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コロナ禍の世界でバイオテクノロジーの実践者たちが「したこと」「考えたこと」〜YCAM「続・ナマモノのあつかいかた」

津田氏のプレゼンテーション資料

津田氏のプレゼンテーション資料

 世界が新型コロナウイルス感染症の世界的流行に直面している現在、バイオラボの関係者やアーティストは今どんな何を考え、どんなことをしているのか。

山口情報芸術センター
山口情報芸術センター

 バイオテクノロジーをはじめとするテクノロジーを扱うアートセンターである、山口情報芸術センター(Yamaguchi Center for Arts and Media 通称「YCAM(ワイカム)」、以下YCAM) では、国内外の識者をオンラインでつなぎ、毎週日曜にトークセッションを行っている(6/7から毎週日曜 全9回)。バイオテクノロジーの実践者との交流を通じて、バイオラボの役割や、生命と文化の関わりを探ろうというのがこの催しの目的だ。

 技術革新が進んだ現在においても、簡単には解決しない感染症という問題に直面した世界は、政治、経済のみならず生活全般における見直しを迫られている。未曾有のこの事態に各国政府やグローバルな企業は、前例のない対処を迫られることになったため、初動に戸惑いともたつきが出た。一方、インターネットの普及などイノベーションによって生まれたオープンなコミュニティや、メイカー・ムーブメントを支えるメイカーや世界各国の小規模なDIYラボでは、それぞれがこの事態に対処すべく素早く自発的に動き出している。

 ラボに備わる3Dプリンターなどの機材を使い、パンデミックの初期に不足したマスクやフェイスシールドなどを自作する動きは世界中で同時発生的に行われてきた。また、PCR検査リソースの不足が表面化すると、バイオテクノロジーのノウハウや機材を持つバイオラボの中には、新型コロナウイルスの検査キットの開発に挑むところもあらわれた。

 6月7日に配信された第1回のトークセッションでは、YCAMのバイオ・リサーチの研究員である津田和俊氏から、国内外のオープンソース・DIYコミュニティの状況についての紹介があった。

トークセッションの最後に質問・感想コーナーが設定されている(第1回の様子)
トークセッションの最後に質問・感想コーナーが設定されている(第1回の様子)

 その中で、Make:ブログで取り上げられた「メイカーによる『プランC』の対応」について言及。政府によるコロナ対策の対応が「プランA」、既存の産業界の対応を「プランB」であるとすれば、「プランC」は市民(Citizen)であるメイカーの取り組みである。日本でも5月2日にオンライン上で実施されたメイカーのイベントでは、テクノロジーでパンデミックに立ち向かおうとする作品が1000点ほど紹介されたという。

 また、こちらも5月にオンラインで開催されたVirtually Maker Faireでは、メイカーやFab Labによる個人用防護具(フェイスシールド、マスクなど)の自作に関する取り組みに着目。この中ではインターネット上で公開されている自作マスクの事例調査の結果などが公表された。

 さらに国内では、フェイスシールドの製作者・ユーザー向けガイドライン「Fab Safe Hub」がまとめられた。これによって自作される製品の品質が担保されるだけでなく、医療現場などに安全に届けるため、検品や梱包、製品の消毒の方法までもが細かく解説されている。さらにオープンソースで公開されたフェイスシールドのフレームの3Dデータをもとに中小企業協同組合が金型をつくって量産化した事例なども紹介された。

 第2回ではインドネシアのアートコレクティブ「Lifepatch」の共同設立者で研究者のヌル・アクバル・アロファトゥラ氏が登場。COVID-19の検査法としてPCR検査に代わる、より低コストで簡便なLAMP法に着目し、現在オープンソース(GPLv3)のハードウェアを、共同開発していることなどを話した。

 続く第3回は、ガーナにある「Hive Biolab」共同設立者のハリー・アクリゴ氏がPCR検査法に必要な試薬の不足を解消するために、Open Bioeconomy Labという研究所と連携し、国内で試薬の生産準備を進めていることが語られた。また、正確な科学的知識を広めるためアフリカ発信のプラットフォーム「AfricArXiv」作られ、COVID-19関連の記事が公開されていることなど、日本ではあまり聞くことが出来ないアフリカでの取り組みも紹介されている。

トークセッションの最後に質問・感想コーナーが設定されている(第5回の様子)
トークセッションの最後に質問・感想コーナーが設定されている(第5回の様子)

 さらに第4回は、オーストラリア「SymbioticA」の共同設立者であるオロン・カッツ氏が生物学について。第5回ではワイルド・サイエンティストの片野晃輔氏が生態系などについて。それぞれ今回のパンデミック状況下で、認識したあらたな気づきや、互いに関係する“生き物”の世界についての興味深い話が披露されている。

*  *  *

「続・ナマモノのあつかいかた」と題されたこの連続トークセッション。これまで終了したセッションはYCAMのサイトにアーカイブされており、いつでも見ることができる。また今後のセッション予定は以下の通り。

●今後のスケジュール(※下記は7月17日時点の情報となります)

すでに終了し近日中にアーカイブ公開予定のもの

  • 7月12日(日)/ゲスト:ゲオルク・トレメル(アーティスト/日本、オーストリア)

今後の開催予定。時間はいずれも午前11時スタート

続・ナマモノのあつかいかた
続・ナマモノのあつかいかた
  • 7月19日(日)/ゲスト:J.J.ヘイスティングス(バイオハッカー、アーティスト/米国)
  • 7月26日(日)/ゲスト:ベス・リー(g0v/台湾)
  • 8月2日(日)/ゲスト:ボヤナ・ピシュクル(リュブリャナ近代美術館およびメテルコヴァ現代美術館キュレーター/スロベニア)

●イベントの参加及びこれまでのアーカイブ

イベント詳細ページにアクセス/イベント当日に視聴URL公開

https://www.ycam.jp/events/2020/openlab/

北元均 Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。