東映株式会社の研究機関である東映ツークン研究所は、1989年に亡くなった俳優・松田優作氏を、デジタルヒューマン技術で蘇らせる取り組みを行なっていることを発表した。
リリースによれば、人工知能(AI)により姿かたちや音声を復元するなど、これまで同研究所や協力各社が培ってきた技術を活かしたテクノロジーアプローチでデジタルヒューマン化を進めている。監修は松田優作の妻で、女優の松田美由紀が務めており、現在、ショートムービーも制作中だという。
東映ツークン研究所では、ここ数年デジタルヒューマンの取り組みを進めてきた。AIによる形状復元にあたっては、複数人の超高精細3DCGデータを、人間の顔の肌の質感までをスキャンする事ができる「LightStage」で取得。これもとに、機械学習を使って顔モデル生成を行なった。
さらに声の復元では、株式会社ORENDAが、音声復元および音声部分の総合ディレクションを担当し、株式会社TARVOが開発したAI音声変換技術を使用して松田優作氏の声の復元に挑む。
東映ツークン研究所では、2021年に松任谷由実コンサートツアー「深海の街」におけるステージ演出に使われた、デジタルヒューマンの制作も担当している。
* * *
AIを活用して、その人らしい動作や表情を再現するデジタルヒューマンとしては、2019年の紅白歌合戦に“出場”した「AI美空ひばり」がよく知られている。
ロボットが人間に近い動きや表情を持つようになると、その姿に強い違和感を覚え、不気味に見え出すというのが「不気味の谷(uncanny valley)と言われる心理現象で、これはデジタルヒューマンに対しても同様に起こりうる。
「不気味の谷」を渡り、ロボットやデジタルヒューマンがさらに人間に近くなると不気味さはなくなり親近感が湧くという。
国民的歌手、名優とよばれた人々が持つオーラを、AIが解析して復元する試みは、まさにこの谷を渡ろうと試行錯誤を重ねている。そして、この技術は今後メタバースの世界が拡張すると、接客や教育訓練に従事しするデジタルヒューマンアバターに活かされることだろう。