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自宅リハビリをAIとセラピストで遠隔サポート

サービスを示す北原病院グループ広報部責任者:理学療法士 亀田佳一氏

サービスを示す北原病院グループ広報部責任者:理学療法士 亀田佳一氏

 日本国内の脳卒中患者数は、現在111万人にのぼると推計される(厚労省平成29年患者調査)。毎年23万人以上が新たに発症しており、要介護の要因としては認知症に次いで第2位の多さだ(内閣府 平成30年高齢社会白書)。脳卒中患者には、片麻痺(体の左右片側どちらか一方が動きにくくなること)などの障がいが残ることも多く、適切なリハビリテーション(以下、リハビリ)が必要だ。

 しかし、リハビリの専門職の指導のもと、医療保険でのリハビリを受けられる日数には制限がある。その後は介護保険による在宅リハビリなどに移行することになるため「リハビリを受けられる時間が短い」「リハビリへのモチベーションが維持できない」などの課題がある。

 こうした課題に対応するため2020年6月、北原病院グループ(医療法人社団KNI、株式会社Kitahara Medical Strategies International 東京都八王子市)と株式会社エクサウィザーズ(東京都港区)は、共同開発したオンライン遠隔リハビリサービスの試験導入を北原リハビリテーション病院で開始した。どのようなサービスなのか。北原病院グループ広報部責任者/理学療法士 亀田佳一氏に話を聞いた。

リハビリの「量」を確保

 亀田氏によると、現状、脳卒中/片麻痺患者において、退院後のリハビリの「量」が不足しているという。これまでは、患者に自宅でリハビリをしてもらうために自主トレーニングのプログラムを作成し、指導書を渡していたが、患者は自宅ではリハビリを続けることが難しい。継続的に病院でサポートできればよいのだが、上述のように、一定の日数を超えてしまうと医療保険が使えなくなる。仮に自費で通うとすると大きな経済的負担になってしまう。

 そこで今回エクサウィザーズと共同開発し、北原リハビリテーション病院で実験導入を始めたのが「オンライン遠隔リハビリサービス」だ。患者は、自宅でセラピストから指定されたトレーニングのお手本動画を見ながらトレーニングを行い、自身のトレーニングの様子をアプリで撮影し、担当セラピストに送ることができる。操作はいたってシンプル、ボタンひとつで行えるようになっている。また、AIを用いた「骨格抽出技術」により、ボタンだけでなく、手の上げ下げの動作を認知して動画撮影がスタートできるように設計してある。

遠隔リハビリ支援サービスの概要
遠隔リハビリ支援サービスの概要

 患者から送られてきた自主トレーニングの動画をセラピストが確認し、「少しカラダが傾いてしまってますね」「もう少し手をまっすぐに」などアドバイスを送り返すことで、質の高い指導ができると亀田氏は話す。

フィードバックもAIに

 今後は「AIを患者だけでなく、セラピストの支援に使っていきたい」(亀田氏)。現在、セラピストがフィードバックしているが、患者の動画データが集まり、その解析が進めばフィードバックもAIで行うことが可能になる。つまり、セラピストとAIが協働して遠隔リハビリ支援を行い、セラピストの負担を軽減することができる。

 問題は患者の負担する費用だが、この仕組みを使い、月1回は自費でリハビリを受け、それ以外はオンライン遠隔リハビリサービスを使い、自宅リハビリを行ってもらう。iPadレンタルとアプリ利用料込で数千円程度であれば、患者にも大きな負担にならないのではないかと亀田氏は話す。

医療のオープンイノベーション

 また、北原病院グループは全国のセラピストから知見を集め、サービスを進化させるために、7月にオンラインコミュニティである「リハビリテーション×AIイノベーションラボ」を発足させた。

北原病院
北原病院

「現状に課題を感じる全てのリハビリに関わる方々が集まり、課題解決にAIの活用を検討するために、先端技術に明るいさまざまな企業との接点を作るオープンイノベーションのためのプラットフォームとしていく予定です」(亀田氏)

 そこでは、『課題やAIなど先端技術をリハビリに活用するアイデアをラフに共有するライトニングトーク』『リハビリテーションに先端技術を使った事例や取り組みを紹介するセミナー』『これら情報のSNSをとおした情報シェア』『リハビリに関わる方からの意見をプロダクトの開発や改善に反映するワークショップ』を行っていくとのことだ。まるでITのスタートアップ企業のようですね、と話すと、「医療業界はもっとデジタル、AIを活用していかなくはなりません」と亀田氏。同病院グループの試みには、医療業界のDXを進めて行こうという強い意志が感じられた。

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ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。