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JR九州 量子コンピューターなどを使って車両運用を自動化する試みを開始

JR九州の実証対象路線を走るBEC819系架線式蓄電池電車(愛称「DENCHA」)

JR九州の実証対象路線を走るBEC819系架線式蓄電池電車(愛称「DENCHA」)

 JR九州と株式会社グルーヴノーツ(本社:福岡市中央区)は、量子コンピューター等の最新技術を活用した「鉄道車両の運用最適化」の検証プロジェクトを開始したことを9日に公表した。このプロジェクトでは、グルーヴノーツが提供するクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を活用して、車両最適化のシミュレーションモデルを構築し、実用化することを目指している。

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 コロナ禍で移動客が減り、交通運輸業は大きな打撃を受けた。特に地方の鉄道会社は、コロナ以前から高齢化や人口減で、乗客を減らしているばかりでなく、保線などの鉄道業務の担い手も不足しており、自動化、効率化は待ったなしだった。そこに、コロナによる在宅勤務と移動制限によって鉄道を取り巻く環境はさらに大きく変化した。

 こうした変化に対応するために、自動化やAIを活用しようという試みは活発で、同じくJR九州によるAIを活用した「巡視業務の支援システム」については以前当媒体でも紹介した事がある。

車両運用計画で考慮すべき要件(リリースよりイメージ)

 鉄道業務において、変数が多く自動化が難しいのは列車ダイヤの編成とそれに伴う車両の運用だ。特に車両は定期的な点検や清掃があり、いつでも稼働できるわけではない。加えて乗客が減れば運休、増えれば増結や臨時運行とダイヤは変化し、それに合わせた複雑な運用に迫られる。

 このように車両運用を決めるための変数は膨大で、これまでは、熟練者が経験によって鉄道車両の編成や割り当てを決めてきた。それを今回のプロジェクトでは、組み合わせ最適を探ることが得意な量子コンピューター等を使ったシステムでの自動化する。今回の検証は、福北ゆたか線と若松線を主に走行する車両を対象に実施される。また、このプロジェクトを通じて得た結果をもとに、他路線への適用拡大や、旅客の需要予測等のプロジェクトも共同で進める予定だ。

 さらにJR九州は、鉄道車両の運用計画を最適化・自動化することで、将来的な車両の保有数を削減や、車両の維持コストや設備投資の抑制効果にも期待しているということだ。

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