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【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.60】DAOは社会にとって良いことを増やすのか?

DAOについて話す伊藤穰一(左)と奥井奈南

DAOについて話す伊藤穰一(左)と奥井奈南

 マサチューセッツ工科大学のメディアラボ元所長で、株式会社デジタルガレージの共同創業者でもある伊藤穰一が、ナビゲーターを努めるポッドキャスト「JOI ITO’S PODCAST  ―変革への道― 」。今週は2022年にテック界隈での流行語ともなったDAOこと分散型自律組織について取り上げた。

奥井奈南(以下、奥井):世の中にDAOはどれぐらいあるのかを調べてみたら、DeepDAOの調査データによりますと、現在存在するDAOの数は「10,510」。100万ドル以上の資産を保有するDAOはその中で「125」ということがわかりました。また、その中でも一番資産を保有しているのはUniswapでした。これ以外にもHenkakuCommunityでも使用しているGNOSISなどもTop5に入っています。数字だけ見ると、株式会社と比べDAOは数も少なく、規模も小さい印象です。

伊藤穰一(以下、伊藤):トークンなど金銭的価値を一番たくさん保有してるのは、トークンそのものを扱う交換所やお財布みたいなところだと思うんです。DAOの数は増えてきたんだけど、ツールがやっと使えるようになってきた段階なのと、日本だとweb3参加してる人たちって、1桁パーセントなので。まだ実験段階っていうふうに見たらいいかなと。だからちょっと難しいよね。みんな期待してワクワクしてるけれども、すぐ使えないっていうジレンマがありますよね。なんか「予告編だけ流された」(という感じで)ちょっと嫌な気分みたいなのもある…。ただ何かやろうとして、出来ないことを発見して、修正しはじめるという時期としてはすごく正しいのではないかなと思います。

奥井:DAOって、そもそもどうやって作るんですか。そしてどうやって参加するんですか。

伊藤:一番最初に作らなきゃいけないのはWalletとIDアドレスです。イーサリアムやポリゴンだったら、メタマスクみたいなウォレットをインストールして、そしてガス代という手数料を払うトークンが必要なんです。で、これが結構難しくて、友達がいれば友達からもらえばいいんだけども、友達がいないとコインチェックのような交換所に口座を作って本人認証してお金を振り込んで、そしてイーサリアム(ETH)やマチック(MATIC)を手に入れる必要があります。DAOを作るのは、今はいろんなツールがあるんです。例えば投資のDAOだったらSyndigateというツールとか、私も投資してるDevProtocolがClubsっていうDAO作りのサイトがあったりします。そういうDAOを作るツールセットとか、ツールのあるところ(サイト)へいって、DAOを作るというのが最初ですね。ただ、作る前に(DAOに)参加するとよくて、そうすると検索したり、色んな面白いDAOのリストとかあるので。今ウィスキーを集団で購入するUnicaskもDAOを作っていたり、山古志村もDAO化を進めているし、そういうところに参加するといいと思います。山古志村だったら山古志NFT(錦鯉のNFT)を買って、そしてウォレットに保有して、そしてDiscordに参加すると、e村民しか参加できないチャンネルとかプロジェクトにも参加できます。

奥井:そうすれば「DAOに参加した」ということになるんですか。

伊藤:そうですね。山古志も今はトークンは発行していなくて、NFTだけなんです。ただ日本はNFTの方が法的に自由なので、トークンじゃなくてNFTを中心としたDAOをDAOって呼んでいいと思うんですよね。ただ、使えるツールはまだトークンの方が多いので、多分、これからいろいろ。また、日本も法改正が進むともっと「DAOっぽいDAO」が作れるようになってくると思います。

奥井:会社ではなくて一般社団法人でもなくてDAOにする理由は何なんでしょうか?DAOにすると何がいいことがあるんですか。

伊藤:まず、DAOが一般社団法人だったり、株式会社にもなるっていうこともありえるんですね。ただ法人格がないところで、DAOを作ると銀行口座もいらないし、登記も必要なくて、とにかくみんなで作るだけ。今、奥井さんとDAOを作ろうと思ったら1分で作れちゃうんです。会社はなんだかんだ言っても、弁護士だとか、銀行口座、「誰が代表になるんだ」とか、印鑑だとか(が必要で)。みんなの本人確認もないと会社とか出来ないので、そういう手続きがまず楽なのと、あといろんなツールがあるので、会計士とか弁護士がなくても結構きちっといろんなルールを決めたり、スマートコントラクトでそのルールをプロトコールに入れられるので、そういうのも楽なので。だからスピードが速いというのと、お財布が要らないっていうのが一番メインの理由。

奥井:結構DAOの種類がたくさんあって、炭素クレジット市場の効率化を図るKlimaDAOだったり、空き家を利用するAkiyaDAOとか、組み合わせがすごい無限大にあると思うんですけど、何かこういったDAOは株式会社ではなくて、その社会に対して課題があって、それを解決したいから作るというような、社会に対していいインパクトを起こしたいっていう人間らしさのある経済に近いような気がするんですけれども。こういうのがweb3の核である分散化、中央集権ではないっていうことの強みなんでしょうか。

伊藤:やっぱり非中央集権とか分散型ってちょっと分かりづらいけども、民主的っていう考え方でいうと、ボトムアップだとか、みんなが参加できるとか、みんなの声が聞こえるっていう。これは結構社会的にポジティブなイメージもあると思うのです。「やっぱり環境問題はみんなが参加した方がいいよね」とか、市町村のいろんな動きも「市民も参加しようよ」という。あとは透明性だよね。決議のやり方だとか、ルールとか。あとは誰がどのぐらいコントロールを持っているかっていうのも重要。すごく透明性を高くすることも可能なので、NPOだったり、慈善事業に合ってるガバナンスのアーキテクチャーなんです。元々、最初にできたDAOっていうのは、お金のやりとりに「そういうのってあったらいいよね」っていうところから始まってるんだけど、「実はこれ一般社会でもそういうニーズがあるよね」となって広まっているんです。最初は投機目的なDAOも含めていっぱいあるんだけども、本当に来年ぐらいから、もうほとんどのDAOは投機目的じゃないものになるんじゃないかな。特に日本国内ではそうなるんじゃないかなと僕は思います。

 番組では、いいDAOと悪いDAOの見分けかたや、DAOでの働き方などについての話題に及んだ。詳しくは番組をお聞きいただきたい。

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

 番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。

https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0

【編集ノート】

 伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/12/26/005853.html

JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―
JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#60 DAOは社会にとって良いことを増やすのか?

https://joi.ito.com/links/

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