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【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.15】発達障害がある人々にとって日本社会は寛容か?神経構造の多様性「ニューロダイバーシティ」とイノベーションについて、歴史社会学者の池上英子先生と考える

今回の対談は池上英子氏(右)と

今回の対談は池上英子氏(右)と

 マサチューセッツ工科大学のメディアラボの元所長で、株式会社デジタル・ガレージの共同創業者でもある伊藤穰一が、さまざまなゲストを招きデジタル変革について考えていくポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ― 変革への道― 」。

 今週は、歴史社会学者の池上英子先生と日本社会におけるニューロダイバーシティについてトークを展開した。

 池上先生は、ニューヨークを拠点とする歴史社会学者で、日本社会を比較文化の視点からネットワーク論的に見直す研究を行っている。近年は、仮想空間「セカンドライフ」で自閉スペクトラム症(ASD)の方々と交流を行い、そこから日本の歴史や社会における自閉スペクトラム症の考察などを著書『ハイパーワールド:共感し合う自閉症アバターたち』(NTT出版)『自閉症という知性』(NHK出版)などで発表し話題となった。

 今回は、脳神経の多様性を持つ「ニューロダイバーシティ」な人々が、日本社会でこれまでどのような位置付けにあったのか、そして今後、イノベーションを生み出す上でどんな存在であるのかなどについて語った。

* * *

伊藤穰一(以下、伊藤):ニューロダイバーシティっていうのは日本語でいうと発達障害とか自閉症とか結構ネガティブな言葉ですよね。アメリカでもネガティブなイメージを持っている人たちがほとんどかもしれないですけども、MITなんかだともうニューロダイバーシティはもう誇りになって、プライドになってて。でもそもそもそのニューロダイバーシティっていう言葉は日本であんまりみんな使わないんですよね。

池上英子(以下、池上):うん。「ニューロ」つまり「神経」でダイバーシティというのが本来の意味なんですけれども。その自閉症の方とか、またはその日本語でいうと非定型インテリジェンスと、「非定型」って言葉を使うんですね。これはマジョリティかマイノリティかっていうだけなんですけれども、そのそういう方たちは、そのひとつの個性であるっていう考え方がその背景にあるわけですよね。

伊藤:アメリカだともう最近かなりもうみんなオープンになって、イーロン・マスクもテレビで自分が自閉症だっていってるし、彼は子供が3人とも自閉症で自閉症の学校を作っています。今4歳半の私の娘もアメリカで自閉症の診断が出て、先生が4人ぐらいついて対応しています。アメリカの法律では、自閉症の子たちにはちゃんとその子に合った特別の教育プログラムを作って、それを提供しなきゃいけないっていう義務が学校にあるんですね。僕も親としていろいろ調べてたら、アメリカの親たちが団体を作ってすごい政治的に圧力かけて、そして自閉症の子たちの教育システムをちゃんとしなきゃいけないっていうのでアメリカはがらっと変わったんですね。僕らが今、日本に引っ越してきて思うのは、何か障害のところだけを見て「なるべく普通になるように」「病気として直さなきゃいけない」っていうような発想で。これはだいぶアメリカでは古い考え方なんですよね。今はもうどっちかっていうと、直すっていうよりもその子の特徴に合わせた教育でのびのびと、そのニューロダイバーシティという言葉に定義されているようにやってるんですけど、日本はそこはまだちょっと遅れてますよね。

池上:そうですね。教育自体が子どもにとってのインプットのメカニズムよりも、どうしてもその社会と合わせたアウトプットのところで評価する、というふうになりがちなので。それもアメリカは昔はそうだったと思うんですけれども、そのそこら辺がちょっともったいない。自閉症の方もそれ以外の典型から外れた方たちの才能だとか、ヒューマンリソースを社会が十分に使ってないっていうのが残念だなと思うんですよね。

伊藤:無理矢理こう普通にしなきゃいけないっていうのって、アメリカでもまだ残ってはいますが、やっぱり日本の社会のしきたりだとかルールとか、空気の読めない人はダメだとかね。典型的な自閉症にあるような特徴って、日本だとネガティブな印象がありますが、アメリカだとビル・ゲイツだとかスティーブ・ジョブスとかイーロン・マスク、典型的な自閉症っぽいパターンの人たちって、あれはあれでかっこいいと思ってる人たちが沢山存在しているんです。日本だとそういう人たちをかっこいいとなかなか思わないのは、これは根本的に文化が違うんですかね?

池上:日本の歴史を見てみたときに、中世の日本ではかなりコントロールがそれほど効いてない社会だったので、もっと逆に自由があったと思いますね。だから日本に昔から独特にあるというよりも、歴史の中でだんだんと、特に明治以降出てきた部分があると思います。戦後になってますますそれが強くなって、会社社会が出来てくると思うんですね。そもそもニューロダイバーシティの根底には、生物にとって種のダイバーシティが、多様性が大事で、多様性がないと生物の今のバイオスフェアが保てない、進化しないというのと同じように、その神経回路の多様性が人類にとって一番大切だという考え方が根底にあると思うんですよね。で、その場合にどんな神経回路が文明の発達にとっていいかなんて誰もわからない。最初から。だからその日本の場合は少しそういうふうにどんどんどんどんコントロールが効くようになってきて、特に戦後この中で同調圧力が強くなってきたってことが、その勿体無い、その部分がずいぶんあると思います。

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この後のトークでは、中世の日本で存在していた「無縁」と呼ばれる人々とニューロダイバーシティの関係などについても話が及んだ。そのあたりのお話は番組でお楽しみいただきたい。

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけでなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFTをプレゼントしています。

https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0

【編集ノート】

伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/01/31/005758.html

JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―
JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#15 発達障害がある人々にとって日本社会は寛容か?神経構造の多様性「ニューロダイバーシティ」とイノベーションについて、歴史社会学者の池上英子先生と考える

https://joi.ito.com/links/

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