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「CEATEC2022」本日から開催 「メタバース」「サスティナビリティ」など展示内容にも変化が

「CEATEC 2022」会場風景

「CEATEC 2022」会場風景

開幕にあたってプレスブリーフィングを行うCEATEC実施協議会エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏
プレスブリーフィングの模様

 2022年10月18日〜21日の会期で「CEATEC 2022」が開催される。ここ2年はオンライのみの開催で、幕張メッセでの開催は3年ぶりとなる。今回はハイブリッド形式の開催となり、オンラインでの参加も可能だ。そちらはすでに開会しており、開催期間は10月1日〜31日となっている。

 今回の出展者数は562社/団体と、オンライン開催のみだった昨年よりも多いものの、2019年の787社/団体には届いていない。ただ、かつては「家電見本市」だったこの展示会も、時代にあわせて年々出展内容は変化しており、「サスティナビリティ」や「メタバース」などを全面に出した取り組みも目立つようになった。

ローカル5G小型一体型基地局 UNIVERGE RV1200
ローカル5G小型一体型基地局 UNIVERGE RV1200

 18日の開幕に先立ち、17日には報道関係者向けの公開日が設けられ、「CEATEC AWARD 2022」の各賞の発表も行われた。ここでは受賞した技術、製品、サービスを中心に会場の模様を紹介したい。

 総務大臣賞を受賞したのは、日本電気株式会社の「ローカル5G小型一体型基地局 UNIVERGE RV1200」だ。工場内や敷地内での利用に特化した「ローカルエリア5G」構築に必要な無線局の無線部と制御部を一体にした製品となっている。サイズは長辺が25センチほどなので、大きめのWi-Fiルーター程度のサイズ感だ。ローカル5Gを検討している製造業などでの需要を見越して製品化したという。

室内光発電デバイス『LC-LH』
室内光発電デバイス『LC-LH』

 経済大臣賞は、シャープ株式会社の「室内光発電デバイス『LC-LH』」が受賞した。電卓や腕時計に採用されている小型太陽電池に比べて約2倍の発電効率がある。これまでは製造コストで課題があったが、シャープが得意とする液晶ディスプレイの製造技術を応用し、工場、設備なども流用することでコストダウンを図った。会場での展示では、電子値札での利用例などが展示されていた。電池交換不要ということになれば、応用例も広がるだろう。

 また、デジタル大臣賞は工作機械を動かす加工プログラムを完全自動生成する世界初のAIソフトウェア「ARUMCODE1」が受賞している。

 その他にも、会場で目を引いた展示をいくつか。

ソニーの展示ブース
ソニーの展示ブース

 かつてCEATECの主役であった日本の電器メーカーも、大型の展示ブースを連ねていたが、展示ブースのコンセプトが大きく変わったことで、時代の変化を感じさせられたのは、ソニーグループの展示だ。ブースの中央には、話題のコネクティッドカーや、背景を自由に変換できるバーチャルプロダクションなどのハードウェア展示があったものの、かつてのように、コンシュマー向けの大型液晶テレビやゲーム、プロ向け音響システムの展示などは無い。

 テーマは「地球」、「社会」、「人」となっており、環境や社会に貢献する取り組みが紹介されている。プレステーション向けの気候変動学習ツールの「Climate Station」や、協生農法の「Synecoculture」の紹介、籾殻から作った多孔質カーボン素材「Triporous」の展示などがあった。ほかにも以前、その初期の取り組みを紹介した、首周りに取り付けて使う小型冷暖房器の最新版「REON POCKET3」もここで取り上げられており、まさに環境や社会の変化にあわせたグループ全体の取り組みを集めた展示となっていた。

WHOLE EARTH CUBE
WHOLE EARTH CUBE

 岩手県に本社を置く、総合ガス・エネルギー企業北良株式会社などが出展した「WHOLE EARTH CUBE」も目を引いた。これは、移動可能な40フィートのトレーラーハウスで、太陽光発電と発電機を備えており、電力が自給できるだけでなく、生活に必要な水も浄水し、トイレの汚水もその場で処理、循環利用できる仕組みを備えている。さらに、このトレーラーハウスは再生、循環するエネルギーを無駄にしないように、高気密、高断熱となっている。岩手に本社がある北良は、東日本大震災の経験から、こうしたエネルギーの自律循環システムをもった環境が、災害時に必要だと考えており、それを形にしたのがこの「WHOLE EARTH CUBE」だ。

 水資源の循環システムを受け持つのはやはり以前、この媒体でも紹介したWOTA株式会社で、これまでの処理技術に加え、新たに生物分解のプロセスを追加することで下水の処理なども可能とした。1日の処理能力は非公開ということだが、トイレやシャワー、洗濯など通常の生活に必要な水がまかなえるだけのシステムとなっているという。

 ここでは、MUSVI株式会社が、大型ディスプレイとステレオ・マイク&スピーカーを装備したテレプレゼンシステム「窓」のデモを行っていた。「WHOLE EARTH CUBE」は、災害時ばかりでなく、自然に恵まれた環境の中においたワークスペースなどとしても活用できるので、そうした場合のコミュニケーションを充実させることができるという。

Mighty-D3-2

 スタートアップや大学・研究機関の専用エリアも設けられている。取材は開幕前日だったので、多くのブースはまだ準備中だったが、超音波モータを得意とするハードウエアスタートアップ株式会社Piezo Sonicでは、搬送用自律異動ロボット「Mighty-D3-2」の実機をみることができた。

 同社代表取締役の多田興平氏は、そもそも月面探査ロボットを開発する過程で超音波モータと出会い、超音波モータそのものを主力商品とするハードウェアスタートアップを創業した。さらにコンパクト、省電力などといったこのモータの特性を活かすことができる「Mighty-D3-2」も開発。小型搬送ロボットは他のメーカーも開発しているが、同社のものは15センチの段差を乗り越える事ができ、その場旋回や真横への移動が可能で小回りがきくといった特徴を持っている。まだ、量産には至っていないが、今年の1月に米国で開催されたCSE2022で 「INNOVATION AWARDS」を獲得しており、その性能に対する評価は高い。

メタバースエキスポは会場内に専用エリアに
メタバースエキスポは会場内に専用エリアに

 他にはMeta(旧フェイスブック)などが主催し、今年7月にメディアや関係者向けに開催され話題を集めた「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」が今回、CEATEC内に専用エリアを設けて一般にも公開されている。フェイスブックやインスタグラムといったSNSプラットフォーマーとして知られるメタが、社名を変えてまで取り組むメタバース内で展開するサービスを体験することができる。他にもDNPや凸版といった印刷会社、NTTドコモやソフトバンクなどの通信会社もこのエリアで自社のサービスを紹介している。

 ところで今回の会場には、複数カ所のワーキングスペースが設けられている。これは、来場者が会場を離れなくとも、そこで仕事ができるようにという配慮らしい。せっかくのリアルな会場開催、とにかくじっくり見て回り、出展者とコミュニケーションを取り、「共創」につながる場として欲しい、というのが主催者側の狙いだ。

Written by
朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。