昨年、取引総額が4.7兆円(数字は「Chainalysis 2021年NFT市場レポート」より)を突破し、一大ブームと化しているNFTアートの世界。このブームがひと段落した後、求められているアートのカタチとは一体何なのか?
ポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST ― 変革への道― 」では、番組ホストで、マサチューセッツ工科大学のメディアラボの元所長の伊藤穰一が、メディアアーティストの藤幡正樹さんをお迎えして、NFTアートの未来についてトークを展開した。
藤幡さんは昨年、自身初となるNFTコレクション「Brave New Commons」を発表。1000件を越える購入申し込みがあり、大盛況のうちに販売を終えた。個性的な作品ばかりが並ぶNFTコレクションについて、藤幡さんは次のように述べている。
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藤幡正樹:NFTとアートが融合した「NFTアート」が昨年話題になり、ある種異様な風景だなと思うようになりました。唯一性がないから販売できないっていう性を負っていたデジタルの世界に、「おお、そういう技術が出てきたか」というところで非常に驚いたんです。じゃあこのNFTって技術を使って、本質が少し見えるようなことをしようと思ったんです。「Brave New Commons」というプロジェクトは、売り方の問題と作品の価値をどう定義するかということなんですよね。もうこれは、コンテンツじゃないんですよね。内容ではなく、物語とテクノロジーをどう使うかなんですよね。そして、エディションが切れるので、唯一性っていうのが1個じゃなくてもいいわけですよね。そうすると複数の人が持っていながらそれがユニークであるってことは言えるはずで。
そこで、藤幡さんは手始めに、過去の未発表作品を発掘し、その中から30点の作品を選び展示することになったという。
藤幡正樹:まず、一番最初にこの展覧会の話をもらったときに、もう即座に80年代のMacintoshで描いた画像にしようと思ったんですよ。残ってたフロッピーを読んでいって、そこから読み出したデータを売りました。それで30点ほど選んだんですけど、その後に値段をどうしようかなと思って。これ、ものすごく悩んだんですけど、ともかく一番無意味なものを高くしようと思ったんですよ。そこで、『tmp』とタイトルがつけられていた2つの作品にそれぞれ100万円の値段をつけ、出品。そして、このコレクションで特徴的だったのが、入札数に応じて変化するという変動型の価格設定だった。
藤幡正樹:まず先に僕なりの価格を設定して、それを参加者の数で割っていくようにしたんです。例えば100万円の作品を1人が買うと100万円。ずっと期間中、誰もほかに買う人がいなければその人は100万円で買うんですけど。2人目の購入者が来ると50万円ずつで買う事になるんですね。で、そうやってだんだん分割されていって。で、どこで落ち着くかっていうところが興味あるわけですよ。つまり、どれぐらい欲しいと思う人がいるかと。で、つまり優れた作品であるってことは、欲しい人が多いはずなんですよね。だから、いい作品には多くの人が参加すると。ところが参加者によって価格は下がると。でも僕の考えでは、価値は100万円のままなんだと思うんですよ。もし、これを1人だけしか買えないようにしたら、それ以上の価格になったかもしれないけれども、ただその価格と価値の関係が何か、これまで自分たちが知ってるような関係性ではない形で組まれていくっていうのが、思った以上に面白かったですね。
伊藤穰一:僕は3番を買ったんですけど、それが4人しか購入していなくて、82,500円になったんです。逆に1番の作品は購入したのが861人だから、1人が支払う金額は1161円。そうすると僕が持ってるやつは人気がなかったっていうのはひとつの考え方だし、でも僕が持ってるやつの方がレアっていう考え方もあるし。だからすごくコレクターの立場からするとすごく複雑で。ただ購入者がたくさんいた方が、NFT業界だとひとつのファッションになるから、それでみんな持ってる人たちのコミュニティになるので、やっぱり800人のコミュニティよりも4人のコミュニティの方がちょっと寂しいなみたいなところもあるし。だからいろんな視点でこの価値っていうのが、今決まってきてるのを何かすごく感じますよね。
藤幡正樹:そうなんです。だから確かによく考えてみると、僕たち街に行って買い物するときに必ず値段が付いてるんだけど。これに対して非常に疑いを持つようになりますね、こういうことすると。誰が価格決めてるのかということですよね。
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また、今後のNFTアートの未来についても次のようにコメントしている。
伊藤穰一:NFTアートに関して、若いアーティストに対してメッセージはありますか?
藤幡正樹:今はまだ、アイデアのバリエーションっていうのができてないように思います。NFTはまだ未知の技術なので、それによって何が変わるかっていうのをものすごいイマジネーション必要ですよね。その想像力を働かせてる間が超面白いわけですよ。それを皆、やったらいいのにと思うんです。
番組では、藤幡さんの次なるプロジェクトの構想も明らかになった。次なるNFTアートのカタチとは一体どんなものなのか?この続きは番組でお楽しみいただきたい。
【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】
番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけでなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFTをプレゼントしています。
https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0
【編集ノート】
伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。
https://joi.ito.com/jp/archives/2022/02/07/005760.html
■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」
#16 ブームの先に求められているNFTアートって何だろう?メディアアーティストの藤幡正樹さんと考える、新しいNFTアートのカタチ