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【JOI ITO’S PODCAST ―変革への道― Vol.49 】2025年の崖を乗り越えられる!?web3時代に必要な「デジタルアーキテクチャ」について考えよう

『The New Context Conference』のホストをつとめる伊藤穰一

『The New Context Conference』のホストをつとめる伊藤穰一

 デジタル技術を活用して、ビジネスを変革させるデジタル・トランスフォーメーション(DX)。経済産業省によれば、2025年までに老朽化した既存システムを刷新できなければ、最大で年間12兆円規模の経済損失が生じる可能性が指摘されている。いわゆる「2025年の崖」まであと3年に迫りつつあるものの、DXの歩みは官民とも遅々としており、際立った成功例を探すことも難しい。

 今週の『JOI ITO’S PODCAST ー 変革への道ー』では、番組ホストの伊藤穰一がDXの現状についてこう言及している。

「デジタル化をちょこちょことパーツで作ってしまうと、何となくぐちゃぐちゃなものになっちゃうんですよね。一生懸命やってるのにも関わらず、あまりDXは進んでいない。それはやっぱりそもそも論の話が皆出来ていないからなんですよね」

 伊藤によれば、デジタル変革を推進する上で重要な「そもそも論」の話をする上で大切なのは「Context=文脈」を考えることであるという。

「日本はあまり意味がないルールであふれています。例えば、ハンコ。ハンコは、その時、その人に(承認の)意思があったといういうことが重要なのであって、紙とハンコが重要な訳ではない。その人の意思を改竄できない形に残すということが必要なので、デジタルの文脈であれば、ハンコは必要ないということになる。どう物事が変わり、その変わったものに対して、どう中身が変わるべきかということ。これはやっぱり文脈の世界だと思うんですよね」

 デジタル変革も思うように進まないうちに、web3という新たなインターネットの概念が到来したニッポン。大きく時代が変わろうとしている今必要なのは、「足元を固めること」だとも伊藤は話す。中長期の目標を立てるため、どういった課題があり、何を考えなくてはいけないかをまとめ、「Digital Architecture(デジタルアーキテクチャ)」を描いていくことが重要だという。

 Digital Architectureとは、情報システム全体の見取り図を指す。伊藤によれば、「デジタル社会の中で、設計や美学などを組み合わせ、いい改革や、いいシステムができるのかを考えること」を意味し、インフラからコンテンツまで全てを考慮にいれる必要があるという。

 デジタル社会を取り巻く要素を総合的に捉え、よりより構造を作っていくことが正しい文脈で新しいテクノロジーの時代を築き上げるため重要だという。「具体的には、文化の理解、法律の理解、経済の理解と技術の理解という4つの理解が必要になります。これを全部一緒に話をしないとアーキテクチャというものは作れません。今まで縦割りになってばらばらになっていたものを、同じ部屋でみんなでディスカッションして感覚的に理解した上で、発想を抽象的にも考えていくことが必要なんです」

 Digital Architectureは、DXだけでなく、岸田首相が所信表明演説でも言及した「web3の推進」についても必要不可欠だと伊藤は話す。「今回、web3が到来したことによって、ルール作りや基盤整備、標準化に関する内容はとても重要なものになります。web3という新しい素材ができたことで、考え方や、文化、美学も変えなきゃいけないと思うんです」

 また、今後web3を推進する上でどういう課題があるのかも考えていく必要があるという。「アーキテクチャというのは、一旦作ってしまうとあまり変わることがありません。例えば、IPv6とかTCP/IPは何十年も前にできてから変わっていないんです。電車のサイズや電気の規格なんかもそうですね。やはり今、規格や標準化やルールを決める段階でズレが生じてしまうと、未来が180度変わってしまうんです。ボタンの掛け違いを防ぐためにも、Digital Architectureについて今話し合うことは重要だと思っています」

 伊藤穰一がホストを務める『The New Context Conference』は11月4日に開催される。今年のテーマは「Designing Our New Digital Architecture」。ゲストとしてサイバー法の権威でクリエイティブ・コモンズの創設者であるLawrence Lessig氏(ハーバード・ロー・スクール 教授)やNFTアーティストとして第一線で活躍しているPplpleasr氏、MIT Space Exploration Initiative(MITメディアラボ 宇宙探査イニシアチブ)の創業者 兼 ディレクターで宇宙建築プロジェクトなどを手掛けるAriel Ekblaw氏、先日デジタル大臣に就任し話題となった河野太郎氏などが登場する予定だ。

オンライン参加は無料。事前登録は、Peatixサイトで受け付けている。

【THE NEW CONTEXT CONFERENCE TOKYO 2022 Fall】 

・日時:2022年11月4日(金)13:00~17:30

・主催:株式会社デジタルガレージ

・共催:DG Lab

・参加費:無料(事前登録制)

・公式サイト:https://ncc.garage.co.jp/2022fall/

・申込方法:Peatixサイト(https://ncc2022fall.peatix.com/)より、お申込ください。

・ホスト:

 林 郁(DG 代表取締役 兼 社長執行役員グループCEO 株式会社カカクコム 取締役会長)

 伊藤 穰一(DG 取締役 兼 専務執行役員Chief Architect)

【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】

 番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/10/03/005828.html

【編集ノート】

 伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。

https://joi.ito.com/jp/archives/2022/10/10/005831.html

JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―
JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―

■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」

#49 2025年の崖を乗り越えられる!?web3時代に必要な「デジタルアーキテクチャ」について考えよう

https://joi.ito.com/links/

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