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犬猫とLINEトークできる「waneco talk」 NECが目指す“ペットと飼い主の幸福のかたち”とは

NECの 「waneco talk(ワネコトーク)」を利用すると、ペットとLINEトークしているかのような体験ができる(画像はイメージ)

NECの 「waneco talk(ワネコトーク)」を利用すると、ペットとLINEトークしているかのような体験ができる(画像はイメージ)

 犬や猫などのペットに、家族同然の愛情を注ぐ人は多い。愛情を注げば注ぐほど、外出時などに、留守中のペットの様子が気になってくるものではないだろうか。

 そんな飼い主に向けて、NEC(日本電気株式会社)が開発したのが「waneco talk(ワネコトーク)」だ。このシステムを利用すると、留守番中の犬や猫とLINEでトークしているかのような体験ができ、つながりや安心感を得られるという。

 犬や猫とLINEでトークするような体験とはどういったものか。また開発の背景にはどのような動きがあるのか。NEC AI・アナリティクス事業部 環境分析事業推進室 室長の福田健二氏に聞いた。

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「waneco talk」でトークしている様子(画像提供:NEC)
「waneco talk」でトークしている様子(画像提供:NEC)

 waneco talkでできることはシンプルだ。例えば飼い主が外出中に、留守番をしている犬や猫の様子が気になったとする。そのときは、友達や家族に向かってするのと同様に「何してる?」とペットに向けてLINEでメッセージを送る。すると、なんと自宅で留守番中の犬や猫から「運動していたよ」「のんびりしてるよ」などの返信が届く。さらに、ペットの側からも「目が覚めた」などのメッセージが届くこともある。

「とてもシンプルな機能ですが、飼い主にとってみれば、我が子のようなペットからメッセージが届くことで、いつもつながっているという安心感や癒やしといった、非常にエモーショナルな感覚が得られると考えています」(福田氏)

 犬や猫とのLINEトークは、どのような仕組みで実現しているのだろうか。

 福田氏によると、waneco talkを利用する際には、まず「PLUS CYCLE(プラスサイクル)」という動物病院が開発したセンサーをペットの首輪に取り付ける。このPLUS CYCLEには、三軸加速度センサーと気圧センサーが内蔵されており、歩き回ったり、ジャンプしたりといったペットのふるまいをデータ化することができる。このデータを、NECのAI(NEC the WISE)で分析し、テキストに変換することで、ペットの行動にもとづいたメッセージをLINEで届けられるようになるという。

「waneco talkで使うAIを開発する際には、定点カメラで犬猫の動きを撮り続けながら、ふるまいデータを記録。一方で、定点カメラで撮った動画を見ながら、数秒ごとに『走り出した』『歩いている』『寝た』など、行動にラベル付けしていきました。このラベル付けしたデータと、ふるまいデータをAIに学習させることで、学習後には、AIにふるまいデータを与えるだけで、ペットの行動を推測できるようになったのです」(福田氏)

ペットと飼い主の「幸福」を目指す

 ペットの見守りサービスや、ペットと疑似的な会話を楽しむ機械はこれまでにもあった。ではNECの福田氏らによるwaneco talk開発の狙いはなんだろう。

 まず大きな背景として、これまでIT会社の多くは、安全や安心、効率を追求してきたが、「これからは、幸福(Well-Being)をターゲットとする事業があってもいいのではないか」と福田氏。NECではそうした事業のひとつとして、愛玩動物コミュニケーションプラットフォーム「waneco(ワネコ)」を始めた。

「waneco」のイメージ(画像提供:NEC)
「waneco」のイメージ(画像提供:NEC)

 実用的には、「waneco ID」というペットの共通IDを作り、種別、性別、年齢、嗜好、健康状態などの個々のペットの情報を、飼い主だけでなく、ペットサロン、保険会社、動物病院などさまざまな関連事業者が共有できるようにすることも視野に入れている。

 例えば、首輪につけたセンサー(PLUS CYCLE)で、ペットの活動量の増減を計測・記録しておく。さらにペットサロンに行った際には、サロンの担当者が目や歯、皮膚の状態などペットの細かい状態の変化を記録する。こうしたデータを動物病院と連携・共有することで、病気の兆候などを医師が見抜き、来院を促すこともできる。

「ペットの情報を事業者間で横連携できるコミュニケーションプラットフォームを作り、ペットと飼い主に、より高い次元の幸福をもたらそうとしているのが、wanecoです」(福田氏)

 センサーでペットの動きを記録、解析するのはLINEトークの会話のネタを作り出すためだけではない。「運動してた!」「のんびりしてるよ〜」というトークは、データ記録の副産物(オマケ)なのだが、このオマケが飼い主の幸福度を高めてくれる仕組みになっている。

NECがクラウドファンディングを使う理由

 2021年11月の時点でwaneco talkは、株式会社マクアケが運営するクラウドファンディング「Makuake」で、先行予約販売(プロジェクト終了日は2021年12月19日 応援購入総額は11月15日15時現在目標額の1231%)が行われている。大手企業であるNECが、なぜクラウドファンディングを利用するのだろう

NEC AI・アナリティクス事業部 環境分析事業推進室 室長の福田健二氏(画像提供:NEC)
NEC の福田健二氏(画像提供:NEC)

「今回のwaneco talkが、ある種実験的な製品でもあるので、実験的な試みに興味を持つ人が集まる場を求めていました。そうした場を考えた結果、クラウドファンディングを利用するのが良いのではないかと。またクラウドファンディングサービスの中でも、特に感度が高い人が集まりやすいものとして、新しいものや体験の応援購入をテーマに掲げるMakuakeを選択したということになります」(福田氏)

 またクラウドファンディングを活用することで、ユーザーの反応を探る狙いもあったという。

「ニーズの強さを確認したかったということがまずひとつ。さらに、『こんな機能があるといいな』といったユーザーからのフィードバックを得たいという思いもありました」

 実際に、購入者からのコメントをもとに現時点での製品の課題を見つけ、今後の開発につなげる動きも出はじめているという。

「私には私なりにペットの飼育経験がありますが、100人の飼い主がいたら、100通りの意見があると思います。そういったご意見を、ユーザーから直に聞ける場の意義はとても大きいと考えています」

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  最後に福田氏に、waneco talkやwanecoについて今後の展望を聞くと、「ペットの地位向上を目指したい」と意気込みを聞かせてくれた。

「現在日本の15歳未満の子どもの数が約1490万人(「人口推計」2021年4月)なのに対し、犬猫は1800万頭以上(一般社団法人ペットフード協会「2020年 全国犬猫飼育実態調査」)飼われていると言われています。つまり日本には、人間の子どもよりもペットの方が数多く存在しているのです。その割にはペットの地位が低いと思うのです。例えば、公共施設やレストランを含め、子どものように連れて行ける場所が少ない。私たちは、事業者をつなげる仕組みを構築しながら、最終的にペットの地位向上を目指し、今後も事業を展開していきます」

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有限会社ガーデンシティ・プランニングにてライティングとディレクションを担当。ICT関連や街づくり関連をテーマにしたコンテンツ制作を中心に活動する。