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深宇宙から「ネコ動画」 レーザー使った実験成功 NASA

送信されるイメージの確認を行うプロジェクト担当者。米カリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所で(2023年12月11日撮影)。(c)AFP PHOTO : NASA : JPL-Caltech

送信されるイメージの確認を行うプロジェクト担当者。米カリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所で(2023年12月11日撮影)。(c)AFP PHOTO : NASA : JPL-Caltech

【AFP=時事】米航空宇宙局(NASA)はこのほど、3100万キロ離れた小惑星無人探査機「サイキ(Psyche)」に搭載されている最新のレーザー通信システムを使い、高解像度のネコの動画を地球に送信する実験を行い、成功したと発表した。

 テーターズ(Taters)という名前のネコが登場する約15秒の動画は、深宇宙から送信された初めての映像で、超高解像度の情報の送信が可能であることを証明するものとなった。こうした技術は、火星に人を送るといった複雑なミッションを支援する上で必要となる。

 動画は、ソファの周りでネコがレーザーライトを追いかけている様子を捉えたもので、サイキの軌道などを表す試験用の図解が重ねられた。

 動画の送信には、火星と木星の間の小惑星帯に向かっているサイキのレーザートランシーバーが使用された。送信時点でのサイキと地球との距離は3100万キロだった。これは、地球と月の距離の約80倍にあたる。

 エンコードされた近赤外線信号は、米カリフォルニア州にあるパロマー天文台(Palomar Observatory)のヘール望遠鏡(Hale Telescope)によって受信され、そこからカリフォルニア州南部のNASAジェット推進研究所(JPL)に送られた。

 JPLのプロジェクトマネージャであるビル・クリップスタイン氏は、「目標の一つは、数百万マイルを超える範囲で大容量の動画を高速で送信する能力を実証することだ」と説明。通常は無作為に作成したテストデータを送っているが、人々の記憶に残るものにするため、JPLのデザイナーと協力して楽しい動画を作成したことを明らかにした。

 現在の通信では無線周波数システムが使われているが、レーザーを使用することでデータ転送速度を10〜100倍に増加させることができる。

 超高解像度の動画は、地球に送信されるのに101秒かかった。その後、パロマー天文台からインターネットでジェット推進研究所に送られたが、その際の送信速度は深宇宙からの通信よりも遅かった。

 そもそも、なぜネコの動画だったのだろうか。理由の一つには歴史的な経緯と関係がある。米国でテレビへの関心が高まった1920年代、黒ネコをモチーフにした漫画キャラクター「フィリックス」の像がテストイメージとして放送されているのだ。

 これまで既に、レーザーによる送信は地球の低軌道や月では実証されているが、サイキのミッションでは初めて深宇宙から実験が行われた。数千万キロ離れた場所からレーザービームを照射するには、非常に正確に照準を定める必要があった。これは、技術チームが越えなければならない高いハードルだったという。【翻訳編集】 AFPBB News|使用条件