マサチューセッツ工科大学のメディアラボ元所長で、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一がナビゲーターを努めるポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― 」。今週は、イーサリアム・ファンデーションの宮口あやさんが帰国したことに伴い、7月18日に開催されたトークイベント「Aya Talking With Joi in Tokyo 2022」の模様を伝えた。
宮口さんは、世界のブロックチェーン業界に初めて足を踏み入れた日本人として知られており、現在はイーサリアム・ファンデーションのトップであるエグゼクティブ・ディレクターを務めている。今回のトークイベントが初対面となった伊藤穰一と宮口さんが、web3の行く末について語った。
なお、今回のトークセッションのモデレーターは、日本のクリプト業界でロビー活動等を実施してきたブロックチェーン戦略政策研究所の樋田桂一氏が務めている。
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樋田桂一(以下、樋田):お二人の共通点として、長期的視野に重点を置いているという部分があります。インターネットは50年ぐらいの歴史がありますが、ブロックチェーンは2009年のビットコインから始まったと考えると、まだ10年ちょっとしか経過していません。インターネットと同じ速度でブロックチェーンも進化するとした場合、進化はこれからもまだ続くわけですよね。
伊藤穰一(以下、伊藤):ブロックチェーンは、新しいと言いながらProof of Workなんかはウェブが出た頃からアイデアとしてあるんです。アダム・バックが原型を作ったProof of Workは、元々スパムのために作られたものでした。僕らは日本でブロックチェーンに近いハッシュチェーンを使ったタイムスタンプを利用した決済のシステムとかも、95〜96年ぐらいにやってるんです。『デジタルキャッシュ』という本を中村隆夫君と一緒に書いて「もうこれから暗号通貨だ」って90年代からやってるんです。だからこのコンセプトや哲学は、非中央集権型決済システムによって情報がいろいろ動き、その中でProof of Workみたいな話もあったんです。それが一回冷めて、もう一回ビットコインの登場で再び出てきたんですよね。
樋田:やっぱり100年、200年先を考えた時に、ロングタームっていうのをどういう風にイーサリアム・ファンデーションでは考えているんですか?
宮口あや(以下、宮口):何年ということはしないですが、我々が懇意にしているLong Now Foundationのスチュワート・ブラントは、1万年持つ時計を作ってるんですね。つまり、今関わってる人は誰も生きていないじゃないですか。でも、1万年残るためには技術だけではなく、色んなことが継がれていかないと残らない。具体的に何年とは思わないですが、現在プラットフォームやコンセンサスメカニズムなどに関する議論はしますが、それだけではずっと続いていかないんです。そのためにはゆっくり進んでいく単位の部分がすごくしっかりしてないと「何だったのこれ」という部分が分からなくなるように思います。
伊藤:僕もすごいロングタームに考えるべきだと思うし、また歴史を見ると面白いと思うんだけども。会社というのが生まれて、資本主義が生まれて、そこに今度は何か学者みたいな政治の人たちがいろんな美学を作って、今の社会に変わっていくっていうのが、この文化って美学のとこなんですよね。で、僕は思うのは、あやさんみたいな人が今イーサリアム・ファンデーションみたいなとこで、クリーンな美学でできる方向にシフトしてると思うんです。その中にあやさんのような、今のウェブのいい人たちが考えてる文化っていうのが、どういう風に何千年で続くのかっていうイメージがないと走れないと思うんです。
さらに番組では、昨今一大ブームと化したNFTに関する話題にも触れている。詳しくは番組をお聞きいただきたい。
【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】
番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。
https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0
【編集ノート】
伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。
https://joi.ito.com/jp/archives/2022/08/01/005811.html
■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」
#40 イーサリアム・ファンデーションの宮口あやさんと語る「持続可能なweb3の育み方」