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東京の猛暑を「ペルチェ素子」で涼しく〜猛暑対策展

 西日本各地では梅雨明けとなり、ようやく夏本番を迎えた。来たるべき猛暑をしのぐための製品がそろう、その名も「第5海 猛暑対策展」が東京ビッグサイトで開催された(7月26日まで)。1年後に東京五輪の開催をひかえていることもあり、猛暑対策には注目が集まっている。展示会では野外設置可能な大型の冷風機やミストの発生装置。建物の屋根や壁面用の断熱・遮光塗料や蓄熱防止の道路素材。空冷、水冷装置付きの作業服などさまざまな猛暑対策技術やグッズが展示されていた。

 会場で電子機器の猛暑対策はないかと探したところ、ワイン用の冷蔵庫やCPUの冷却装置として活用されている半導体素子の「ペルチェ素子」を利用したウエアラブル機器を見つけた。ペルチェ素子は直流電流を流すと片側で吸熱、反対側で放熱を行う。さらに電流のプラスとマイナスを入れ替えるとこの温冷が入れ替わるので、同じ面を冷やしたり温めたりすることも可能という特性がある。これを人の体にあてて、カイロのように温めたり、保冷剤のように冷やしたりすることで暑さや冷えの対策ができるというわけだ。

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 「REON POCKET」という製品は、ソニー社内のスタートアップ創出プログラム「Sony Startup Acceleration Program」のオーディションを通過し、現在クラウドファンディングでの商品化に挑戦中の製品だ。

ペルチェ素子を利用した温冷装置とファンなどを組み込んだREON POCKET本体(展示用)と操作用スマホ
ペルチェ素子を利用した温冷装置とファンなどを組み込んだREON POCKET本体(展示用)と操作用スマホ

 「REON POCKET」はガラケー(携帯電話)ほどの大きさの本体(重さ約85g)と、背中側の首元に本体装着用のポケットがついた専用インナーウエアーがセットになっている。本体にはペルチェ素子を利用した冷却(発熱)部と放熱機構、センサーや充電池が組み込まれており、スマートフォンとBluetooth接続ができる。専用アプリで温冷の切り替えや温度調整ができ、オートモードでは体温や人の行動に合わせての温度調整もできるという。

 この製品では、冷却する際に排出される熱を効率よく逃がす必要がある。そこにソニーが積み重ねてきた放熱機構設計のノウハウがいかされている。

「REON POCKET」は専用インナーウェアにセットして利用
「REON POCKET」は専用インナーウェアにセットして利用

 会場で製品の説明にあたっていたプロジェクトメンバーの伊藤陽一氏(Startup Acceleration部Reon Project統括課長)は、元は音響機器の開発設計を担当していたとのことで、その技術はこの製品の本体とスマホの連携や制御技術として活かされている。今回のプロジェクトは放熱設計のノウハウを持つメンバーとの共同開発で、そこに東レインターナショナルが専用ウェアを提供している。

 ビジネスマンが日常利用しても違和感がない製品に仕上げるため、本体をセットする位置や、冷却時の熱を上手く外に逃がすためにポケットに設けられた放熱用の穴など、手探りで製品化にこぎつけた努力の跡がうかがえる。

(追加情報)「REON POCKET」は2020年7月1日より一般販売を開始しています。メーカー希望小売価格(税別)本体 13,000円。専用インナーウエア(サイズ S/M/L)1,800円となっています。詳しくはこちら

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この様に首筋にセットする
この様に首筋にセットする

 もうひとつペルチェ素子を利用した製品は、サンコー株式会社(東京都千代田区)がすでに市販している「ネッククーラーmini」。こちらはその名の通り、首を挟み込むヘッドホンのような形式の機器の左右の内側にペルティ素子とアルミブレードがセットされており、首筋挟み込み冷やすことで冷感を得ることができる。4000mAhのモバイルバッテリーで約4時間の利用が可能。実際に試着したところ首筋に冷たいタオルを当てたのと同じような効果があり、ひんやりと心地が良い。本体の重さは約135gでこちらの製品は冷却のみの機能となっているが、手軽に着装でき効果もわかり易いので、6月に発売した製品はすでに品薄状態だということだ。

「ネッククーラーmini」銀色の部分が冷たくなる
「ネッククーラーmini」銀色の部分が冷たくなる

 真夏の五輪開催ということもあり、猛暑対策製品はこれからもいろいろと登場するだろう。しかし蒸し暑い日本の夏を快適に過ごす工夫は、最新のテクノロジーを持ってしても難題だ。暑さ対策でも意欲的なスタートアップがもたらすイノベーションに期待したい。

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朝日新聞社にてデジタルメディア全般を手掛ける。「kotobank.jp」の創設。「asahi.com(現朝日新聞デジタル)」編集長を経て、朝日新聞出版にて「dot.(現AERAdot.)」を立ち上げ、統括。現在は「DG Lab Haus」編集長。