日本政府がweb3の推進を掲げ、具体的な取り組み内容の検討を始めた。岸田首相は今月3日、所信表明演説を行い、「メタバース、NFTを活用したWeb3.0サービスの利用拡大に向けた取組を進める」と述べたほか、デジタル庁では、web3に関する有識者研究会の初会合が開かれた。
政府は、今後どのような取り組みを進めていくのか?今週の「JOIITO’SPODCAST ―変革への道―」は、日本のweb3政策の行方をテーマに自民党デジタル社会推進本部でweb3プロジェクトチームの座長を務める平将明衆議院議員、幻冬舎「あたらしい経済」編集長の設楽悠介氏、そして伊藤穰一による鼎談だ。今回の鼎談は、YouTubeチャンネル「#CONNECTV」とのコラボ企画で実現したものになる。
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まずは、web3に対する世界観からトークがスタートした。
平将明(以下、平):日本ってずっとデフレだったので、クオリティーの割に価格が安い。一方で世界はずっと成長してるので、これを国際価格に引き直すにはどうしたらいいかなっていうのを4〜5年考えてたんですよね。そこにDAOとか出てきてある意味、地方創生の文脈においても、クールジャパンの文脈においてもこれはすごい使えるな、と思ったんです。また、岸田首相がいきなり”新しい資本主義”を唱え始めた。(中略)そこで、私の頭の中で「新しい資本主義ってweb3じゃん」というのが閃いたんです。そこで、今さまざまな場所にワードを入れてるです。だからあとは総理が、本当に腹落ちするかどうかですね。総理が「本当に、平の言う通りだ」と心の底から思うかどうかが、今問われているんだと思いますよね。
設楽悠介(以下、設楽):でも外部でのその発信とか見てると、もうそこは腹落ちしてるような感じは受けますが、そのあたりどうなんでしょうか。
平:文字面で見ていればそうですね。岸田さんも問題意識があり、頭も柔軟な方だし、これは我々がキャッチアップしなきゃいけない問題という認識もあります。さらに日本は来年、主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国なんですよ。さまざまな国際状況も考えながら、新しいイノベーションの波も捉えながら、こういう風にやりましょうって提案ができるまでになりたいですよね。
設楽:伊藤穰一さんも英語版のホワイトペーパーを拡散されたりされてましたけど、今の日本の状況って海外ではどう見えてるんでしょうか。
伊藤穰一(以下、伊藤):平さんたちがやってることってすごい効いてて、今やっぱり期待は上がっていると思います。多分、いろんな法律によってまずプレイヤーたちが随分逃げましたよね。それをみんな見ているし、やっぱりNFTと日本のコンテンツ産業って合うよねとか、ゲーム会社はいっぱいあるよねとか。そういう意味では期待は上がっていますよね。
設楽:そもそもビットコインのサトシナカモトという名前もそうですし、何か(暗号資産界隈には)日本由来感がありますよね。さらに、恐らく暗号資産に関して法律を定めたら、多分、世界で一番の国じゃないですか?
平:そうですね。特に金融はそうですね。
設楽:ハッキング事件があるまでは、本当に特に4〜5年前はすごく海外のカンファレンスに人が来てたのが、それがなんかパタリとなってしまったんですけど、ここにきてもう一回盛り上がるみたいな状況ってありますか。
伊藤:そうですね。規制は早かったし、技術的には結構理解度は高いと思うんだけども、アメリカの方が色々追っかけてるので、アメリカの法務省はエクスペリエンスがついてるんだよね、戦いの中で。やっぱり日本は法作りの規制を細かくしていて、勉強はしてると思うんですが、もう少しオープンにさせてインタラクティブにするとスキルアップすると思います。それと規制改革を一度にやった方がいいと思うんですよね。それが次のフェーズだと思います。でも、ホワイトペーパーがすごく重要だったのは、すごく細かく正確に書いてあったのと、普通だったらあやふやにするところを、きっちり書いていたので、とてもブレにくいドキュメントだったと思います。また海外から見ると、こんなにわかってる人たちが権力持ってるんだっていうので、すごくみんな感心してましたよね。
平:実は、(ホワイトペーパーに)税金のことを書くのはタブーなんですよ。実は成長戦略にもあらゆる分野で税金のことは入ってないんですよ。よっぽど総理がこれだって言っておけば入りますが、税金っていうのは年に一回あそこ(税調)で議論するって決めてるもんだから、税金のことはちょっと書けませんとなっている。ただ方向性としてもこれがボトルネックで、例えばガバナンストークンは、個人がトークン持っている時に、トークンからトークンに買い換えたり、置き換えたりするだけで税金がかかってくるんです。(この問題は)やっぱりボウリングでいうところのセンターピンのようなものなので、ほかのピンが全部倒れても、これだけ倒れないとストライク取れないよねっていうので、書いちゃったっていうことですよね。書いちゃいけないのに書いちゃったっていう。ただ、税調の幹部からしてみたら「なんだ。あいつら」って多分非常に不愉快に思ってると思いますけど、ただそれはやっぱりみんなで「これ必要だ」と認識し、世界の流れを見ながらどう実現していくかですよね。
設楽:伊藤さんもおっしゃってた通り、本当にこんなに細かいことを提議してるんだって思いました。かねてから僕もweb3の起業家と話していると、税制はもちろん、「やっていいことと、やって悪いことがよくわからない」ということがスタートアップにとっては困るという話をよく聞いてたんです。ですが今回のホワイトペーパーを見ると、明確に、賭博の話も答え出すんだって書かれていますよね。
伊藤穰一:ただ危険なのは、日本の政治家の動き方が分からない人たちからすると、「これだけ分かってるんだから変わるだろう。」という期待ができてしまう。これで変わらなかったら、「分かってるくせに何で変えないの」となる。ここがちょっと次のフェーズで心配なところですよね。
番組では、パブリックブロックチェーンの是非や中央銀行デジタル通貨などについても議論は及んだ。詳しくは番組をお聴きいただきたい。
【JOI ITO 変革への道 – Opinion Box】
番組では、リスナーからのお便りを募集しています。番組に対する意見だけではなく、伊藤穰一への質問なども受け付けます。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントします。
https://airtable.com/shrKKky5KwIGBoEP0
【編集ノート】
伊藤穰一からのメッセージや、スタッフによる制作レポート、そして番組に登場した難解な単語などはこちら。
https://joi.ito.com/jp/archives/2022/10/17/005833.html
【#CONNECTV】
今回の鼎談のフルバージョンは、#CONNECTV : コネクTV【仮想通貨 ブロックチェーン総合番組】にてご覧いただけます。
「日本とweb3」国家戦略これからどうなる?(web3PT座長平将明議員/デジタルガレージ伊藤穣一氏)
■「JOI ITO’S PODCAST ―変革への道―」
#50 政府はweb3をどう推進していくのか!?