北海道の資産を活用しながら、グローバルな展開をめざすスタートアップの支援プログラム「Open Network Lab HOKKAIDO(主催:株式会社D2 Garage)」の第4期生のデモデイが、12月7日にオンラインで開催された。
プログラムに採択された3社はそれぞれ、自社の事業を紹介するピッチを行った。審査の結果、牧草由来の微生物群「コムハム菌」で生ゴミや家畜の糞尿など有機性廃棄物を処理するサービス「コムハム」を提供する株式会社komham(コムハム)が、最優秀賞「Best Team Award」を受賞した。
登壇した3社のデモの内容は下記の通り(掲載順はデモの実施順)
北海道大学大学院医学研究院メンバーを中心にチームが構成され、オフィスも北大構内のインキューベーション施設「北大ビジネス・スプリングス」に置いている。
デモを行ったのは、北海道大学大学院医学研究院の教授でもある大場雄介取締役。同社は大場氏の技術シーズを活用すべく8月に創業したばかりのスタートアップだ。HILOが目指しているのは、慢性骨髄性白血病患者のための薬効判定サービス「光診断薬Pickles」の社会実装だ。
国内に約1万人とも言われる慢性骨髄性白血病(CML)患者には治療薬として5種類の分子標的薬があるが、そのどれが最適なのかは、服用するまで判定することができなかった。その結果半数近い人が途中で薬を変えるなど、最適な薬を見つけるプロセスに課題があった。
「光診断薬Pickles」は骨髄から採取したCML細胞に光診断薬を導入する。さらに治療に使う分子標的薬で処理したものを顕微鏡で観察すると、薬が有効な場合CMLが青色に変化する。こうして有効な治療薬を判別することができる。
大場氏によると、この診断を実施する検査会社としてのビジネスが最初のステップで、その後、海外市場や他の全てのガンにも応用できるようにしていきたいと述べた。
さらに光診断薬は、分子標的薬が効かないがん細胞を見つけ出すことができるため、創薬のターゲットを見つける手助けになる。また既存の治療薬が効かない患者を、投薬しなくても見つけ出すことができるので、新たな治療薬の治験対象となる患者を探し出すことにも役立つという。
パン作りが好きな人は多く、なかには趣味が高じて実際に自宅の一角でパン屋を始めてしまう人もいる。コロナ禍で在宅時間が増えたこともあって、パン屋開業意欲を持つ人は増えつつあるようで、支援する仕組みも多様化している。
アルナチュリアのEC「BAKERISTA」では、小スペースでパンを販売する人たちのために、小ロットで良質な北海道産小⻨を提供している。代表取締役の楠本幸貴氏は北海道室蘭市の小⻨卸の3代目だ。
パン屋が小麦を入手するには食品卸を利用することになるが、多くの場合販売は25kg袋入りの単位で、小ロットでの取引ができない。小さなパン屋では、大きな小麦袋は使い切れないし、保管場所にも困る。さらに、自らパン屋を開業するような人たちは、食の安全への意識が高い層でもあるので、作り手の顔が見える原料を求めている。しかし、そうした小麦を既存の市場で入手することは難しい。そこでアルナチュリアでは、卸として培った生産農家との関係を活かして、単一農家、単一品種の”顔の見えるシングルオリジン小⻨”を提供することで、小さなパン屋のニーズに応えようとしている。
小さなパン屋の実情にあわせた工夫は他にもある。例えば、小麦のパッケージングは保管しやすい大きさのダンボール形式にしている。また「こういったパンを作りたい。こうした生地を作りたいという要望にもこれまでの経験を生かしてコンシェルジュがサポートします」(楠本氏)などといったことだ。
現在はパンを自分で作り販売する人向けにシングルオリジンの小麦を供給しているだけだが、この先はその小麦で冷凍生地を作り、家庭用として流通させていく計画もある。
生ゴミを処理する方法のひとつとして、コンポストに投入して堆肥にするという方法がある。生ゴミを投入すれば特段の処理をしなくても、土壌にいる微生物が堆肥にしてくれるのを待てばよいので、手軽で焼却ゴミの減量にも一役買うことができるため環境にも優しいと考えられている。しかしこの処理方法にもいくつか問題がある。処理に時間がかかるために、臭気や虫の発生源になることがある。さらに生ゴミ由来の堆肥は、その原料や出自が不明であるためプロの農家は使いたがらず、かといって全量を家庭菜園だけでは使い切れないという問題が出てくる。
komhamは、堆肥を作ることより生ゴミを減量化することに主眼を置いている。処理に使う牧草由来の微生物群「コムハム菌」は、代表取締役の西山すの氏が自身の父親の開発した技術を継承したものだ。通常のコンポスト処理ではその容積は半分ほどにしかならないが、コムハムコンポストで処理をすれば2%程度にまで減量できる。また処理スピードも早く1〜3日で処理が可能だという。
有用な微生物群でありながら、これまで販路が拡大しなかった理由は「処理性能に関して科学的なアプローチをしてこなかった」(西山氏)ためだ。現在は札幌市内の自社ラボで科学的な解析をすすめており、今後は生ゴミの種類にあわせて微生物の配合を調整したカスタマイズ商品の開発も視野に入れているという。
ビジネスモデルはサブスクリプションモデルで、コムハム菌の入ったコンポストを設置した後は、処理能力を維持するために菌を定期的に購入してもらう。現在はBtoBtoCのビジネスが主体だが、この先は食品工場や廃棄物処理業者など大規模な事業者への展開も視野に入れている。
すでに自治体、学校、商業施設、イベントなどから引き合いがある。そのなかには従来は、生ゴミコンポストの設置が難しかった施設内に、処理速度が早いコムハムコンポストを導入したいという希望もあるという。運営主体が環境に向き合う姿勢をアピールするには、絶好の仕掛けということだろう。そうした需要も見込んで、来年4月には広告スペース付きのスマートコンポストもリリースする予定だ。