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メディアドゥ、NFTマーケットプレイスのサービス開始を発表

「Fan Top」発表記者説明会フォトセッションにて メディアドゥ藤田氏(中央右)、溝口氏(中央左)

「Fan Top」発表記者説明会フォトセッションにて メディアドゥ藤田氏(中央右)、溝口氏(中央左)

 デジタルアイテムに「一点物」としての価値を付加するNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)が注目されている。電子書籍取次の株式会社メディアドゥ(東京都千代田区)は、2021年10月21日、NFTマーケットプレイス「Fan Top」のサービスを開始したと発表した。

「Fan Top」のロゴ(記者発表会画面をキャプチャ)
「Fan Top」のロゴ(記者発表会画面をキャプチャ)

 Fan Topは、カナダのDapper Labs社が開発したパブリックブロックチェーン「Flow」を採用している。万単位で流通する出版物の付録としてデジタルアセットを付与することも想定しており高負荷が予想されるため、スケーラビリティに優れ、トランザクション費用も安く、すでにNTFゲーム「NBA Top Shot」などの基盤技術として実績があるFlowを採用した。

 記者発表会で、メディアドゥ代表取締役社長 CEO藤田恭嗣(やすし)氏は、今回の試みについて「著作物の健全な創造サイクルに寄与したい」と話し、現在のメディアのビジネスモデルに新たに「DCA」 (デジタルコンテンツアセット)の概念を追加提供したいと述べた。つまり「タレントのサイン入りの書籍」などの現物は一点物としてアセット(資産)になり得るが、デジタルでもそれを可能にし、それが新たな収益源となるようにしたいということだ。

ファンアイテム市場を拡大

 新規事業担当取締役溝口敦氏によるとFan Top開発の背景には、コロナ禍で在宅時間が長くなり、デジタルの世界で過ごす時間が長くなったこと、さらには好きなものをデジタルで保有することが一般化したことがあるという。現在ファンアイテム(ファン向けの商品)市場は約5,200億円あると推計しており、デジタル化されたアイティムが加わることでさらにファンアイテム市場が大きくなると見ている。

 デジタルのファンアイテムでできることの例として、「付録のトレカを世界中の人と交換する」「大好きなシーンを集めたトレカを作る」「ファンアイテムを飾る場所を複数持ち並べる」「ARで体験できる実寸大の超巨大フィギュア」などを上げた。

 これらデジタルアセットならではの利用を促進するため、年末までには保有するデジタルアセットを巨大な3Dで眺めたり、ARを使って実際の部屋にズラッと並んだように見せることなどができる機能を搭載したビューワーアプリをリリースする予定だ。

法定通貨での取引が基本

 Fan Topでは、NFTの投機的な面を抑制するため、購入には暗号資産(仮想通貨)は利用できず、クレジットカードの円決済となる。NFTを購入したユーザーは「世界で1つだけのNFTシリアルナンバーを持つ世界でただ一人のファンアイテム保有者」(溝口氏)になる。

10月12日発売『週刊SPA 特装版」の付録として(メディアドゥ リリースより)
10月12日発売『週刊SPA 特装版」の付録としてNTFが(メディアドゥ リリースより)

 購入できる具体的なNFT商品については、Fan Topで発売される「『北斗の拳』漢の死に様シリーズ 南斗六聖拳ボックス」などがある。また、メディアドゥが提携する取次大手トーハンの協力で、書店で購入できる雑誌や写真集に「NFT引き換えコード」が付与され、それをNFTデジタル特典ボックスに引き換えることもできる。

 近年、雑誌の販促として雑貨などを付録とする例が目立つが、そうした付録のひとつとしてNFTを活用しようという試みだ。こうした展開は、これまでNFTとは縁のなかった読者に“NFT体験”を拡大する目的もある。

 個人が発行する同人誌や、著作権を持つクリエーターとの直接取引。二次流通のルールなどの対応については、この後、順番に整理、対応するとのことで課題も多い。しかし、出版不況の打開するための新たな販促手法、さらには新しい収益源になりえることに加え、将来的には二次流通市場での収益も期待できるもので、メディアのみならずクリエーターなどIPホルダーにとっても魅力的な試みであることは確かだ。

デジタル特典のイメージ(メディアドゥ提供)
デジタル特典のイメージ(メディアドゥ提供)
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ライター、著者。有限会社ガーデンシティ・プランニング代表取締役。ICT関連から起業、中小企業支援、地方創生などをテーマに執筆活動を展開。著書に「マンガでわかる人工知能 (インプレス)」など。