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4輪だけでなく2輪もコネクテッド ホンダ「BENLY e:」の可能性とは

HONADA BENLY e: Ⅰ(ロスホワイト)

HONADA BENLY e: Ⅰ(ロスホワイト)

 日本でも今春から一部エリアで5Gのサービスが開始されるなど、通信環境の大幅な向上がもたらされる中、車にICT端末としての機能を持たせるコネクテッドカーの技術開発も進展を見せつつある。

 2019年12月、本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)が電動二輪車「BENLY e:(ベンリィ イー)」の販売を発表した。これは、もともと同社が新聞配達や宅配などの業務用スクーターとして長く販売していたベンリィシリーズをEV化したもので、移動データから車両の運行管理などができるコネクテッドシステムに対応している。

 これまで4輪車向けコネクテッドシステムは複数存在していたが、2輪車向けのものは目にすることがなかった。バイクにコネクテッドシステムを付加することで、どのような価値や可能性が生まれるのだろうか。

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 2020年4月24日、株式会社スマートドライブ(以下、スマートドライブ)主催のオンラインカンファレンス「MOBILITY TRANSFORMATION 2020」に株式会社ホンダモーターサイクルジャパンの山本祐司氏とスマートドライブの元垣内広毅氏が登壇し、「コネクテッドバイクは今後どのように活用されるのか」と題した講演を行った。

ホンダモーターサイクルジャパンの山本祐司氏(左)とスマートドライブの元垣内広毅氏(当日配布資料より抜粋)
ホンダモーターサイクルジャパンの山本祐司氏(左)とスマートドライブの元垣内広毅氏(当日配布資料より抜粋)

 まず山本氏は、ホンダが「BENLY e:」開発に至った背景と経緯を説明。日本のバイク市場は最盛期の1980年代に比べ縮小しているものの、「業務用のビジネスバイクや趣味用のファンバイクは依然として底堅い市場がある」とし、「この領域のバイクについて、コネクテッドシステムを付加することで価値を高めることが狙い」だと述べた。

 しかし同社はものづくりのノウハウは豊富だが、データ分析の領域の実績は乏しい。そこで移動データ活用の基盤システムやサービス構築に長けたスマートドライブと組み、EVビジネスバイク「BENLY e:」を開発するに至ったという。

「2輪については、まだまだコネクテッドのようなサービスで目立ったものがない状況で、4輪やほかの業界に対して若干ビハインドしている状態です。これらサービスの構築そのものを挑戦と捉えて進めている状況です」(山本氏)。

 ではバイクがネットワークとつながることで、具体的にどのような価値やサービスが生まれるのだろう。

 山本氏によると、「BENLY e:」で提供するコネクテッドシステムは、同社がスマートドライブと協同で構築している4輪向けコネクテッドサービス「HONDA FLEET MANAGEMENT」の一部機能を「2輪向けにフィットさせたもの」だという。

HONDA FLEET MANAGEMENTの一例(当日配布資料より)
HONDA FLEET MANAGEMENTの一例(当日配布資料より)

 具体的には、配達などを行う従業員の位置情報を把握する機能(「リアルタイム位置情報」)や、急ブレーキなどの危険走行が起こった場所を共有する機能(「運転特性レポート」)、従業員の日報作成の手間を軽減できる機能(「自動日報作成」)、任意の拠点への接近、通過、到着を通知してくれる機能(「ジオフェンス機能」)などを備え、宅配や新聞配達などの業務の効率化や安全性を高められるとのこと。

 ちなみに筆者は、以前フードデリバリー会社の配達スタッフをしていたことがあるが、その際最も難しかったのが、最短の配達ルートを考えることだ。走行ルートを配達スタッフ間で共有できれば、そこから最適なルートを導き出し、配達時間の短縮化にも役立てられるだろう。「BENLY e:」が搭載するようなコネクテッドシステムが配送業務を効率化するであろうことは経験上からもよくわかる。

移動データ活用の可能性は無限

 コネクテッドバイクから得られる移動データは将来的にどのような活用法が考えられるのだろうか。

 元垣内氏は、データ分析の専門家の観点から、コネクテッドバイクからの移動データを、営業情報、マーケティンデータ、交通関連情報、観光データなどさまざまなデータと掛けあわせることで、「一気に多様な価値が生まれる」とその価値を強調した。

 例えば、フランチャイズ展開している会社であれば、売り上げ成績の良い加盟店が持つバイクの移動データと営業情報を掛けあわせることで、「売り上げ効率のいい加盟店のバイクの動き方を可視化」できる。さらにそこから見えてきたバイクの動き方やノウハウを、他の加盟店の教育(平準化)にも活用できる。

 また元垣内氏は、移動データの活用形態の進化についても言及。人間の管理者などが移動データを分析・レポーティングする初期の段階から、AI(人工知能)が移動データを使って予測分析する段階へ、さらに「人と機械が融合し、(AIが)人の行動を変えていくような段階」にも進めていけるとした。

 例えば、バイクから得られる運転特性データと部品のスペック情報を掛け合わせ、AIに部品劣化のタイミングを予測させる。さらに予測だけでなく、「部品を劣化させないためには、どう運転をすればよいか」をAIがコーチングするような仕組みも将来的には構築可能だという。

「移動データと他データを組み合わせることに加え、さらにデータ活用形態も変化させることで、アイデアは無限に広がっていくと考えています」(元垣内氏)。

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 さらに山本氏によると、今後ホンダでは、業務用バイクだけでなく、「趣味用のファンバイクにもコネクテッドシステムを付加していく」予定とのこと。

 山本氏は「バイクは単なる移動手段ではなく、体験をもたらすものとしての価値がある」とし、例えば、リアルタイムな位置情報からバイクで走ると気持ちいいルートを提案するといったバイクならではの感動体験を生み出すシステムの構築を目指すという。

 2輪車ならではのコネクテッドシステムとはどのようなものか、その模索が始まっている。

庄司健一 Written by
有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。