述べていた。
先進技術をめぐる米中間の壁は高くなり、独自の技術がなければ「米国か中国かどちらかの技術を選ばざるをえない」分野は今後増えて行くだろう。そんな中でクルマや街に関わる技術でトヨタ・NTT連合が無視できない存在になることを期待したい。