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「食べ終わったら返してね」 テイクアウト容器をシェアする実証実験 沖縄読谷村でスタート

パートナー店舗とシェアリング容器を受け渡しする全国運転代行協会沖縄県支部新崎会長(右)(NECソリューションイノベータ提供)

パートナー店舗とシェアリング容器を受け渡しする全国運転代行協会沖縄県支部新崎会長(右)(NECソリューションイノベータ提供)

 子どもの頃、飲み終えた空きビンをお店に返しに行くと、ビン代をもらうことができたという記憶がある。また、出前のどんぶりやお皿も使い捨てではなく、食べ終わったら、お店に引き取ってもらうことが当たり前だった。少し前までの暮らしには、自然と「リユース」という意識が溶け込んでいたのではないか。

 令和の今、自宅のごみ置き場には、使い捨てのプラスチック容器が大量に捨てられている。さらにコロナ禍以降はテイクアウトの利用が増え、ゴミは増える一方だ。気にはなるものの、減らすとなると難しい。

 そこで登場したのが、使い捨てない「シェアリング容器」だ。2020年12月1日、NISSHA株式会社(京都市中京区)とNECソリューションイノベータ株式会社(東京都江東区)は、沖縄県中頭郡読谷村(よみたんそん)において、サーキュラーエコノミー(循環型で持続可能な経済活動)推進と新しい生活様式の両立に向けた、テイクアウト容器のシェアリングサービスRe&Go(リーアンドゴー)の社会実証実験をスタートした(2021年2月14日まで)。

返却・回収・洗浄で再利用

Re&Goサービス実証実験モデル図(NECソリューションイノベータ提供)
Re&Goサービス実証実験モデル図(NECソリューションイノベータ提供)

 実験では沖縄県読谷村の協力店舗において、テイクアウトをする際にユーザーはシェアリング容器が選択できる。買ったものは好きな場所で飲食することができ、使い終えたシェアリング容器は、本実証に参加する店舗などであればどこでも返却することができる。返却された容器は、回収・洗浄して再利用されるため、容器ごみが発生しないという仕組みだ。

 サービス利用のためには、Re&GoのLINEアカウントとお友達登録をする。LINEのアプリとQRコードで、注文や容器の貸出、返却の管理が行われる。また、容器を返却すると参加店舗で利用できるクーポンに引き換えられるポイントが付与される。

Re&Goで利用される容器(Re&Goリリースより)
Re&Goで利用される容器(Re&Goリリースより)

 実証実験を進めるNISSHA(実証実験の実施責任、企画、運営、利用容器の準備など)吉村祐一氏とNECソリューションイノベータ株式会社(Re&Goアプリの開発・運用、企画支援など)加藤一郎氏のお二人に話を伺った。

* * *

NISSHA株式会社 事業開発室 コーポレートマーケティング部 アライアンスグループ 吉村 祐一氏
NISSHA株式会社
吉村 祐一氏

 Re&Goは、新規事業創出の支援を行う株式会社フェニクシー(本社・京都市左京区)のインキュベーションプログラムに参加したNISSHA吉村氏による「プラスチックごみ削減」に向けた事業プランがベースになっている。吉村氏は事業アイデアのきっかけを次のように話した。

「海洋プラスチックごみの問題が 日に日に深刻になっています。一方私たちも少しは気をつけているとは思うんですが、思ったより問題が大きすぎて、 日々の生活に直結していないんじゃないかと感じています。そういった問題を事業として解決できないかと模索していました」

 その事業構築パートナーが必要だと考えていたところ、ITを活用したサーキュラーエコノミーへの貢献を積極的に進めていたNECソリューションイノベータと出会った。

NECソリューションイノベータ株式会社 イノベーション推進本部 事業デザイン第二グループ プロフェッショナル 加藤 一郎氏
NECソリューションイノベータ株式会社
加藤 一郎氏

「弊社は日本各地に拠点があるという特徴を持った会社で、 地域貢献をやっていきたいという志を持った社員が多くおります。地域貢献ビジネスに活用できるプラットフォームを用意して行こうという取り組みを進めている中で、 NISSHAさんのRe&Goのコンセプトはとてもマッチする。ぜひ一緒に進めさせていただきたいと思いました」(加藤氏)

 プラスチックごみの削減という目標を持って両社が共創活動を始めたのは2020年1月だが、その後コロナ感染が拡大したことで、さらに背中を押されることになったと吉村氏は話した。

ビジネスモデルは再考も

 飲食業界が大きなダメージに見舞われたこの時期に、このような実証実験に参加を求めるのは難しく、途中で参加への意志がトーンダウンした店舗もあったという。しかし、読谷村商工会、実証実験のパートナーとして参加した大和リゾート株式会社Royal Hotel 沖縄残波岬や株式会社Alpaca.Lab、公益社団法人全国運転代行協会沖縄県支部など地元組織・企業の力添えで、実施にこぎつけることができた。

 まだ実証実験の期間中だが、すでにパートナーから多くのフィードバックがあり、たいへん参考になっているという。一例を挙げると、沖縄ではお墓参りの時に集まった親戚縁者一同が墓前で宴会をする風習があり、この沖縄ならではの機会にRe&Goが役立つのでは、という声だ。その一方で、吉村氏によると課題も2つほど見えてきた。

「まず、今回は飲食店の方々に使っていただくサービスを前提としましたが、お話を聞くとやはり皆さんお忙しい。(貸出、回収などの)店舗の方々のオペレーション負荷を下げる必要があります」

 もうひとつの課題はビジネスモデルだ。カップ、ランチボックスなどのシェアリング容器を利用する店舗からの利用料を徴収するモデルを想定していたのだが、まさに今、飲食店は新型コロナで大きく打撃を受け、売上が落ちている。吉村氏も「そこから対価をいただく形でのサービス運用は、難しいかもしれないですね」と飲食店の現状への配慮と、ビジネスモデルの練り直しが必要であることは認めている。

 今後は、課題については再考し、2021年度中にRe&Goの事業化を目標にしている。1929年京都で創業し、現在はタッチセンサーや医療機器等をグローバルに展開するNISSHA、NECグループの社会ソリューション事業を担う1975年創業のNECソリューションイノベータ、ともに成熟した企業同士ではあるが、共創で生まれた新たなチャレンジが、地域創生に寄与することを期待したい。

藤木俊明 Written by
ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。